R18恋愛官能小説 青山倉庫

太陽ノ樹

第30話「直径五センチ五ミリの宴」

 期末試験、最終日の午後。
 英語の試験が終わり、ぼくは山本くんと一緒に、いつもどおり屋上でお昼ご飯を食べる。給水タンクの日陰に腰掛け、フェンスの傍を蟷螂が歩いていく姿をみる。山本くんが、お弁当のおかずに蕗の薹が入っているのを箸でつまんで、ぼくの弁当箱に入れる。山本くんは好き嫌いが多い。
「性教育の試験がなくて、よかったね」
 山本くんが言う。性教育の授業は、あの日で終わりではなく、あの日を皮切りに一年生三クラスで毎日交代で行われ、ぼくは他のクラスの授業に借り出されて、藤井先生の指導のもと、他のクラスの女子たちと乱交を強いられています。他のクラスにも男子がいるのですが、彼らは授業中蚊帳の外で、女子はみんなぼくの周囲にたかって、興味本位か遊び感覚でぼくの身体を愛撫するのです。ぼくは自分のクラスの子だから、授業中にセックスしても許されるのだとおもっていましたが、二組でぼくは一様にちやほやされ全員に愛撫されて、一番奥手な子が多い三組を訪れたとき、箱崎シンパの教師に洗脳されていた子たちが、こんどは藤崎先生にコントロールされていて、セックスの神様みたいな扱いをうけ、虚栄心をくすぐる。だけど、ぼくはそうやって一方的に与えられるしあわせからは焦燥しか感じない。
「試験があったら、きっと全員、夏目くんとセックスするんだよ」
「一日じゃ終わらないね…」
「夏目くん、一日で、何人くらいとセックスできる?」
「…わかんない」
 ぼくたちは空の弁当箱を仕舞う。曇り空で日差しは柔らかいけれど、急に蒸し暑くなって、首筋がくるしい。
 性教育の授業以来、山本くんまでセックスの話題ばかり。学校内を歩いているだけで、女子たちの視線を意識して、頻繁に身体を触られたり、触らされたり、性的な接触がいちにちに何度も。ぼくたちは少しずつ大人の分別を身につけなければいけない大事な時期なのですが、淫らであることになんら罪の意識をもたない女子たちが、非日常を日常の一部のように自然と持ち込むのですから、廊下でフェラチオされても恥ずかしい素振りすらできません。
「今日は、リハーサルないの? 明日、ショーだよね」
「あるけど、夕方からだよ。小学校は普通にやってるからね」
「あ、小学生もいるんだよね…。いいな、みたいなぁ」
「山本くんも見に来る?」
「桃華にお願いしたけど、男子禁制だって、申し訳なさそうに言われた…」
「そっかぁ」
「ぼく、女の子に生まれたかった…」
「どうして?」
「男の子って、損ばっかりだよ。女の子はこんなに大勢いるのに、全員夏目くんとセックスできるんだよ。ぼくも女の子に生まれて、夏目くんとセックスしたかった。男の子ってだけで、勝った負けたの世界なのに、寝ても覚めても勝った負けた、強いの弱いの言われ続けるなんて、耐えられない。女の子だったら、お父さんもぼくを棋士になんてしようと思わなかったはずだし、夏目くんとも…、なんでぼく…」
 山本くんが涙ぐんで、下を向いて啜り上げる。女の子に泣かれるよりも、男の子に泣かれる方が動揺する。薄々気づいてはいましたが、山本くんは女子に興味がなく、男子が怖いだけでなく、ぼくのことが好きなのです。
 そうやってぼくを密かに慕う男の子がさめざめ泣いても、慰め方がわからない。ぼくは山本くんの頬に手をあてて、顔をあげさせる。濡れた睫がキラキラ輝き、艶のある唇が濡れて、女の子よりも切ない表情でぼくをみつめ、だけど、いままで身体を重ねてきた大勢のどの少女とも違う、決定的に違う、青くて、ひんやりと安定した、男の子の狂おしさを初めて目の当たりにします。男の子をすきになった女の子が恋に没入してしまうきもちを思い知って、大勢の処女を奪って薄っぺらな虚栄を充たされていた自分自身をひどく矮小に感じてしまう。
