R18恋愛官能小説 青山倉庫

69H

10. 束縛(トッカータ)


 海浜公園の花火大会。
 あたしは買ったばかりのミニ浴衣を着て、仲良しのアヤと二人きりで出かける予定だったのに、アヤはお兄さんを連れてくる。綾川優。あたしより二つ上の三年生なのに、年上には見えないし、男の子にも見えない。あたしは男の子が嫌いだったけど、このひとは乱暴な感じがしないし、それにあたしの名前を褒めてくれる。
「麗羅って、綺麗な名前だね」
 あたしは照れて下を向く。アヤがあたしの手を曳く。三人で高台に登ると、花火がよく見える。海浜公園は展望台があったけど、ずっと前から立ち入り禁止になっている。展望台なら、水辺の花火もよく見えるのに。
「ねぇ、もっと水際に行こうよ」とあたしはアヤの袖を曳く。
「夜店に行かなくていいの?」
「後でいいよ、ねぇ、行こう」
 あたしたちは人混みをかき分けて、もっと河口に近づく。親子連れや小学生の集団、おじさんにおばさんに老夫婦に大学生のカップルの間をぬって、橋の欄干にたどり着く。滝のように水辺に滑り落ちる花火の光が反射して、きらきら輝く。きれぇ、ねぇ、きれえだね。振り返ると眼鏡をかけたおじさんと目が合う。アヤとアヤのお兄さんの優くんの姿は見えない。あたしは慌てて二人を捜しにいく。
 都内の小学校を卒業して、あたしは今の中学に転入してきた。進学のときに転校したからそれほど大変じゃなかったけど、周りに知っている子は一人もいない。もともと友達もあまり多い方じゃなかったけど、アヤは最初にあたしに声をかけてくれて、一緒に遊ぶようになった。アヤはクラスで一番可愛い子で、新学期が始まってからすぐに赤城くんや三省くんや新藤くんに告白されたけど、アヤは誰とも付き合わなかった。三省くんや新藤くんはともかく、赤城くんの誘いを断るなんて信じられない、みんなそういう風に噂してた。
 アヤはあたしと同じかもしれない。そのときはそうおもったけど、それは間違いだった。

 立ち入り禁止の展望台。
 あたしが二人をみつけたとき、アヤも優くんも浴衣の帯を解いて、半裸で抱き合っていた。アヤは優くんの腕を浴衣の帯で柱に結びつけて、優くんとキスをして、胸、脇、脇腹、太股、内股、そして優くんの長いおちんちんを順番に愛撫する。小さな展望台の入り口にしゃがみ込んだあたしには、花火の光で二人の行為がよく見えて、アヤが立てる愛撫の音まではっきり聞こえる。優くんの女の子みたいな甘い声と、アヤの囁き声は、二人の関係を物語る。ただの兄妹でもなく、どちらかが無理強いしてるわけでもない。
 アヤが優くんの股間を後ろ向きに跨ぐ。ゆっくり腰を沈めて、アヤは優くんの上で仰向けになる。まるで、あたしにつながっているところを見せつけるように、二人は腰を上下に振る。二人の喘ぎ声がきこえて、あたしは急にドキドキする。
 きもちよさそうな声。花火の轟き、閃光。虫の声。野外ステージから花火に不釣り合いなトランペットの音が響く。二人の股間が打ち鳴らすリズムと甘い囁きを聴きながら、あたしはだんだんへんな気分になってくる。
「お兄ちゃん、おにぃ…、あたし、あっ」
「あ…、彩奈、ぼく」
「あっあっあっいっ、いくっ、いくいくっ、あーっ」
 アヤの太股が跳ねる。優くんが腰を突き上げて、二人のつながりあった部分からたくさんの体液が溢れて、水辺のナイアガラにきらきらと照り輝く。

 アヤはあたしの袖を掴んで、一緒に綿菓子を食べる。優くんが焼きトウモロコシを三本買ってきてくれる。三人で海沿いの道を歩く。花火が終わって、浴衣をきた人の群れは陸橋を渡って駅の方角へ。あたしたちは人混みを避けて海岸線の墓地を通り抜ける。アヤがあたしの後ろから囁く。
「みてたの?」
 あたしは振り返らずに頷く。アヤがあたしの袖を離す。
「やっぱり…」
「言わないよ、誰にも」とあたしは言う。
「ほんと?」
「言わないよ」
 アヤはあたしと手をつなぐ。優くんはアヤと手をつながない。あたしはアヤが自分と同じだとおもっていた。あたしと同じだから、あたしに声をかけたんだとおもっていた。それは全部あたしの勘違いで、アヤはあたし以上になにか重いモノを背負っている。だから、あたしは彼女を責める気にはなれない。
「麗羅ちゃんって、彼氏いないの?」
 優くんがあたしを覗き込んで、唐突にそんなことを聞く。内緒。優くんは首を傾げて、なに?と聞き直す。あたしは砂利道を走り出す。立ち止まって、振り返る。
「ナイショー」
 アヤが駆け出す。優くんも走り出す。あたしは綿菓子と焼きトウモロコシを両手に持って、笑いながら砂利道を走っていく。
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