R18恋愛官能小説 青山倉庫

快楽コサイン

第8話「快楽コサイン」

 だれかがぼくの襟首を掴む。
 うしろへ、うしろへぐいぐいと引っ張られる。もう、うえもしたもわからない。顔に大粒の雨がぼつぼつあたって、かろうじてまだ生きているようだけど、なんだか四肢が痺れてすこし眠い。寒い。眠い。
「トモくん、しっかりして」
 夏美の声がする。どこから夏美の声がしたかわからない。どんどん引っ張られて、背中に岩があたる。手でまさぐると、川底に指先が触れる。上半身を起こして、自分の脚で立つ。振り返ると、ずぶ濡れの夏美がぼくの腕を曳く。川からあがる。周りはまだ豪雨。飛び込んだときより、川幅が三倍くらい広い。かなり下流まで流されてきた。這いつくばったままでいると、夏美がぼくを抱き起こす。
「トモくん、大丈夫? たてる?」
 ぼくはふらふらと立ち上がるけど、平衡感覚を失って、ちゃんと歩けない。鼻の奥がつーんと熱い。雨がますます激しくなって、飛沫がしろい霞になって地面を覆う。夏美が肩を貸してくれて、ぼくはふらふらと歩く。夏美が歩く方に歩く。灰色の雨の帳に、灰色の建物の陰が浮かぶ。キノコ園に戻ってきたのかとおもったけれど、それが公民館だとおもいだす。そういえば公民館は川沿いに建っていた。ぼくらは石段を登って、裏口にたどり着く。ドアは閉まっているけど、ドア脇の窓が開いていて、夏美はそこから腕を差し込んで鍵を開ける。なかにはいる。
 広い会議室は、円形に並んだ長テーブルを、たくさんの椅子が取り囲む。壁際にソファがあるけど、濡れたまま座れない。ぼくは椅子のひとつに腰掛ける。夏美が鞄から携帯をとりだす。ひらく。光らない。ため息をもらす。
「あーあ、携帯死んじゃった」
「大丈夫? ごめんね……」
「トモくん、携帯もってる?」
「きょう、家に忘れてきたんだ」
 夏美はぼくをみつめる。自分の服をみおろす。びしょびしょだね、と呟く。
「夏美ちゃん、ありがとう。ぼく、溺れるところだった」
「うん、びっくりした。あたしつぐみン家に行った帰りだけど、雨降ってきてさぁ、走って帰ってたらトモくんが流れてきて、ええーってなって、もしかして体を張ったギャグかとおもっちゃって、しばらくみてたらほんとに死にそうになってるから、後先考えないで飛び込んじゃった。てか、流れが速くてあたしもすっごい流されてさ、結構ヤバかった」
「ごめんね、びしょ濡れになっちゃったし、携帯まで……」
「ううん、この雨じゃどうせ壊れてたよ」
 夏美はぼくに椅子を向かい合わせて座る。パイプ椅子は硬くて冷たい。夏美の太股が触れる。滴がしたたる音と、雨がまどをざあざあと叩く音。
「服、乾かそうか」とぼくは言う。
 夏美はちいさく頷く。ぼくはシャツを脱ぐ。裏口の土間で搾る。じゃばじゃばとたくさんの水が滴る。椅子の背もたれにかける。夏美も濡れたTシャツを脱ぐ。水色のブラをつけている。軽く搾って、同じように背もたれにかける。水に濡れるとスキニーパンツは脱ぎにくい。ぼくは靴下を脱いでから、パンツを裏返しにして脱ぐ。ぴったり張り付いたボクサーパンツまで脱げそうになる。夏美も短いデニムスカートを脱ぐ。ぼくは壁のエアコンをつける。ドライにする。涼しい風が吹き込む。
「座る?」とぼくが訊く。
「いいよ、トモくん座って」
 ぼくはパイプ椅子に座る。夏美は立ったまま、二の腕を抱く。ブラとおそろいの水色のショーツは股上が浅くて、クロッチが薄くて、濡れてぴったりと食い込んで、女の子のスリットがくっきりと浮かぶ。ふとみあげると、夏美の頼りない表情がすぐ目の前にあって、ぼくと目が合うと唇を噛む。
「どうしたの、座らないの?」
「濡れてるから、椅子が冷たくて……」
 そうつぶやいて、ぼくの脇に近づく。太股が、ぼくの二の腕に触れる。ドキドキする。女の子って、周りでパタパタ走り回っているだけの小さくて弱くてささやかな生き物でしかなかったのに、ある朝目覚めると、そのかわいらしくてちいさな蕾が開きかけて、その萌芽と芳香はぼくの理性とか知性とか諸々の日常をいとも容易く粉々に砕いてしまう。
