R18恋愛官能小説 青山倉庫

トッカータ

第16話「背中」


 夏休み明けの新学期。
 教室に入ると、由里とアヤが話し込んでいる。由里がおはようと言う。アヤもおはようと言う。あたしはアヤに視線を合わせることができずに、由里におはようと返す。席に着く。菜奈と友恵が駆け寄る。
「麗羅、現像できたよ」と菜奈。
「えっ、ほんと?」
「友恵のお兄さんが写真部だから、学校の暗室を使えたんだって。麗羅の分も焼き増しして貰うね」
「それって、見られたってことじゃない?」
 友恵があたしの前の席に座って言う。
「あたし自分で現像したよ。だから大丈夫。結構、綺麗に写ってるよ」
「やだ、あたしいいよ、いらない。恥ずかしいよ」
 優くんは夏休みの最後の二日間、友達の家に泊まるふりをして、あたしの家に泊まった。優くんは初めての外泊に興奮気味で、ほとんど眠らずに愛し合った。遊びに来た菜奈と友恵は使い捨てカメラで写真を撮っていたけど、そういうのって現像できないはずだからあまり気にしていなかった。
「麗羅ちゃん」
 背後から声をかけられる。振り返る。アヤが立っている。
「コピーありがとね。助かった」
「うん、あたし先週実家に帰ってたから、連絡つかなかったでしょ」と嘘をつく。
「やっぱりそうなんだ。全然いないからさ、ちょっと心配しちゃった」
「ごめんね、電話すればよかった」
 先生が教室に入ってくると、みんな席に着く。夏休み明けで真っ黒に日焼けしてる子もいるし、髪型が変わった子もいる。夏休みが明けて急に雰囲気変わる子は多い。あたしもいろいろ変わったけど、見た目はそんなに変わらない。この休みの間に処女を失った子は何人いるんだろうとか、そんなことを夢想する。
 先生が夏休みの宿題を集める。やってない子も結構いる。先生が「席替えをします」と言うと、みんな急に盛り上がる。今まで名前順だったから、代わり映えしなくてつまらなかった。先生は紙切れを捩って作ったくじをみんなに引かせる。くじに書かれた番号の席に変わる。みんなぞろぞろと席を移動する。あたしは後ろの方になって、左隣に優等生の朝倉結衣、菜奈と友恵がすぐ近くで、アヤは前の方の席。右隣は髪型が派手な間島くん。間島くんは結衣とつきあっていると聞いた。夏休みの間、あたしと同じような経験をしているかもしれない。そんな浅ましいことを考えながら間島くんの指先を見ていると、間島くんが身を乗り出して聞く。
「舞洲さん、くじ交換してくれる?」
 あたしはつい笑ってしまう。
「言うと思った」
「お願い、今ならまだバレないって」
「いいけど、見返りが欲しいな」
「あっ、じゃあ、カラダで払う」
「バーカ」
 あたしは間島くんに背を向ける。結衣に話しかける。
「ねぇ、間島くんが席変わって欲しいって。どうする?」
 結衣はあたしに顔を近づけて、小声で言う。
「絶対ヤダ」
「あら、どうして? 朝倉さん、間島とつきあって…」
「つきあってないよ。学級委員になって、ちょっと優しくしたから勘違いしてるだけ。盛り上がってるのは間島だけだよ。へんな噂までひろまっちゃうし」
「そうなんだ」
 あらかた全員が席に着いてから、先生が席順をメモする。黒板に二学期の行事日程を書く。説明する。すぐに健康診断と身体測定、避難訓練、運動会、合唱コンクール、教育実習、家庭訪問。時間割と家庭訪問のプリントが配られる。今日は日直がいないから、保健委員の綾川さんと朝倉さんが片付けして、日誌を書いてください、と先生が言う。あたしはもう一度結衣に聞く。
「ねぇ、日直代わってあげよっか」
「どうして?」
「代わって欲しいの」
「いいよ」
 ホームルームが終わって、みんな下校する。授業はないけど、部活はやっている。あたしは黒板を消して、花瓶の水を換える。アヤが不思議そうな顔であたしを見る。
「どうしたの?」
「朝倉さんが代わって欲しいって」
「そっか」
 プリントを整理しながら、アヤが時間割を張り替えるのを見つめる。しばらく教室に残っていた男の子たちも帰ってしまう。アヤは黒板消しを窓際ではたく。あたしはそっとアヤに近づく。アヤの背中を抱く。腕を腰に回す。アヤは動きを止める。
「だめだよ、麗羅…」
 あたしはアヤの首筋にキスをする。抱きしめる。アヤは抵抗しない。
「だめだよ…、あん」
 アヤのみみたぶに歯を立てる。制服の裾から手を入れて、薄い乳房を撫でる。アヤの呼吸が荒くなる。アヤは黒板消しを床に落とす。手摺りを掴む。振り返る。
「麗羅…、もうこんなこと…んむ」
 あたしはアヤに唇を重ねて言葉を奪う。グランドを走るバレー部が顔を上げると見つかってしまう。ドキドキしながら、アヤのスカートの裾を持ち上げる。アヤも裾を掴んで抵抗するけど、あたしの手はすでにショーツに滑り込んで、濡れた粘膜に指先を沈める。
「だめ、だめ、そっ…」
 急に抵抗し始めたアヤのからだを掃除道具箱に押しつける。カーテンを引いてグランドから見えなくする。再びキスをする。優くんでもしないくらい荒々しくキスをする。指先をアヤの胎内で震わせる。アヤはあたしの背中を抱いたまま、ひどく痙攣する。声を堪える。瞬く間にイッてしまう。あたしの中指をぎゅううっときつく締めつけて、アヤは腰が砕けて床に座り込む。あたしも一緒に座り込む。
「どうしてこんなことするの?」
「忘れられないから」
「だめだよ…、もう」
「あたしが男だったら、アヤをレイプしてるとおもう」
「そんなこと言わないで」
「アヤが欲しいの。誰にも渡したくない…」
 アヤは俯く。あたしの腕を取って、ゆっくり引き抜く。あたしはアヤの前で指を舐める。アヤは恥ずかしそうに肩を竦める。またキスをする。アヤの背中を壁に押しつけて、たくさんキスをする。アヤはあたしの肩を掴む。唇を離す。悲しそうな表情で呟く。
「麗羅が男の子だったらいいのに」

