R18恋愛官能小説 青山倉庫

太陽ノ樹

第22話「脅迫カルテット」

 全校朝礼。
 学校長の海藤郁恵先生が、退任の挨拶をする。表向きは年齢を理由にしているけれど、事実上、ここ最近の不祥事の責任を取った形。海藤先生はあまり学校に来ないひとで、あまりに酷い放任主義だったから、そういう魑魅魍魎が校内に跋扈する。ぼくたちは、すくなくともぼくは、その挨拶のあいだ、金魚鉢がすこしでも良くなればいいと安心していたのですが。
「皆さんには長い間お世話になりました。一年生とは、短い期間でしたけれど、この学校を去った後も、みなさんがよりよい学校生活を送れるように、期待しています。先生は皆さんにたくさんの元気を貰いました。だけど、老いたものはいつか去らねばなりません。でないといつのまにか妖怪になってしまいます。先生の後任は、ベテランの渡辺先生が継ぎますから、皆さんは安心してください」
 長い挨拶のなかで、後任のことにさらりと触れ、みんな自然と聞き流すけれど、ぼくには絶望的な宣告に聞こえた。みんな聞いていなかったのか、わかっていて流しているのか、どうしてざわつかないのか、不思議でしょうがない。学年主任の渡辺一也が校長を引き継げば、この学校は良くなるどころかいまより悪くなる。民主党の後に公明党が政権を取るような事件です。渡辺の唱える教育論は、平滑化された個性主義だ。出発地点から矛盾しているから、なにを言っても信用できない。お父さんがどうしてこのまるまる肥えた禿頭の醜男とつきあいがあるのかわからない。
 渡辺先生が壇上にあがり、挨拶をする。海藤先生以上に要領を得ない長い話が始まる。いつも二十分くらいで終わる朝礼が、もう三十分くらい続いてうんざりする。
「生徒さんの中にはしっている子もいるかもしれませんが、我が校では以前、適性試験というテストを行っていました。良い点数を取るための試験ではなく、皆さんの得手不得手を明確にするものです。試験の結果はカルテとして保管され、生徒さんたちの指導のために、先生たちが役立てます。ですから、カルテはご本人と指導の先生以外は閲覧することもありません。試験の中には、普段の生活や興味についても書く欄があり、また、生活指導を希望する先生の名前を書くこともできます。先生のお仕着せではなく、生徒さんが、自分の悩みや興味について、好きな先生に識ってもらうことができるんですね。その結果、生徒と教師の信頼関係が育まれ……」
 渡辺先生は適性試験のメリットだけを冗長に並べ立てる。ぼくはその試験のことを、桃華に聞いてしっていた。桃華にはお姉さんがいて、おなじ金魚鉢だったから、この適性試験を受けたことがあって、桃華のお姉さんは何ら問題なかったのだけど、仲の良い友達が何人か学校を転校してしまい、それが適性試験の結果によるものだと噂されていました。どこまで本当かわからないけれど、適性試験は、問題のある生徒を転校させるためのシステムで、生徒全員に受けさせることにより、次は教師にも受けさせ、政治的に対立する先生たちを骨抜きにする計画の一旦だと、学校を去った田渡先生からききました。
 金魚鉢では、古くからいる先生たちと、渡辺以下外部から呼ばれてきた教師とに分かれ、教育方針などで対立しています。今回の騒動で、百道先生や倉掛先生など、渡辺サイドの教師が何人か学校を去りましたが、斉藤先生や田渡先生などの、古い金魚鉢を識る教師も巻き添えを食らい、痛み分けに終わったのですが、渡辺先生は更に教育へ政治を持ち込もうと躍起のようです。その厚かましい態度がぼくのような子どもにさえ鼻につくのですから、昔からいた田渡先生にとっては堪え難いことなのかもしれません。