「ぼくのうえに座りなよ」
 デジャヴ。そういえば、恵未にも同じことを言った。そういって、こんなふうに腕をひいた。夏美はすこしためらうけど、ぼくにお尻を向けて座る。夏美はぼくの太股を跨いで、ぼくは夏美を背中から抱く。からだじゅうの血液が下腹部に集まって、みるみる硬くなっていく。パンツから飛び出す。夏美の背中にあたる。
「夏美ちゃん、ブラも濡れてるよ。冷たいでしょ」
「うん……」
「脱ぐ?」
「うん…、外して」
 ぼくは背中のホックを外す。夏美はブラを脱いで、目の前の椅子に投げる。手首に巻いたゴムで、濡れた髪を束ねる。ぼくは夏美のお腹に手をまわしたまま、背中に密着する。夏美の動きがとまる。
「いっそ、下も脱いじゃおうか」
「えー…?」
「暗いからわからないよ、ほら」
「だめだよ、トモくん」
 夏美は口先でだめだめ、とつぶやくけれど、ぼくがその小さなショーツを脱がすのになんの抵抗もしない。ぼくはショーツを足指で挟んで、スルリと脱がす。そのまま向かいの椅子にのせる。
「ヤダ、脱がせるの、巧いね」
「初めてだよ、こういうの」
「トモくんも、脱ぎなよ。あたしだけなんて、ズルイ」
 そう言って、夏美はぴょこんと立ち上がる。振り返る。夏美は毛がまだ生えてないし、胸も薄い。ぼくだって生えてないし、肩幅も狭い。中学生といっても、ほんの三ヶ月前まではまだ小学生だったんだ。毎朝、お父さんがホームベーカリーで焼いた食パンに輪切りにしたピーマンを乗せて、ケチャップととろけるチーズをのせて焼いて食べて、誰かの世話にならないと一週間と生きていられないほんの子供に過ぎない。
 夏美はボクサーパンツから飛び出たぼくのアソコにはなにも言わずに、半ば無理矢理脱がす。パンツを椅子になげる。ふたたび座ろうとするけど、ぼくは夏美に振り返らせて、むかいあってぼくを跨がせる。お尻をつかんでひきよせる。恵未にしたのとおなじように、アソコどうしを密着させる。エアコンの風で肌は冷えていたけど、夏美の粘膜は熱くて濡れている。お尻に力を入れたり抜いたりしながら、ゆっくり上下にうごく。この間はここまでで、ここから先のことを識らなかったけれど、別に細かいことは識らなくていいとおもう。したいようにすればいい。おとことおんなって、たぶん、そういうもので、マニュアルなんてないし、ぼくたちはまだ幼いから、失敗したっていい。
「トモくん、おっきいね」
「ぼく、ちっちゃいよ。夏美ちゃんと、あんまり変わらない…」
「背じゃないよ」
「え…、あ…」
「ふとくはないけど、ながいよね」
「うん、生まれつきだから……」
「不思議なカタチだよね」
 夏美は股間を密着させたまま、じっとぼくのおちんちんをみつめる。ぼくはぼくに密着した夏美の割れ目をみつめる。夏美が囁く。
「ねぇ、トモくん」
「なあに?」
「なっちゃんって呼んで」
「なっちゃん?」
「親しいひとや、ともだちや、あと、すきなひとには、そう呼んで欲しいの」
「うん、なっちゃん」
 夏美は、ふっと目を閉じる。唇を重ねる。ぼくは薄目をあけて、夏美の長い睫を間近にみる。夏美は唇をうすくひらいて、舌をさしだす。ぼくはそれを絡め取る。くちゃくちゃ、音を立てる。腰も動かす。ちゃぷちゃぷ、濡れたおと。
「トモくぅん……」
 甘い囁き声。ぼくはさっきから心臓がバクバクいってて、おちんちんも痛いくらい硬く反り返って、どうしようもなくて、ぼくは夏美のお尻を掴んで持ち上げて、立ち上がる。密着したまま、ゆっくり歩く。一歩、一歩、もう一歩、ソファに夏美を寝かす。覆い被さって、キスをする。唇をすりあわせて、夏美の下唇をかるく噛んで、そのまま薄い顎のラインに舌を這わせる。耳の裏、耳たぶ、首筋、鎖骨、そして未熟な乳房。はじめて触れるおんなの子の乳房。恵未にはまだない膨らみ。そのなだらかな丘を頂上まで一直線に登って、乳首をくちにふくむ。
