R18恋愛官能小説 青山倉庫

快楽コサイン

第17話「お母さんの過去」


 あたしたちのベッドは軋まないけれど、代わりにセックスの音はよく響く。
 ちゃっぷ、ちゃっぷ、ちゃっぷ、ちゅる、ちゅる、ちゅる。
 どうしてセックスのとき、こんな破廉恥な音がするのだろう。お昼に目覚めてから、あたしはずっと智之お兄ちゃんに衝かれて、中にたっぷり放たれて、それでもお兄ちゃんは休憩もしてくれなくて、指を噛んで堪えていたのに、もう声が漏れそう。
「ふっふっうっ、おっ、にいちゃ…、だめ、だめ、おかーさん、きこえちゃう、起きちゃう」
「いいよ、ぼく、きこえても」
「だめだよ、一緒に、寝られなくなっちゃう」
「愛してるよ、恵未…、だいすき」
 そう言って、お兄ちゃんはあたしが呼吸できなくなるくらいぎゅっと抱きしめて、壊れそうなくらい激しく衝く。頭がじんじんと痺れて、もうどうなってもいい。お兄ちゃんとつながってるだけで、もうそれだけでいい。飽きるまでいっぱい衝いて、いっぱい抱きしめて、中にいっぱい射精して欲しい。ナマ、でできるのはいまのうち。ナマ、でするのが一番きもちいいって、ゆきえに教わった。あたしたちがおんなになると、ナマ、ではできなくなる。
「ああっ、イクっ、恵未、イクぅ…」
 びゅくっ、びゅくっ、びゅくっ、びゅくっ、びゅくっ。
 お兄ちゃんがまた激しく発射する。あたしの奥に直撃して、あたしもたまらなくて、お兄ちゃんの腰に両脚をまきつけて、ぐっと締めつける。あたしの潤んだ胎内で長いこと痙攣を続けて、ようやく収まったかとおもえば、お兄ちゃんは再びあたしを衝きはじめる。ぷじゅっ、ぷじゅっ、と音をたてて体液が溢れだして、シーツに水たまりをつくる。
「お兄ちゃん、ばかり、きもちよく、なって、ずるい」
「恵未は、ぼくと二人きりだと、イかないね」
「イキそうなのに、イかないの。イキたいのに、イけない。気がくるいそう」
「リズムが、よくないのかな?」
「わからない、イキそうな瞬間、お兄ちゃんが、先にイクの。あたしは、あと一歩のところで、逃げちゃう」
「おとこと、おんなは、快楽曲線が違うから、何回もしないと、混じり合わないんだって」
「なにそれ、なに情報?」
「ゆきえちゃん情報」
「やっぱり、あはは…、あっ、あん、あっあっあっふっ」
 あたしはまた声が漏れてしまって、指を噛んで我慢する。お母さんが家にいるとき、お兄ちゃんは外でするか、家でするときはもっとゆっくりしてくれる。今日はなんだか様子がおかしい。めちゃくちゃもとめられて、あたしは骨までとろけそう。
「お兄ちゃん、あたしのこと、すき?」
「すきだよ、だいすきだよ、あいしてる」
「ゆきえのことは?」
「ゆきえちゃんもすきだよ、でもゆきえちゃんのことは、愛していないよ」
「すきなのと、あいしてるのは、違うの?」
「違うよ」
「どう違うの?」
「あいしてることは、きっと、見返りをもとめないことだよ」
「ゆきえには、なにかをもとめるの?」
「ご奉仕をもとめるよ」
「あたしにはもとめないの?」
「もとめるよ」
「もとめないんじゃないの?」
「もとめるよ、でも、返ってこなくても、愛し続けるよ」
 もとめる、という言葉を繰り返して、やがて『もとめる』という言葉がばらばらに砕けて意味も形も味も匂いも色も音も失って、かみ砕くことも理解することもできない、『も・と・め・る』というひらがなの連続、あたしにとって新しい言葉にすり替わって、それ以上かんがえることができない。
「じゃあ、夏美ちゃんは?」
 お兄ちゃんの動きが止まる。あたしをみつめる。
「どうして、夏美のことをしってるの?」
「つきあってたんでしょ? 赤西さんにきいたよ」
「つぐみは嘘つきだよ。つきあってなんかいない」
「じゃあどうして、百瀬さんたちを探す手伝いなんかしてるの?」
「ぼくには大切なことなんだ」
「夏美ちゃんのこと、すきだったの?」
「わからない。すきかどうか考える暇もなく、いなくなっちゃったから……」
 お兄ちゃんはあたしを抱き起こす。ベッドの上に胡座をかいて、座ったまま抱き合う。お兄ちゃんが衝きあげる。すごい快感がからだの中心を突き抜けて、脳に響いて、濡れた音が部屋に響く。このカタチが一番きもちいい。
「ぼく、頭がおかしくなりそうなくらい、恵未のことがすきなんだ。他の子のことなんて、どうでもいい」
「あたしも智之お兄ちゃんのことがすき……」
 あたしはお兄ちゃんを抱きしめて、唇を重ねたまま、自分で腰を動かして、全身でお兄ちゃんを愛撫する。