 いつもどおりの授業。倉掛先生の後任になった英語の小敷理恵先生は、海野先生より若い。新しい先生たちはみんな若くて、発言の中身も中立。保守的でもなければ、渡辺先生の『革命』を支持する声もない。田渡先生の後任の小島朝子先生なんて教育実習生みたいで、教職員免許を持ってないんじゃないかと、沖田くんが心配していた。その沖田くんは、珍しく登校して、朝礼の時は見かけたけれど、いつの間にか早退していた。沖田くんは早退が多い。
「夏目くん、辞書、みせて」
 芙実が声をかけてくる。プールでセックスした後も、伏し目がちな態度は変わらず、ぼくを名字で呼ぶ。辞書を渡す。芙実はパラパラめくって、すぐに返す。辞書に、紙が挟まっている。
『Wi-fiでfumichanから画像落としてみて』
 なんのことかわからなかったけれど、ぼくは机の影でスマホを開き、Wi-fiの画面にする。いくつか並んだアクセスポイントに、fumichanがあって、セキュリティがかかっていない。タップして接続する。画像のファイル名がリスト表示される。ダウンロードしないとサムネイルも表示できない。ぼくは上から順にダウンロードする。一枚につき一秒ほどで、全部で七十六枚。ダウンロードが終わって、写真アプリを開くと、生々しい肌色のサムネイルがずらりと並ぶ。一枚目を開く。白いヒールとシースルーのタイツを履き、マフラーを巻いて毛糸の帽子を被った裸の少女の写真。瑞々しい肌に汗がしっとり滲み、乳首がくっきり勃っていて、股間は汗じゃない体液で輝いて、紅潮した頬と濡れた唇を差し出した少女の表情は、セックスしてる最中のお姉ちゃんや妹にそっくり。画面をスワイプすると、全部そんな写真ばかり。
 ぼくは、芙実にメールする。何の写真? 芙実から返事。特進校の子たちだよ。ぼくは授業中なのに、ずっと下を向いてメールする。
 金魚鉢学園には特進校という秘密の分校があって、小学生から高校生まで、選ばれた生徒たちが所属し、芙実の言葉で「エロ専門」のお仕事を貰っている。その特進校に入るには、セックスが好きで、乱交とかに抵抗のない子でなければならないという、ぼくでも識っている都市伝説があります。誰も本気で信じていないから、噂に尾ひれがついて、いつの間にか乱交学校とまで呼ばれるようになったそうです。だけど、その都市伝説だった特進校の写真が流出し、リアルタイムで騒ぎになっているところ。
 ぼくがたったいま芙実に貰った写真は、裸の少女たちが抱き合っている程度のものですが、その幼い少女たちの表情は、明らかに大人の快楽をしっている。芙実のメールによると、これらの写真は、学校内のどこかに現れた、ひらがなで「さくらんぼ」というアクセスポイントに接続したらボロボロ落とせたというリアリティのある話。
『今日、モデルクラブに出て』
 芙実ではなく、桃華からメール。顔を上げると、振り返った桃華が手を振る。

 放課後、ぼくは桃華のメールのことを忘れたふりをして帰ろうとしたけれど、倉野麗奈に腕をつかまれ、体育館に隣接する別棟三階のスタジオに連れて行かれる。渡り廊下を通って、体育館の外側の廊下を抜け、別棟の階段をのぼる。麗奈が立ち止まって、ぼくに囁く。
「モデルクラブに入るんでしょ、桃華に言われて」
「うん」
「それ脅迫?」
「うん…、半分くらい」
「じゃあ、やめる?」
「ううん、約束…したから」
「じゃあさ、あたしの言うこときいて」
「うん」
「一応、モデルクラブって、非公式なんだけど、金魚鉢小の子も在籍する、一番ふるいクラブなの。入部を希望しても簡単に入れるってわけじゃなくて、テストを受けないといけないのね」
「テスト? なんの?」
「難しいことじゃないんだけど、カメラテストをやるのね。カメラの前でポーズとったり、自分がどう観られているか、ちゃんと把握してることを確認するだけだから、どってことないんだけど、それがね、みんなの前で裸になるから…」
「裸になるんだ…」