「ごめんね、夏目くん、ぼ…、んむ」
 山本くんとキスをする。絡んだ舌が熱く溶けあっていく。ふれあうほどに、違う生き物だと衝撃を突きつけられる女の子と違って、お互いのことをはじめから把握しているのですから、そこに驚くべき新鮮さはなく、ただそれまでの男の子の友達という関係が、キスひとつでパッと変質してしまう淋しさ。もう山本くんとは、友達、ではいられなくなった。
「はぁ、はぁ、だめ、だよ…、夏目くん」
「どうしたい?」
「え…?」
「ぼくが、口でしよっか?」
「ううん…」
「厭?」
「厭じゃないけど、夏目くんは、女の子がすきだとおもってたから……」
「女の子、好きだよ。山本くんは、とくべつ」
「じゃあ、ぎゅってして」
 意外な反応でした。ぼくは山本くんを抱きしめて、さらさらした髪の毛に鼻先をおしつけて、日なたの匂いを感じる。女の子よりも女の子らしい純粋さで、ぼくの肩にしがみついて、ぼくの胸に頬をおしあてて、ぼくのものでない心臓の鼓動に耳を澄ます。

 心拍とおなじリズムでバスドラとベースとディストーションギターのカッティングが黒いステージにズシンズシンと振動を与え、暗闇の会場でステージを歩く少女たちをスポットライトが追跡する金魚鉢学園のシークレットショーは、ファッションというよりもコスプレで、デザイン部のショーというよりも、猥褻な衣装をまとうモデルクラブの少女たちをみることができて、撮ることができて、かつ、触れることができる変わったイベントです。
 会場の四隅でインセンスが焚かれ、小学生たちの後にぼくがキャットウォークに登場すると、みっつのスポットライトが集中して歓声があがり、まぶしくて周囲がみえないのですが、ぼくが想像した何倍もの女子生徒がひしめき、汗とフェロモンが蔓延する細長いステージを先端まであるく間に何十人もの少女たちの手が闇から伸びて、扇情的な衣装がから露出した乳首と下腹部に触れます。
「夏目くん、こっちむいてー」
 女の子の声に惑わされてはいけません。ぼくたちは生きたマネキン。ステージの先端で立ち止まり、顎を引いて背筋を伸ばしたまま、決められたポーズで固定する。ぼくの衣装は首回りと腕と太股から下を薄い布地とファーで覆い、まだ下を向いている陰茎にはストレッチ素材の避妊具状の布が被せられているのですが、先にステージ先端に到達し、跪いたまま剥き出しの乳首と割れ目を観客の子たちにじかに触られて震えていたエレンとジュネが、布の上から陰茎を咥えて上目遣いでぼくをみあげる。
「ナンバー十五、十六、デザイン部三浦芽依さんの作品は、ハイネックから左右に分かれたストレッチ素材の前身頃が太股の付け根をきゅっと持ち上げる官能的な衣装。そして少年の身体の魅力を余すところ無く表現した究極のノーボディには、直径五センチ五ミリの元気な男の子を、厚さコンマ一ミリのシースルーがカバーする最高にエロティックな衣装です」
 唾液が染みこんで、みるみる勃起していく陰茎に薄い布がぴったりはりつき、完全に上を向いてから、二人は口を離す。ステージ先端に大挙した少女たちが写真を撮る。一曲目が終わると、エレンとジュネは立ち上がり、ぼくら三人は黒い衣装を着た子たちと入れ替わりに退出する。
「緊張するねー」
