R18恋愛官能小説 青山倉庫

トッカータ

第10話「大人」


 優くんは待ち合わせの時間ぴったりに来た。
 二人きりで会うのは初めてだったし、先週目撃したことが頭をよぎって、アタシは優くんの顔をまともに見ることができない。優くんは普段通り、アタシにやさしい声で話しかけてくれるけど、アタシはうんとかうーんとか曖昧な返事をするばかりで、優くんに余計な心配をかけてしまう。
「元気ないね…、どうしたの?」
「なんでもない」
「志保ちゃんって、何か習い事してないの?」
「昔、お習字は習ってたけど…」
 等間隔に街路樹が並ぶバレエの会場までの道すがら、アタシはお母さんに頼まれた懸賞の葉書をポストに投函する。朝早くてまだ閉まっている郵便局のガラスに映るアタシと優くんは、おもった以上に身長差があって、お母さんに買って貰ったエンジェルブルーのワンピースも子供っぽくみえる。
 会場に着くと、入り口でチケットを二枚渡す。半券を優くんに渡す。会場の周囲でスポンサーの飲み物が配られていて、アタシは二本貰う。優くんは花束を買う。半券に書かれた席に座る。発表会が始まると、扇状のステージに、チュチュを着たアタシと同じかアタシより年下の子たちが現れて、短く編曲された曲に合わせて踊る。テレビでしかみたことがないけど、トウシューズで爪先立って歩くのはとても大変そう。
「優くん、暑くない?」
「ううん、平気だよ。志保ちゃん、暑いの?」
「少し暑い」
 そう言って、アタシはワンピースの裾をぱたぱたはためかせる。胸元もぱたぱた。アタシは下着を着けていない。ワンピースと、ショーツと、サンダルだけ。麗羅お姉ちゃんと違って、アタシの胸は未熟だけど、優くんはアタシの胸元を覗き込む。男の子ってわかりやすい。
 アタシは自分の素足を優くんに絡めるように座って、途中からお兄ちゃんに甘える妹みたいに二の腕を抱いたりしていたから、優くんは特に退屈した様子もなくて、発表会が終わるとアタシと優くんは手をつないでステージ際まで近づいて、亮子ちゃんに花束を渡す。
「志保ちゃん、来てくれたんだ」
「えへへ、亮子ちゃん可愛かったよ」
「お兄さん?」
「うん、お兄ちゃん」
「お兄さんいたんだー」
 アタシと亮子ちゃんはしばらく話し込んで、優くんはアタシのお兄さんということになってしまって、アタシたちの間に挟まれてもじもじする。亮子ちゃんのお母さんに写真を撮られる。会場を出る。二人でモスバーガーに入る。発表会に来た人たちで混雑していて、アタシたちは持ち帰りにする。お店を出る。駅が近くて、お店はたくさんあるけど、座って食べられそうなところはない。
「志保ちゃんどうする? このまま帰る?」
「うーん、どうしよっかなぁ」
「送っていくよ」
「うーん、まっすぐ帰りたくないなぁ」
「じゃあ、ウチに来る? 今日は彩奈いるよ」
「うーん…」
 アタシはモスバーガーの袋を後ろ手に持ってその場でくるくる回りながら曖昧に唸る。優くんはアタシの腕を取る。優くんがみつめる。先週のことをおもいだして、アタシはからだを硬直させる。ウチにおいでよ、麗羅ちゃんも呼ぼう、と優くんが誘う。アタシは優くんの襟を掴む。引き寄せる。耳元で囁く。
「あたし、二人きりがいい」