 またか、とおもいました。この学校の子は、みんな裸になりたがる。
「いやかな?」
「ううん、どうせ、もうみんなの前で、一番恥ずかしいことしたから…」
「あー、ね。あたしもみたよ」
 麗奈はケラケラ嗤って、ぼくの腕を抱いて寄りかかる。胸をおしつける。麗奈はおっぱいがおおきい。ぼくはそのまま腕を曳かれ、階段をのぼる。
 スタジオの入り口は他の教室施設と異なり、映画館のような重厚な扉で閉ざされ、明けるときにも音がせず、内側には暗幕が垂れ下がる。そこをくぐると、女子の匂いで充満したスタッフルームに、中学の女子だけでなく、ランドセルをしょった小学生もいて、
「モモ、連れてきたよ」
 麗奈の声に全員がいっせいに振り返り、好奇の視線が殺到します。手を曳かれて少女たちの間を歩き、ぼくは、桃華の前に立たされる。
「入部希望?」
「うん」
「じゃあ、脱いで」
 ぼくは躊躇無く、シャツのボタンを外す。ベルトを外す。脱ぐ。下着も脱ぐ。今更どうってことない、そう言い聞かせるけれど、やっぱり識らない子たちに囲まれて、緊張で手が震え、恥ずかしさに顔が火照る。脱いだ制服を麗奈に渡して、全裸になって桃華の前にもういちど立つ。女の子たちが集まってきて、ぼくを前から観察する。みんな、ぼくの長大な性器をみたくて仕方が無く、ぼくは手で隠すこともできないほど大きな羞恥をぶら下げて、全身に満遍なく視線を浴び、そして、みられているという恥辱がぼくの身体を滾らせ、巨根がむくりと首を起こし、その反応に著しい焦燥を覚えます。
「上靴も脱いで」
 ぼくは上履きを脱いで、靴下も脱ぐ。床板がひやりと冷たい。
「くるっと回って」
 ぼくはその場でゆっくり一回転する。みんなが下半身に注視する。
「もういっかい」
 もう一度、その場で回る。誰かが、似てるよね、と囁く。お姉ちゃんに似てるという意味でしょうか。お姉ちゃんは、部活動はしていません。
 その場で回転して、じっと観察されていたおかげで、ぼくも周囲を見渡すことができる。スタッフルームは、いや、この別棟自体が木造の古い校舎で、板張りの床に白い塗装が乳白色に焼けた壁と柱、本校舎には残っていない懐かしい濃緑色の黒板、窓際には古いカタチの机が並んで、壁の片側は窓が外されて、向こう側の撮影部屋に続いています。
 女の子は一クラスよりも多いくらいで、私服の小学生が九人、中学生がその倍くらいで、全員女子。おなじクラスの子は、桃華以外に、ぼくを連れてきた麗奈、隣の席の芙実、お化け屋敷でお姉ちゃんとのセックスを目撃した真島由香と南条留美子、それに、あまり話をしたことのない鳥飼遥香、市松美香子、安田星來、一年生の人数が多くて、二年生、三年生はちらほら。学年ごとに、履いている上靴の色が違う。
「カメラテストするから、そのままあっちの部屋に行こう」
 桃華が言って立ち上がる。ぼくは桃華についていく。撮影部屋に入ると、中判の写真機が木製の三脚に据えられ、それを設定していた意外な人物と再会する。桃華が紹介する。
「高井戸美桜さん。金魚鉢高校の写真部のひとで、ウチの撮影をお願いしているの」
 美桜は、一瞬微笑んで、ぺこりと頭をさげる。すこしよそよそしい態度です。
「じゃあ、麗奈と芙実で、準備して。照明三発持ってきて、カーテン一枚ひいて。美桜さんお願いします」
 ぼくは麗奈に手を曳かれて、撮影場所に作られた衝立の囲いに連れ込まれる。そこに脱いだ制服を置いて、真新しいドアを抜けると、真新しい脱衣所と、全面ガラス張りのシャワールームがあります。麗奈と芙実は上履きと靴下を脱いでシャワーの前にぼくを引っ張り、お湯を出す。手をかざして湯加減をみる。桃華がドアから覗き込む。
「ざっとでいいからね。撮るとき濡らすから」
「はい」