 仰向けのあたしの上で四つん這いになったアヤが、優くんに突かれて前後に揺れる。
「あっあっあっうっひっ…、麗羅、すっ…ううっ」
 優くんがおちんちんを引き抜いて、素早くあたしに挿し替える。動く。あたしの中でちゅるちゅる動く。アヤが唇を重ねて、あたしの乳首を指先ではじく。あたしはきもちよすぎて、アヤの背中に爪を立てる。あたしの痕をつける。あたしは背中に痕をつける癖がある。キスマークとは違う、本人には見えない快感の証。優くんや菜奈ちゃんの背中も引っ掻いた。あたしは自分の背中に痕をつけて欲しいけど、アヤはあたしの首筋に舌を這わせる。鎖骨の上を強く吸って、すぐに消えちゃうキスマークをつける。
「きっもっち…いいぃよぉぉっあっあっあっ」
 今日はもともとあたしの部屋に優くんだけが遊びに来る約束だったけど、アヤを誘って久しぶりに三人で乱交する。アヤの気持ちはわからないけど、前よりもっと中途半端な関係になったことは確か。
「麗羅、きもちいいの?」
「いいよぉ、あっあっあっいっ…いいぉ」
「あたしとどっちがきもちいい?」
「同じ…だよ、ゆぅく…の、ちんぽは、あっあっあっゃの、ちん…」
 ぶじゅうううっ。
 優くんがあたしの中に射精する。滾るような体液があたしの子宮を満たしていく。妊娠するかもしれない不安はずっとあったけど、優くんなら構わない。だって、アヤとあたしは子供をつくれない。
「麗羅、あたし、ヤるよりヤられるほうがいい」
「じゃあ、優くんのちんぽは、あたしのちんぽ」
「ふふ…、それじゃ、麗羅のおちんちんにサービスしなくちゃ」
 あたしは片手で優くんのおちんちんを抜き取る。優くんはそのまま尻餅をついて、腰を突き出したままがくがく震えて、精液が飛び散って、あたしたちの髪や顔や肩にキラキラと降り注ぐ。あたしとアヤはまだ射精がおさまらないおちんちんに唇をつけて、半分ずつ愛撫する。棒と袋を交代で飲み込む。優くんはきもちよさそうな表情であたしたちを見つめる。優くんもあたしたちもホラー映画みたいにぐちゃぐちゃに糸を引いて、血の代わりに精液とか愛液とか唾液とか色々な体液に濡れて輝いて、唇が腫れるほど散々奉仕して、再びあたしはアヤと抱き合って、優くんはあたしとアヤに交互に抜き挿しして、ゆるゆるとピストン運動を繰り返して、静かな部屋に潤んだ粘膜の音とセックスの吐息が反響するのに耳を澄ます。あたしとアヤはお互いの乳首を指先で愛撫しながら、唇を重ねる。アヤの長い睫毛があたしの頬を撫でる。アヤも志保も菜奈ちゃんたちも、女の子はみんなセックスの時やキスの時に目を閉じるけど、あたしは薄目を開けて観察するへんな癖がある。それに、優くんがあたしの中に出した回数も数えている。アヤが思っているほどあたしはノーマルじゃない。
「アヤ、こうすると、いいの?」
 あたしはアヤの首に手を回す。アヤの頬が紅潮する。優くんがアヤを滅多突きにして、四つん這いのアヤの顎や乳首やお腹やアソコから精液が垂れ下がって、プラリプラリと前後に揺れながら、あたしのからだに滴り落ちる。きもちいいよ、れいら、きもちいいよ、濡れて腫れぼったいアヤの唇がそう言って、白目を剥いて絶頂する。全身が跳ねて、優くんがおさえつけても飛び跳ねる。あたしは痙攣するアヤをしっかり抱きしめて、優くんはおちんちんをあたしに入れ替えて、休む間もなくピストンする。
「ふっ、あっあっあっ…はぁーっ、麗羅ちゃ…。アヤと、何かあったの?」
 気を失ってゆさゆさ揺れるアヤを抱いたまま、あたしは優くんを見つめて微笑む。優くんにはなにも話していない。優くんは首を傾げて聞く。
「より…戻したの?」
 ちょっと違うけど、あたしは頷く。
「また、三人一緒にセックスできるね。いっぱいしようね」
「あっあっあっ、ゆっ…ゆぅうっ…くっ…」
 ずしんと一発、今日一番のでっかい波があたしの脊髄を走って全身が感電する。またいつ崩壊するとも知れないあたしたちの関係は、あたしの心の奥底に不確かな不安として再び雪のように降り積もっていくけれど、優くんのセックスはそれをいとも簡単に吹き飛ばしてくれる。その一連のサイクルが、あたしをよりいっそうセックスに溺れさせる。ずっとこうしていたい、毎日こうしていたい、死ぬまでセックスしていたい。アヤと抱き合って、優くんに突かれて、心臓が止るまで絶頂を繰り返したい。他に何もいらない。谷底に堕ちるために勇気はいらない。空を飛ぶために翼はいらない。
 燻ったあたしのつまらない魂にもう一度火をつければ、きっと真っ白に昇華する。
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