 ジュネが言う。ぼくらは衝立で区切られた控え室に走り、大急ぎで着ていた衣装を脱ぐ。別の衣装に着替える。建前上、あくまでも衣装が主題だから、ステージで性器を完全に露出してはいけないと海野先生からききました。ですが、女の子たちは指で拡げない限り露出できませんから、必然的に女子は股間になにもつけない衣装が多い。ぼくは、大崎奈美と、腰でつながった赤いドレスを着せられる。着る前からバックスタイルで結合し、限界まで挿入した状態で腰帯をぎゅっと引かれ、上半身は背中と胸がハート形にカットされ、スリーヴの先端もお互いつながっていて、ぼくらはこの怖ろしく歩きにくい衣装で、あの長いキャットウォークを先端まで歩かなければならない。リハーサルでは何度も転びました。
「夏目くんと奈美ちゃん、一分前です」
 ぼくたちはつながったまま、袖に移動する。双子の姉の大崎香奈がぼくたちを先導する役目。ドキドキしながらモニタをみつめて、戻ってくる星來や美紀子のバニーガール風の衣装にみとれていると、今日はスタッフに徹する桃華が合図して、ぼくたちは美紀子たちと入れ違いに歩み出すと、周囲からの大量のフラッシュに襲われて目が眩む。
「ナンバー二十二、二十三、大塚京子さんの作品は、たくさんのフリルにつつまれた可愛らしいお姫様タッチのコーデ、その後ろには、王子様と仲睦まじい姿の双子がふくらみかけの胸を大きく露出し、手を取り合っての登場です」
 ぼくたちは一歩あるくごとに、先端が子宮を突き、フリルが幾重にも重ねられた短いスカートは、一段低い観客席の視線を遮らない。リハーサルでは感じなかった緊張と羞恥のせいで、ぼくの陰茎はいつもの何倍も硬くなり、奈美の膣から溢れた体液が太股を伝い、ぼくは奈美の手を握り、奈美の乳房を覆い、指先で乳首を摘みながら、一歩一歩進む。焦ってはいけない、急いではいけない。だけど、大勢の観客にみつめられて、ぼくたちは著しい焦燥を感じ、アドレナリンが流れ出すのを感じ、毛穴が開くほどの快感を感じ、大音響の音楽できこえないけれど、奈美の乳首を摘んだぼくは奈美の喘ぎ声の振動を感じ、ステージの先端に到達すると、百人以上の少女たちの視線を浴びながら、なりふり構わずピストンを開始する。
 あーっ、あーっ。
 音楽に負けないくらいの絶叫と共に奈美の膣が痙攣して、ぼくは自分の身体もコントロールできず、派手にブシャァッと射精する。大量の精液が太股を濡らす。ぼくらの周りに飛び散る。今日のためにリハーサルでもイかずに我慢してきた分、すごい量。
 ぼくらはそのままゆっくり向きを変えて、飛び散った精液で足を滑らせないように気をつけながら、元来た道を戻っていく。間接光で客席の少女たちがみえます。闇に乗じ裸になって抱き合ってる子たちが何人もいる。戻るときも前後に揺れるから、またきもちよくなってきて、奈美は何度か立ち止まる。ステージ袖に入って、その場で衣装を脱ぐ間も入れっぱなしだから、ぼくは揺れないように必死で堪える。裸になって離れるとき、奈美はその場でうずくまる。
「次でラストだから、頑張って」
 すでに着替えている麗奈が奈美を抱き起こす。女の子たちは水着のようなナース服に着替える。ぼくは全裸のままストレッチャーにのせられ、股間に申し訳程度の布を被せられ、次々に出て行く女の子の最後尾にストレッチャーごとゴロゴロと推されて登場する。キャットウォークが取り外されて、緩やかなスロープを下って会場の中心に到達すると、ぼくはストレッチャーから下ろされ、床の上に仰向けに寝かされ、ナース服を着た少女たちがぼくに群がって全身を舐める。観客の女の子たちが取り囲んで人垣をつくり、みんな写真や動画を撮る。何人もの舌と唇が陰茎を上下に滑り、ぼくは二度目の精を噴きあげる。ジュネがぼくをまたいで、射精真っ最中のおちんちんを割れ目に沈めていくと、急に音楽がとまり、会場が静かになる。
「ラストナンバー、赤と白のコントラストが美しいナース服は、栗田沙智さんの作品です。そして、患者役の少年には、長大な陰茎をすっぽり包み込む少女の身体こそが最高の衣装であるというデザイン部からの新しい提案です」