 夕方。
 橙の光が差し込む居間のソファにお兄ちゃんが腰掛けて、お母さんと向かい合ってなにか喋っている。お兄ちゃんはまだシャワーを浴びていない。六時間もつながって、あたしたちのベッドはびしょ濡れ。狭い部屋にセックスの匂いが充満する。あたしは濡れたシーツを丸めて洗濯機に放り込み、他の洗濯物と混ぜる。スイッチを入れる。廊下から居間をのぞき込む。向かい合っていたお母さんがお兄ちゃんの隣に座る。あたしはからだの角度が変わって、また中から精液が溢れてくる。履き替えたショーツを脱いで、洗濯機に放り込む。
「恵未」
 振り返ると、お母さんが脱衣所の前に立っている。いつものような厚化粧じゃなくて、服装も地味。
「どこいくの?」
「お母さん、栄生に行ってくるから、明日は帰りが遅いよ」
「栄生って劇場の? なにしにいくの?」
「友達にあうのよ」
「お母さん、もう舞台には立たないで」
「大丈夫よ、心配しなくて。晩ご飯はトモくんに作ってもらって、材料はあるから。でかけるときは、トモくんと一緒にしてね」
「うん……」
 あたしはおとなしく頷く。お母さんが出かけていく。
 お母さんはパートで広告の仕事をしながら、お芝居をやっていた。無名のちいさな劇団だったけれど、あたしの眼からみても、舞台のうえのお母さんは綺麗で、輝いていた。その代わり、貧乏だった。家に余分なお金がないことぐらい子供ながらにわかっていたけれど、ゆきえの家のクリスマスパーティに呼ばれて、他にもクラスの子が何人かいて、余所行きのドレスを着た子たちの間で、あたしだけ普段と変わらない格好で、プレゼントも満足に用意できなくて、広いリビングの隅っこでちいさくなって、みんなにあわせて淋しく笑っているとき、貧乏、ということがこたえた。
 お母さんは恋の多いひと。いろんな男のひとを好きになって、あたしが部屋にいるのに男のひとを連れ込んで、一晩中愛し合っていた。そしてお母さんは向こう見ずで、ボロボロになるまで男のひとを愛して、ひどく軽々しく捨てられて、ときどき一晩中泣き明かしていた。失恋のたびに、お母さんは恋をしないとまだちいさかったあたしに誓うのだけれど、半月と経たずに新しいだれかと愛し合っていた。
 そんな中、お母さんは同じ劇団の俳優さんとつきあうようになった。すごく長続きしていて、毎日楽しそうにしていて、お母さん再婚するかも、と言っていた。あたしのきもちを考えてくれないお母さんが腹立たしかったけれど、あたしはお母さんが仕合わせになってくれればいいとおもっていた。だけど、その俳優さんはお母さんのお金を持ち逃げして、お母さんはたくさんの借金を抱えてしまった。持ち逃げしたお金の中に、お母さんが劇団から借りたお金も含まれていて、お母さんは劇団から追い出された。
 地元の小さなバーかなにかで働くようになって、以前よりも収入が増えたし、お母さんは恋に溺れることもなくなって、あたしはまえよりも仕合わせになったけれど、お母さんはずっと塞ぎ込んでいた。お母さんはお芝居のことが忘れられないのかもしれない。
「恵未、シャワー浴びよう」
 あたしがうつむいていると、智之お兄ちゃんが脱衣所にはいってくる。あたしたちはパジャマを脱ぐ。裸になる。シャワーを出す。温度を調整する。あたしたちは、シャワーの前で抱き合う。硬く反り返ったままのお兄ちゃんを、両手でちゅるちゅるマッサージする。キスをする。お兄ちゃんの下唇を噛む。お兄ちゃんが嗤う。
「恵未、ぼくの唇がすきなの?」
「うん、すき。果物みたいにつやつやしてる」
「恵未もだよ」
「あたしも?」
「恵未とぼくは唇が似てるの。だって、従姉妹どうしだから」
「あっ、そっか」
「忘れてたの?」
 お兄ちゃんはあたしを壁におしつける。片脚の膝を抱えて、あたしの胎内につるりと挿入する。もう片方の膝を抱える。あたしは壁に押しつけられて、両脚を拡げて宙に浮く。お兄ちゃんに衝きあげられる。ぶるちゃ、ぶるちゃ、と悲惨な音が響く。
「セックスしてるとき、お兄ちゃんは、どこがきもちいいの?」
「あちこち、きもち、いい…よ」
「いまは?」
「どこだとおもう?」
「ちんぽ?」
「そうだよ……」
「ちんぽ全体?」
「全体、も、きもちいいけど、はぁはぁ、先っぽが、恵未の子宮に、こりこりあたるのが、すごい……」
「あたしも、お兄ちゃんの、先っぽが、奥にあたるのが、きもちいいよ」
「おんなじとこ、きもち、いいんだね」
「そうだね、セックスって、不思議だね……」
 お兄ちゃんはあたしを抱えたまま、ゆっくり座る。つながったままお互いのからだを洗う。洗いながら衝かれる。流す。つながったまま、お風呂場から出る。つながったままバスタオルを巻いて、軽く拭く。つながったまま脱衣所を出る。玄関の姿見の前で立ち止まる。姿見の前でお兄ちゃんはあたしを衝きあげる。いやらしい音が響く。あたしは浮かんだまま上下に揺れる。あたしを衝きながら、お兄ちゃんはあたしを寝室に連れて行く。あたしは片足でドアを閉める。足指で器用に鍵をかける。そっとベッドに腰掛けて、お兄ちゃんはあたしを衝きながら仰向けに寝転ぶ。キスをする。たまらない。こんな仕合わせがまいにち続けばいい。あたしもお兄ちゃんも、ほんのわずかでも離れたくない。ずっとつながっていたい。お兄ちゃんはあたしの乳首を吸って、強く吸って、あたしを衝きあげて、あたしはお兄ちゃんのちんぽをぎゅうっと締めあげて、潤んだセックスの音がひとばんじゅうお部屋に響いて、お兄ちゃんはなんどもなんどもあたしの胎内で果てる。
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