「あーっ、あん」
 初めて聴く女の子のあえぎ声。ぼくは夢中で左右の乳首を行ったり来たり。夏美の息がだんだん荒くなってきて、声も大きくなる。ぼくはゆっくり脇腹を滑る。太股にキスをする。舌と指先を這わせる。夏美のからだはどこまでいっても柔らかくて、滑らかで、触れあっているだけできもちよくて、ぼくの舌先が濡れた粘膜に到達する。指で拡げる。はじめてみる女の子のはなびら。暗くて、よくみえない。唇を密着させて、舌で刺激する。どこをどうすればいいかわからないくらい複雑なカタチだから、もう全体を舐めまわして反応があったところを責める。女の子の味は、想像していたよりもずっと苦い。
「やっ、あーっ、トモくん、恥ずかしいよ、トモ…」
「なっちゃん、きもちいい?」
「きもちいいよ」
「ぼく、なっちゃんにいれていい?」
「いいよ、いれて」
 ぼくは起きあがって、うえを向いてめちゃくちゃ硬くなった陰茎を押し下げて、夏美の割れ目におしあてる。ゆっくり体重をかける。夏美は呻いて、唇を噛んで、上に逃げる。ぼくは片手で夏美の肩を掴んで、ぐいっと腰をおしこむ。
「いっ、たい、いたいっ」
 初めての時、女の子は痛がるってきいていたけど、夏美は両脚を蹴って逃げようとする。
「ごめん、痛い? 無理そう?」
「うん、痛い…」
「やめる?」
「ちょっと待って…」
 夏美は起き上がる。ぼくの胸をおして、ソファに座らせる。夏美はぼくをつるりと飲み込んで、頭を上下に振る。ぼくは突然夏美に飲み込まれて、暖かくて柔らかくて、ちゅっこちゅっこ、すごく卑猥な音がするのにひどく興奮する。公民館の会議室にいることをおもいだして、そのシューリアルさに鳥肌がたつ。夏美がくちを離す。ぼくのおちんちんに指を絡めたまま、仰向けになる。
「そのまま来て」
 ぼくはもう一度夏美に覆い被さって、こんどは濡れたおちんちんを割れ目に滑らせて、ゆっくり腰を沈めていく。伸びきった処女がパチンと切れて、ぼくのおちんちんがにゅるりと滑り込む。なにか硬いでっぱりに先端がこつんとあたる。ぼくはそのでっぱりを更におしこむ。限界、いま、処女を失った膣が限界まで引き延ばされて、ぼくの巨根を一握り分余して包み込んでいる。夏美とつながっている、その事実だけでぼくは気がくるいそう。
「なっちゃん…」
「トっ、もっ、くっあっあっあっあっ」
 ぼくは夢中で夏美を突く。硬いでっぱりが、おちんちんの先端をこりこりと刺激して、潤んだ粘膜が陰茎全体をにゅるにゅる刺激して、信じられないくらいきもちいい。からだじゅうが柔らかいけれど、からだのなかはもっと柔らかい。腰のリズムがときどき途切れる。普段、こんな動き方はしないから、どの筋肉をどう使えばいいか、からだがわかっていない。
「なっちゃん、すごい、きもちいいよ、やわらかい、ああっ」
「トモくん、ゆっ、ゆっくり……、慌てなくて、いいよ」
「なっちゃん、すきだよ」
「ありがと…、あたしも、トモが、すきだよ」
 ぼくたちは唇を重ねる。舌を絡め合いながら、ぼくは夏美を滅多突きにする。ちゅるちゅると音を立てながら、ぼくのおちんちんが夏美のおまんこを出入りして、もうイキそうなのに、あまりにも硬く充血しすぎて、精液の通り道がとじられているようで、絶頂寸前の気がくるいそうな至福を維持したまま、何度も何度も夏美の底を突き下ろす。しばらくすると、その狂おしい快感はゆるやかに弛緩して、ぼくはようやく夏美の胎内に勢いよく放つ。
 びゅっ、びゅぶっ、びゅっく、びゅっく、びゅっく。
