R18恋愛官能小説 青山倉庫

快楽コサイン

第7話「もしかすると片想い」


 エミ 10/06/20 10:07
 アタシは小⑤の♀です。エミっていいます。
 今、イトコのTくんと一緒に住んでいます。Tくんはお父さんが事故で行方不明になって、ウチに引っ越してきました。Tくんはもっとちっちゃい頃から毎年ゴールデンウィークと夏休みに遊びに来てくれて、あたしにとっては優しいお兄さんでした。でも去年、一緒に寝ていると、なんだかエッチな気分になってしまって、その頃からTくんのことを意識するようになって、一緒に暮らし始めてからは毎日ドキドキしっぱなしです。だけど、すぐそばで生活しているせいか、きもちを伝えたくても勇気がもてません。

 うまくまとめられなかった文章を、ゆきえが綺麗に清書してくれて、恋愛相談の掲示板に投稿したのが先週。その後、何人かの女の子や男の子とやりとりをしていたけど、そのなかで一人だけとても親身になってくれるひとがいる。ハンドルネームがダイシという男の子。みんな自分のことを語りたがるなか、ダイシだけはあたしのことを深く知りたがる。
 Tはかっこいいの? Tとどうしたいの? エミちゃんはキスしたことある? どんな感じだった? 一緒に寝てるの?
 最初は当たり障りのない質問ばかりだったけれど、だんだんエスカレートしてきて、少しエッチなことも訊かれるようになってきて、やがてダイシはチャットしようと言いだした。だけど、あたしはチャットのやり方がわからないから、週末、ゆきえちゃんを呼んで設定してもらう。
「あたしスカイプしか触ったことないけど、向こうはこれで大丈夫なの?」とゆきえが訊く。
「うーん、わかんないけど、チャットできるソフトなら何でもいいって、言ってたよ」
「あ、かかってきた」
 着信音が鳴って、あたしは自分の携帯が鳴ったのかと勘違いするけど、ゆきえは首をひねりながら画面をいじくり回している。左側のパネルに『DAISHI』の文字列が追加されるけど、画面には何も表示されない。代わりに、ダイシの声がする。
「こんにちは」
 あたしたちは顔を見合わせて、こんにちは、と返す。
「あれ、エミちゃんは、どっち?」
「あたしです、この子はゆきえ」
「そっか、ゆきえちゃん、ダイシです。よろしくね」
 おもったより太くて落ち着いた声。あたしはダイシを中高生くらいだとおもっていたけど、もっとオトナかもしれない。あたしはゆきえに、むこうにみえてるの? と囁く。
「みえてるよ、アレ? 俺はみえてる?」
「みえないです。声はきこえるけど」
「あれれ、カメラの調子悪いのかなぁ……。こないだからなんだよね、接触悪くてさ」
 カチャカチャとノイズが入る。だめだな、とつぶやく声。
「声だけで我慢してね、カメラ壊れてるみたい」
「うん」
「エミちゃんとゆきえちゃんは、お友達?」
「親友です」
「今日、Tくんはいないの?」
「まだ帰ってきてないです」
「なんか初めてみたけど、二人ともかわいいね」
 あたしたちは微笑みあって、腕を絡める。
「ダイシさんは、どんなひと?」
「おれ? 結構落ち着いてるって言われるかな」
「大人っぽい声ですね、いくつですか?」
「二十五だよ」
「えーっ、結構上だね」
「ゆきえちゃんも、エミちゃんと同い年?」
 ゆきえはちょっと戸惑って、そうです、と言う。
「ゆきえちゃんは、もうイロイロ経験してそうだよね」
「そんなことないですよ」
「じゃあ、キスは経験済み?」
 ゆきえは照れた仕草で肩をすくめる。今日はパーカのチュニックを着て、肩と太股を出した涼しい格好。椅子の上で膝を抱えるから、きっとダイシにパンツみえちゃってる。
「ねぇ、二人はおんなのこどうしで、チューしたりする?」
 あたしたちは、えーっ、と言ってお互い顔をあわせて照れ笑い。
「ねえ、チューしてみて」
 あたしがなにか言おうとすると、ゆきえがあたしの肩を抱き寄せて、濡れた唇を重ねる。さっき食べた丸ごとバナナの生クリームの甘い味がする。ダイシが、おおーっと声を漏らす。その声がなんだか油っぽくて、ちょっとイヤな感じがする。ゆきえの手があたしのシャツに滑り込んできて、胸を撫でる。指の腹で乳首をはじくから、あたしは敏感に反応して、やっ、あっ、と声を漏らす。ゆきえの手首を掴む。
「だめだよ、ゆきえちゃん」
「いいよ、続けてゆきえちゃん。俺みてるから」
 ダイシがそう言うと、ゆきえは再びあたしにキスをして、あたしの短パンのボタンを外す。座卓に載ったパソコンに向かって、両脚を開く。ゆきえの指が侵入してくる。濡れた花片に滑りこんで、ゆるゆると上下する。両脚がピクンピクンと飛び跳ねて、あたしは座椅子の背もたれにぐったりよりかかって、壁の時計とカレンダーを眺める。六月も後半になって、毎日じめじめして、今日も少し曇っているのに外はめちゃくちゃ暑くて、エアコンをつけているのにあたしのアソコはびっしょびしょ。
「エミちゃん、きもちいい?」
 ダイシが訊く。あたしは頷く。ゆきえの指の動きがとまる。ゆきえが訊く。
「ダイシくん、ボッキしてる?」
「してる」
「自分でしてる? シコシコしてる?」
「してる」
「うちらもみたいよ」
 しばらく沈黙する。あたしたちはパソコンの画面をみつめる。ダイシの声がする。
「直に会って見せ合おうか」