 アタシと優くんは小学校の体育館に忍び込む。
 優くんは壇上に向かって左脇に掲げられた校歌の額を眺めている。もう覚えてないやと呟く。脱いだサンダルを持って、手をつないで地下に降りる。鍵の閉まったマット部屋のドアは観音開きで、立て付けが悪いから、両方同時に引っ張ると施錠されてても開いてしまう。アタシたちはそうやってマット部屋に入って、中からドアを閉める。新品の体育マットが積み上げられているから、アタシたちはマット部屋と呼んでいる。その部屋にはテントを張る道具と、ブルーシートと、三角コーンがたくさん置いてある。アタシはマットの上に座って、窓から外を覗き込む。運動場側からみるとこの部屋は地下だけど、裏側の田んぼが窓からみえる。優くんはアタシの隣に座る。
「相変わらず、ここ、暑いね」
「優くん、ちょっと厚着だよ」
「うん、会場もっと寒いとおもった」
「脱いじゃえば?」
 優くんはニットのパーカーを脱ぐ。靴下を脱ぐ。アタシは立ち上がって、窓のブラインドを下ろす。田んぼの照り返しの光が入らなくなって、マット部屋は薄暗くなる。
「あたしも暑い…」
「志保ちゃんも脱いじゃう?」
「えー?」
 優くんは笑いながらアタシの腕を引っ張る。アタシは優くんの膝を跨いで座る。優くんがベルトを外す。アタシの太股に手を滑らせる。ワンピースの中に滑り込む。アタシがバンザイすると、優くんはワンピースを脱がせる。脱いでしまうと肌寒くて、ショーツ一枚で恥ずかしい。優くんはアタシの頭を撫でる。アタシは優くんのシャツを引っ張る。
「優くんだけずるい」
「ぼくも脱ぐ?」
「うん、脱いで」
 アタシは立ち上がって優くんのシャツを脱がせる。ベルトを外す。ハーフパンツを下ろす。青いボクサーパンツだけになった優くんの膝に再び座る。優くんはアタシの腰に腕を回して引き寄せる。アタシの薄い胸に頬を押しつける。アタシも優くんの頭を抱く。
「志保ちゃん、熱いね」
「平熱高いの」
「子供体温だ」
「子供だもん」
「そうだね」
「早く大人になりたい」
「どうして?」
「麗羅お姉ちゃんも、アヤちゃんも、大人だから。羨ましいの」
「麗羅も彩奈も子供だよ」
「大人だもん。優くんもオトナ」
「どうして?」
「麗羅お姉ちゃんって、優くんとつきあってるの?」
「どうして?」
「アヤちゃんとは?」
「彩奈は、妹だよ」
「みんなオトナだ」
 優くんはアタシを見上げる。不安そうな上目遣い。聞く。
「麗羅か彩奈に、何か聞いたの?」
「ううん、何も」
「どうして、大人だとおもうの?」
「大人がすること、してるでしょ」
「どうして、知ってるの?」
「アタシ、先週…、部屋にいたよ」
「誰の部屋?」
「麗羅お姉ちゃんの部屋。アタシ、お姉ちゃんを脅かそうとおもって、クローゼットに隠れてたの」
 優くんとしっかり抱き合って、アタシは薄いクロッチ越しに、優くんが膨らんで、熱く硬くなっていくのを感じる。優くんの肌はすべすべできもちいい。アタシはゆっくり腰を前後させて、優くんの熱を感じる。
「お姉ちゃんもアヤちゃんも、きもちよさそうな声を出してた」
「うん…、ぼくたち、運動してたんだよ」
「ハダカで?」
 アタシが笑うと、小さなボクサーパンツに入りきれなくなった優くんのアソコが飛び出す。あの部屋で嗅いだ体液の匂い。アタシは腰をすりつけるように動かして、優くんのボクサーパンツをずりおろす。優くんはアタシのお尻を両手で包む。優くんの腰もゆっくりと上下する。
「ねぇ、優くんのって長いよね。はみ出してるよ」
「志保ちゃんが、うごくから」
「お姉ちゃんたちに、入ってたよ」
「みてたの?」
「みえたの」
 優くんは、そっか、と呟く。
「アタシも大人になれる?」
「志保ちゃんは、まだ早いかも…」
「そう…」
「大人になりたいの?」
「うん」
「じゃあ、キスだけ、してみる?」
 アタシが照れて頷くと、優くんはアタシの首に腕を回してそっと引き寄せる。目を閉じる。優くんの濡れた唇がアタシの唇を覆う。アタシを食べるように艶めかしく蠢いて、アタシも一生懸命優くんの唇を貪って、優くんの舌が滑り込んできて、アタシは頭の芯が痺れるような感覚に陥って、その間も優くんはアタシの胸や背中やお尻をやさしく撫でてくれる。よくわからないけど、波に揺られているみたいで、すごくきもちいい。
「志保ちゃん、どんな感じ?」
「優くぅん…もっと」
 アタシは自分から優くんの唇を奪う。唇で優くんの唇を挟む。優くんはアタシのショーツに手を差し込んで、お尻を撫でる。ショーツが中途半端に脱げる。アタシは腰を浮かす。ゆっくりショーツを脱ぐ。優くんもボクサーパンツを脱ぐ。アタシたちはとうとう全裸になって、新品の体育マットの上で抱き合う。キスをする。たくさんキスをする。ぎこちないアタシを優くんがフォローしてくれる。アタシのアソコに優くんのアソコが密着して、アタシはさっきより露骨に腰を動かして、そうやって動かすたびにくちゅくちゅ濡れた音がして、恥ずかしくて、でもきもちよくて、とまらない。
「はぁ、はぁ、志保ちゃん…びしょびしょだよ」
「やぁん、言っちゃダメ、あん」
「キスだけだよ、志保ちゃん」
「うん、キスだけ」
 優くんが麗羅お姉ちゃんたちと同じようにしてくれることを曖昧に期待していたけど、こうやってハダカで抱かれてキスしているだけでもすごくきもちいいし、それに、優くんのアソコに乗っかっていると、こんなに太くて長いものがアタシの中に入るなんてとても想像できない。
 優くんはゆっくりマットの上に仰向けになる。アタシは優くんの体に覆い被さる。唇は重ねたまま、アソコも重ねたまま、お互いの胸が密着して、優くんがアタシよりドキドキしていることに気づく。
「優くん、鼓動がすごい…」
「どくんどくんしてる?」
「うん、伝わってくるよ」
「これからどうする? 志保ちゃん、遅くなるといけないでしょ」
「まだお昼だよ。今日、夕方までここにいたい。優くんと一緒にいたい」
「退屈しない?」
「優くん、きもちいいコトしてくれるから、平気」
「キスだけだよ」
「うん、今日はキスだけ」
 アタシたちは再びキスをする。優くんは瞼や、おでこや、頬や、首筋にもキスをしてくれる。からだじゅうにキスを降らせてくれる。くすぐったいところを舐めてくれる。おかしくて身を捩るけど、アタシはだんだん感じてきちゃって、自然と甘い声が漏れる。アタシも優くんのからだを同じように愛撫する。アタシの濡れた粘膜で優くんのアソコを挟んで、腰を動かすとエッチな音が狭い部屋に響く。優くんはアタシのポイントを簡単に探り当てるけど、アタシにとっては何もかもが初めての経験だから、ぎこちなくて、手探りで、だけどきもちよくて、そうやって愛し合っている幸せな時間は瞬く間に過ぎる。
 暗くなってから体育館を後にして、アタシたちは手をつないで駅まで歩く。駅で別れる時にも柱の陰でキスを交わす。改札を挟んで手を振り合うとき、今朝とは少し景色が違ってみえる。
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