 二人はお湯を出しっぱなしで、バタバタと脱衣所に戻って制服を脱ぐ。裸になって戻ってくる。手に掴んだタオルをぼくの頭に巻いて、髪の毛をカバーする。麗奈がシャワーを持って、説明する。
「撮影前には、温いシャワーを浴びます。身体を洗うんじゃなくて、肌を温めるのね。だから、髪の毛は濡らしちゃいけないし、長時間浴びてもだめ。ざっと濡らしておしまい」
「うん」
「まだ、興奮しちゃだめだよ」
「頑張る…」
 麗奈は褄先だって、乳房をおしつけて、ぼくの耳元で囁く。
「撮ってるとき、きもちよくするから」
 ぼくがなにか答えるのを待たずに、麗奈はぼくの身体を流す。芙実が背中かから抱きついて、ぼくのお腹を撫でる。自分の身体も流す。ぼくを向き直らせて、背中も流す。芙実が向かい合ってだきつき、背中を撫でる。ぼくは芙実のちいさな身体を抱く。緊張していた気持ちが緩む。
「海野先生は?」と芙実にきく。
「今日はこないよ。週に三回くらい顔みせるけど、心配しないで」
「なにが?」
「なっつー、エッチなこと大好きだから」
「ふうん」
「じゃあ、行こっか」
 二人がぼくの手を曳く。脱衣所でバスタオルを巻いて、身体を拭く。麗奈も芙実もバスタオルを巻く。脱衣所を出て、撮影ステージまで手を曳かれる。スタッフルームに控えている女子たちが囁き合う。身体に巻いたバスタオルの裾から、長いおちんちんがぶら下がる。白い背景紙の上に花柄の布とクッションを敷き詰めた安楽椅子が置かれて、ぼくはタオルを脱いで全裸になり、椅子の上に仰向けに寝転ぶような、だらしない格好で座る。白い天井と、照明の眩しさで目が眩み、つい険しい表情になる。
「夏目くん、眼を細めちゃだめ」
 桃華に咎められる。ぼくは窓の外を眺め、努めて周囲に気を配らないようにする。美桜の声だけを聞く。もっと深く座って、右膝をたてて、少し右をむいて、顎をひいて。どう観られているのか、ぼくにはわからないけれど、美桜の指示に従えば、ぼくの身体はすこし無理な体勢になる。
「はい、撮ります」
 パシャンと乾いた金属音が響く。デジタルカメラの電子音に慣れたぼくには、大きなメカニカルシャッターの音が時間を切り裂く鋭さにビクンと感じる。小津熱帯園できいた音よりもソリッドで、スタジオの壁が残響を閉じ込める。美桜は手持ちのカメラでぼくを撮る。近づいて撮る。脚もとからぼくを見上げて、シャッターを切る。膝の上から見上げる。今度は肩越しに見下ろす。ときどき、ポーズを変えるように指示をする。カメラをおろして、美桜は麗奈と芙実に手招きをする。ぼくに聞こえる声で囁く。
「乳首、と、アソコ、勃ててあげて」
 二人は、はい、と答えて、バスタオルを脱いで、ぼくに覆い被さって、ぼくの左右の乳首を嘗める。吸う。その最中から、美桜がシャッターを切る。いろんな角度で撮る。麗奈の舌が首筋を這い上がり、芙実の舌が脇腹を滑り降りる。ときどき響くぴちゅぴちゅが、シャッターの音よりずっと殺伐にきこえる。麗奈の唇がぼくの唇に重なり、芙実の舌が陰茎を滑って先っぽに到達すると、女子たちが歓声をあげる。半分充血したおちんちんが、みるみる硬くなる。麗奈と舌を絡ませ、芙実の口腔におちんちんが包まれる。シャッターが連続で切られる。
「きもちいい?」
 麗奈が囁く。ぼくは薄く眼を開いて、うん、と答える。麗奈は位置を変えて、芙実と共に、ぼくのおちんちんに舌を這わせる。二人の唇が陰嚢に吸い付き、睾丸を吸い込んで転がして、そのまま陰茎の左右を分け合うようにふたつの唇が一緒に這い上がり、先端の粘膜を挟んでキスをする。先っぽを奪いあい、与えあい、ぼくのいちばん敏感な部分を残酷に弄び、その向こうで大口径のレンズがぼくたちを捉える。
 モデルクラブのことはぼくも少しだけきいたことがあります。