 公園の時計台はいろんなひとが待ち合わせに使う場所だから、人通りも多い。
「ねぇ、恵未、危なそうだったらスグ逃げてきて。あたし、携帯もってここにいるから」
「ゆきえは一緒にいかないの?」
「いくよ、でも二人で一緒にいるほうが危ないよ」
「公園の前のスタバでなんか飲むだけだよ」
「うん、大丈夫そうだったら、あたしもいく」
 ゆきえは自分から行くっていいだしたのに、いざとなると臆病。あたしはダイシになんか興味ないから、へんなひとだったらスグに逃げればいいし、スタバ以外はどこにも行く気はない。ひとりで時計台の下へ歩く。振り返ると、ゆきえは公園の入り口で、黄色い車止めに腰掛けて、携帯をいじっている。ケヤキの木漏れ日がゆきえのチュニックをまだらに染める。ひとりになると、あたしも少し不安。
 空を見上げると、さっきより雲が落ちてきて、風もすこし冷たい。雨のにおいがする。約束の時間まで、あと五分くらい。雨が降り始めたら、すぐに帰ろう。携帯を出す。ひらく。お母さんからメール。冷蔵庫の野菜室に無花果があるから、ゆきえちゃんと一緒に食べて。とじる。顔をあげる。ふりかえる。
 ゆきえが誰かと喋っている。
 黒っぽい服を着た、太ったおじさん。あたしは最初なんだろうとおもって、ぼんやり眺めていたけど、ずいぶん話が長いようで、ゆきえはずっとうつむいてて、しばらくすると、おじさんと一緒に黒っぽい車に乗り込む。ダメだよ、ゆきえちゃん、ダメ。
 あたしが走り出すと当時に、黒っぽい車も走り出す。
 垣根を跳び越えて、柵の間際まで駆け寄る。車のナンバーをみる。ゆきえちゃん、と叫ぶ。車は藤井食堂の脇道を曲がって、工事中の広場へ走り去る。携帯をひらく。智之お兄ちゃんの番号を選ぶ。液晶に、ポツ、ポツ、と雨粒があたる。
 途端、ざああっと、大雨が降り出す。
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