R18恋愛官能小説 青山倉庫

絶頂ラジアン

第3話「睡魔」

 ゆきえの部屋。
 奈々とゆきえは並んでテーブルに座り、あたしはゆきえのベッドでうつぶせになってウトウトする。昨夜は智之お兄ちゃんと一晩中愛し合ってて、とても眠たい。目をとじると、お兄ちゃんのきもちよさそうな顔が浮かぶ。あたしに覆い被さって、汗で濡れた肩が上下に揺れて、あたしたちの結合から卑猥な音が響いた夜。
「こんど、奈々ちゃん家に遊びにいってもいい?」
 ゆきえが訊く。奈々は雑誌を開いたまま、いいよと言う。
「でも、うちのお隣がくっさいの。なんか腐ってるみたいでさ」
「えーなにそれ?」
「死体が腐ってるんだって。オカルト研究会のひとたちが言ってた」
 階段をのぼる足音。ドアをノック。ゆきえのお母さんが入ってくる。あたしは起き上がって、ベッドの縁にこしかける。髪の毛がくしゃくしゃ。ゆきえのお母さんは、アイスと紅茶のカップをテーブルにのせる。さっき、ゆきえのお母さんからあたしだけ昆布茶を貰った。それを飲んでから、余計に眠い。
「ねぇ恵未ちゃん、水曜日に、おばさんたちの貴婦会に参加してみない?」
「キフカイ?」
「ゆきえと二人で、老人ホームにボランティアでお手伝いにいくの。おじいちゃん、おばあちゃんたちのために、おにぎりをつくったり、お絵かきをしたり、おしゃべりをしたり。参加すれば、ジュースとお菓子と、あと苺がたくさん食べられるよ」
「苺ですか……」
「夏休みだけじゃなくてね、貴婦会の集まりに参加すると、その日は学校に出席しなくてもいいことになってるのよ。だから、学校が始まってからも参加できるよ。そうそう、智之くんも誘ってあるから、一緒においで」
「はい、いきます」
「奈々ちゃんも来る?」
 奈々は首をかしげて、答える。
「恵未ちゃんがいくなら……」
「心配しないでね、おじいちゃんたちは、あなたたちくらいの子が遊びに来てくれるだけで、元気がでるのだから」
 おばさんはお盆を持って、部屋を出る。階段を下りる。あたしは再びうつぶせになって、ゆきえに訊く。
「キフカイってなに?」
「女の人だけのボランティアの集まりだって。いま、お母さんが会長代行やってるみたい」
「ダイコー?」
「うん、もともとは、片山会長がつくった集まりなんだって」
 片山会長。すこし前、製材所の所長さんに殺されたおじいさん。いつもイヤラシイ話し方をするひとで、死んだときいてもなんともおもわなかった。お葬式には行ったけれど、名前を聞くまで忘れていた。
 奈々がゆきえに囁く。
「ゆきえちゃん、しってる? トモくん、恵未ちゃんとセックスしてるんだって」
「うん、しってるよ。奈々もした?」
 奈々は頬を赤くして、首を横に振る。ゆきえが更に訊く。
「奈々は、トモくんとしたいの?」
「トモくんは、恵未ちゃんの従兄弟で、恋人だよ」
「それは、恵未に遠慮して、ほんとうはしたいのに、我慢してるってコト?」
「違うよ……。なんでそういうこと言うの? ゆきえちゃん、ヘンだよ」
 ゆきえは奈々の頭をなでなでして「奈々は良い子だね」と言って抱きしめる。奈々の白いワンピースは、あたしと同じ柔軟剤の香りがする。しあわせそうな奈々の表情をみていると、あたしはめちゃくちゃ眠くなる。このままじゃ眠ってしまう。あたしは起き上がる。
「だめ、あたし眠い」
「恵未ちゃん、大丈夫? 昨日は激しかったの?」
 ゆきえが言う。あたしは照れ笑いを浮かべて、ベッドを降りる。
「今日は帰るね。帰ってちょっと寝たい」

 ゆきえの家をあとにして、自転車で家路を急ぐ。
 鈍色が空から低く垂れさがり、ごろごろと雷さんがとどろく。坂道を下り、中央公園のまえを通り過ぎると、途端に大粒の雨が降り注ぐ。強い風が吹く。あっという間にびしょ濡れになる。鞄を傘にした会社員が走る。犬の散歩をしていたおばさんも、傘を持っていなくて、ばしゃばしゃと雨水の流れる歩道を走る。バス停を通り過ぎると、上り坂が川のようになっていて、自転車では上れない。街路樹が豪雨と暴風におおきくたわむ。
 あたしは自転車を降りて、坂道の途中のガレージに入る。雨は降り込まないけれど、雨水はどんどん流れ込んでくる。シャツの前をめくって搾る。目の前に、自転車に乗った男の子が現れる。ガレージに入ってくる。あたしは「ごめんなさい」と頭を下げて、ガレージを出ようとするけど、男の子に呼び止められる。
「恵未ちゃん?」
「はい」
「俺、磯谷だよ。覚えてない?」
「ああ、お兄ちゃんのお友達の……、達也くん?」
「どうしたの? こんな大雨なのに」
「急に降り出して、雨宿りしてたの」
「ああそう。中入る? いま、ウチ両親いないからさ」
 あたしは頷いて、達也の後についていく。達也が大きな傘をさしてくれるけど、あたしはもうびしょびしょ。達也が玄関の鍵をあける。玄関でタオルを渡される。顔と髪の毛を拭く。靴と靴下を脱いで、足を拭く。おじゃまします。達也があたしの腕をひく。階段をのぼる。達也の部屋に入る。あたしは、なんだか、ぼんやりしている。眠い。ねむい。
「これ、ホテルの浴衣。着替えて。服を乾かそう」
 あたしは頷いて、その場で服を脱ぐ。目の前に達也がいることを気にしない。達也の部屋は、今の智之お兄ちゃんの部屋に似ているから、不安にならない。裸になる。浴衣を羽織る。そのまま目の前のベッドに倒れ込む。達也の声が聞こえる。磯谷達也はお兄ちゃんの親友だから、大丈夫。バスケ部で、背が高くて、きっと女の子たちにモテるのだろうけど、マッチョ系はあたしのタイプじゃない。達也があたしを抱きあげて、ベッドの真ん中に寝かせてくれる。なにか話しかけてくる。
 ごめん、ねかせて。昨日、お兄ちゃんがスゴかったの。お兄ちゃんは日に日にセックスが上手になる。強くなる。なんかいもする。あたしはイク寸前のまま、何時間もお兄ちゃんに突かれて、声をあげて、お兄ちゃんが射精して、キスをして、抱きしめ合って、体位を変えて、またなんどもお兄ちゃんに突かれて、声をあげて、中に出されて、キスをして、それでもイかなくて、あたしもお兄ちゃんもくたびれてしまう。
 達也があたしの肩に触れる。達也の指先があたしの肩に触れているというたったそれだけのどうでもいいこと。おなじようにお兄ちゃんがあたしの肩に触れるのとは違う。お兄ちゃんが触れるだけで、あたしのからだは瞬く間に弛緩して、お兄ちゃんのオトコを受け入れる準備をして、つるりと包んで、なんども突かれて、声をあげて、中に出されてキスをして、へとへとくたくたになるまでなんども繰り返して、あたしはいつしか眠りに落ちる。
<< 前のページ 戻る