 すごく細い布地の水着を着て写真を撮ったり、セミヌード撮影をしていて、金魚鉢学園の小中高校生が所属するけれど、進路の決まる高校生はあまり参加しないとか、わりとどうでもいい話。扇情的なナース服やレオタードを着た少女の写真を見せて貰ったことがあります。デザイン部が作ったナース服のおかげで、最初はナースクラブと呼ばれていたのだけど、名称が風俗みたいだと問題になって、モデルクラブに名前を変えました。金魚鉢といえば、服飾デザインの部があるので、モデルクラブはあまり目立ちません。
「はい、オッケーです。夏目くん、ありがと!」
 美桜が言うと、両脚にねっとり絡みついていた麗奈と芙実が、すっと立ち上がり、ぼくの手を曳いて起こす。涙が眼球を洗う麗しい表情が二人からすっかり消えて、その変化の速度についていけず、ぼくはモタモタしながら受け取ったバスタオルを身体に巻き、再びシャワーを浴びにいきます。さっきとおなじぬるいお湯を出して、麗奈がぼくの顔にかける。芙実が背中から抱きついて、勃起したままのおちんちんを握る。
「いつも、こんな感じなの?」とぼくはききます。
「いつもは、もっと長いよ。衣装変えながら、いっぱい撮影するし、みんな籠もるのすきじゃないから、あんまりスタジオ撮影ってしないかも、ね。芙実はお外の方がいいんだよね」
「あたしどっちでもいい」
「ほらね。どっちでもいいの、ウフフ」
「麗奈は、外で脱ぐのすきじゃん」
「あたしはー、脱がされるのがすきなだけだもん。なっつーが外で脱いじゃだめって言わなければ、もっといろんな写真撮れるのにね」
「カメラマン少ないよ。いつも美桜さんに負担かけてる」
「美桜さん、手持ちで動画撮れるひとじゃん。あの人とおなじレベルの人は、写真部にもいないよ。それに、美桜さんが、他のカメラマン厭がってるからさぁ」
 シャワーをフックにかけて、ぼくを挟んで芙実と麗奈が抱き合う。おちんちんが麗奈のふくよかな乳房に挟まれる。なにもかも柔らかい。身体が快楽を求めて腰が前後に揺れて、芙実と麗奈は静かになって、ぼくは麗奈の股間に触れる。芙実の割れ目に指を沈める。二人とも抵抗しないけど、芙実は、だめだよ、と囁く。ぼくは中途半端に悶々としたまま、二人の性器を弄ぶ。麗奈がぼくの手首を掴んで、だーめ、と言う。シャワーを止める。
 身体を拭いて、スタジオの脇で着替えているとき、桃華がクリップボードを渡す。
「入部届、スグに書いて出してね」
「うん…」
「土曜日は授業があっても、活動してないから、正式には週明けからだね」
「毎日なの?」
「平日は毎日だよ。夏目くんは唯一の男子だから、結構大変かも。でも、あたしの命令は絶対だから、ちゃんと言うこときいてね」
「うん…」
 桃華と入れ違いに、私服姿の小学生三人が近づく。まだTシャツを羽織っただけの半裸のぼくを取り囲む。
「夏目くん、お姉さんは?」
「お姉ちゃん? 入院してるよ」
「ニューイン? そっかー、一緒には入らないんだ」
「どうして?」
「杏ちゃん、美人だから。でも、姉弟では入らないよね。夏目くん、ウチらと、いろんなことしなくちゃいけないからさ、大変だよきっと」
「どんなこと?」
「おたのしみー」
 意味深な言葉を残して三人は走り去る。女の子たちがまだぼくに注目していることに気づいて、慌てて服を着る。身体がまだ熱い。スタジオは片付けが始まっている。タブレットで写真をみている子がいて、衣装合わせをしている子もいて、下着姿の子が他の子の前でポーズをとっていて、みんな思い思いの方向を向き、部屋全体が女子の体臭で充満して、眩暈がする。教室とは違う、女の子のための部屋に、間違えて紛れ込んだ気がして、いたたまれない。隅っこで小さくなって、もじもじしていると、芙実と麗奈が、一緒に帰ろうと誘ってくれる。
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