 ひどい痙攣を伴って、下腹部の複雑な筋肉が収縮を繰り返して、またさっきの快感が蘇って、ぼくは射精しながらピストン運動を続ける。痙攣とともに血液が集まり、また爆発寸前をキープしたまま、顎をつたう汗が夏美のゆれる胸にしたたり、やがてまた弛緩して、もういちど精液をなかにそそぐ。おちんちんの中心を体液が流れる感覚に、ぼくの快感はまた上昇をはじめる。夏美のちいさなからだが、ぼくの激しい律動にカクカクとゆれて、いまにも壊れそう。
「トモ、大丈夫? すごい汗だよ…」
「なっちゃんが、きもちいいから」
 夏美は微笑む。ぼくは訊く。
「痛くない?」
「トモが熱くて、痺れてるから平気。もっとしたいでしょ? もっと、たのしもう」
 ぼくらはキスをする。ぼくはうえを向く。壁の時計をみながら、夏美を突く。五分、十分、十五分、射精、ぼくは夏美を抱き起こして、座ったまま突きあげる。二十分、二十五分、三十分、射精、ぼくは仰向けになる。いろいろな角度で突く。三十五分、四十分、四十五分、射精、夏美の処女の血がぼくのお腹をとろりと流れる。セックスは、いろいろな種類の快楽が複雑に絡み合っていて、快楽の定量は、コサインカーブのように、一定のリズムで上昇と下降をくりかえす。

 スッカリ陽が暮れて、ようやく雨があがる。
 公民館から外に出ると、蒸した風が通りを吹き抜ける。ぼくはmp3プレーヤーが入った鞄をなくしてしまったことをおもいだす。でも、そんなのどうでもいい。ぼくは夏美を引き寄せて、もう一度キスをする。手をつなぐ。一緒に帰る。言葉数はすくなく、びしょ濡れの靴は手に持って、裸足で濡れたアスファルトをあるく。
「ねぇ、トモ」
「なあに?」
「あたしが、初めて?」
「うん、初めてだよ」
「トモ、強いね」
「そう?」
「なんかいした?」
 指折り数える。十一回目までは覚えてる。そこから先はもう、一滴もでなくなったけれど、いっぱいいっぱいした。ソファに濁ったみずたまりができるくらい。つないだ指に夏美がぎゅっと力をいれる。
「きっと、あたし、今日のことは、死ぬまで忘れない」
「ぼくだって、忘れられないよ」
「夏美のこと、忘れない?」
 ぼくは立ち止まる。なんだか、急に不安になる。
「どうしたの?」と夏美。
「なっちゃん、ぼく、なっちゃんのこと、すきだよ」
「うん、しってるよ。さっき、きいたもん」
「ずっと、一緒にいたいよ」
「あたしもだよ」
 夏美は微笑んでいるけれど、悲しそうにみえる。暗いせいかもしれない。また歩き出す。違うことを喋る。慣れてきた学校のこと、むかしのこと、崇のこと、達也のこと。夏美は相槌をうつけど、上の空。
「ねえ、トモくんどうして川に落っこちたの?」
 その問いにおそろしい記憶が蘇って、その言葉が鉈を持った会長を連れてくるような焦燥を覚えて、背後を振り返る。誰もいない。蛍ヶ浦は人口のすくない町。街灯と街灯のあいだは五百メートルくらい離れていて、闇は広くて深い。
「鞄を落としちゃって、取りに行こうとして、流されたんだ」
「あぶないなあ……、気をつけてよ。きみはちっちゃいから、つよい風でも飛ばされそう」
「なっちゃんだって、ちっちゃいよ」
 ぼくたちは笑う。やがて分かれ道。羽虫が集まる街灯のしたで、ぼくはもう一度、夏美にキスをする。抱きしめる。夏美はぼくをきつく抱く。随分長いこと、そんなふうにしている。離れる。じゃあね、と言って、夏美は手をふる。ぼくも手を振る。夏美の後ろ姿を眺める。闇に溶けてみえなくなる。ぼくは裸足のまま、家路につく。
 マンション付近の交差点、自販機の灯りがみえる。点滅信号が、赤と黄の光を交互に明滅させて、自販機の前にしゃがみ込んでいた影が立ち上がる。駈けてくる。ぼくに抱きつく。
「恵未、どうしたの?」
「お兄ちゃん、ゆきえちゃんが、ゆきえが……」
「ゆきえちゃんが、どうしたの?」
「さらわれちゃったの」
「さらわれたの? どこで?」
 恵未は真っ赤な目でぼくをみあげる。公園で、しらない人の車に乗せられたの、と言う。
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