 何度聞いてもわけのわからないナレーションを最後に沈黙し、女の子たちの囁き声と喘ぎ声と方々からのシャッター音、そして、ジュネが上下に揺れ始めると、観客の子たちがナース服を着たモデルたちにまとわりついて、ぼくの周囲で愛し合い始める。お互いダイレクトに割れ目に指を入れて音を立てる。ぼくは手のとどくところで跪くワンピースの少女の股間を撫でて、もう濡れていて、指を入れると四つん這いになってぼくとキスをする。いろんな子に身体中を愛撫される。ジュネの胎内に射精すると、見えないところで別の子に交代する。
 みんな、頭がおかしい。
 ショーの時間は長時間なのに、実際にステージを歩くのは二十分程度で、残りの時間は交流ときいていたけど、どういう意味かいまになって気がついた。
「夏目くん、はっ、あ…、しあわせ?」
 ぼくの左手の指を入れている子がキスをしながら囁く。
「きもち…いい、よ」
「しあわせ、じゃ、ないの?」
「きもち、よくて、しあわ…ぜっ」
 びゅうううっ、びゅくっ、びゅくっ、びゅくっ、びゅくっ。
 また射精する。すごい溜まってる。だけど、ぼくの左手の指を入れている子が怖ろしいことを囁きます。
「まだ一人目だよ…、今日、百人くらいいるから、頑張ってね」
「え?」
「男の子は、夏目くんひとりだよ」
 別の子が腰を沈める。処女の膣がムチムチムチっと音をたててぼくを飲み込む。こんな切ない感触を百回繰り返すなんてきがくるってしまう。
 モデルクラブで三十三人の処女を奪って、処女膜が裂ける感触なんて滅多になくて、無理をして膣を傷つけて出血することがあるけど、無理をしなければ血はでないし、ちゃんと拡がればスムーズに子宮頚まで達することを識りました。おちんちんが小さくても濡れてない女の子は痛がるし、ぼくみたいに大きくても焦らされた膣は風船のように膨らんで、全長三十二センチ五ミリの陰茎をぐいぐい飲み込んでしまう。
 名前もしらない処女を喪ったばかりの女の子が上下に揺れる。ぼくも腰を上下に微動させ、初めて男の子をしったばかりの粘膜に振動を伝えます。みんながおかしくなっているのは、インセンスのせいだと薄々感づいているのですが、ぼくは黙ってぼくの短い一生で二度と味わえないかもしれない快楽を貪ります。四度目の射精で、ぼくは人垣から差し出されたプロテインを飲む。次の少女が腰を沈める。スポットライトの代わりに壁際の間接照明に切り替わり、ナース服を着たままのクラブの少女がトレーに飲み物をのせて運ぶすがたが、少女たちの肌の隙間からみえます。そのうちのひとり、牧野智美が膝をついて、飲み物いる?とききます。
「智美は、しないの?」
「するよ、あとでね」
 そう答えてキスをする。ぼくはまた射精する。射精すると、おさまる前に次の子に交代する。全然落ち着けない。少女たちの肌が目の前で上下前後左右に蠢き、ぼくに跨った子のピストンと喘ぎ声が激しくて、肉林の隙間からも別の肉林が覗き、少女たちは少女たちどうしで抱きあい、愛しあい、イかせあう。その中に、半裸で、包帯を巻き、眼帯をつけて、片腕をギプスに包まれ肩からつるした異様な少女の姿をみつける。少女たちの二の腕と、胸と、股間の隙間にみえたその少女は向こうをむいて誰かに電話している。楽しそうに電話している。振り返る。
 傷だらけの亜梨子がぼくに微笑みかける。
「あり…す、ふうぅっ」
 また射精する。額に汗をかき、身体がじんじんと痺れ、少女たちの喘ぎ声も囁き声もとおく曇り、現実が離れていく。
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