R18恋愛官能小説 青山倉庫

人形地獄

第32話「最後の楽園」


 大きな安楽椅子に寝そべったぼくのうえで幼い少女が上下に腰を振り、雅美と綾乃が左右に密着してぼくの乳首を愛撫して、尽きることをしらない精が少女の胎内に迸ると、順番待ちの少女が待ちきれずに交替する。
 スタヂヲのバルコニイには大勢の少女がはだかになって取り囲み、ぼくたちの行為を観察したり、おんなどうしで愛撫し合ったり、お喋りしたり、自慰に耽ったり、いつもの夏休みの光景が繰り広げられるのだけれど、いつもと違うのは、薄暗いホオルではなく、広いスタヂヲに総ての少女たちが殺到したこと。憂鬱な溜息はなく、歌や、笑い声や、甘い喘ぎ声に充ち満ちて、ぼくたちは相手構わず愛し合う。
 スタヂヲのバルコニイからみえる人形屋敷は、窓という窓がひらかれ、締め切った扉もひらかれ、もぬけの殻。掃除をする女中の姿もみえない。
「雅之さま、今日からお忙しくなりましたね…」
 伶俐がそう云ってぼくの傍らに膝をつき、デカンタの栄養剤を口に含んでぼくの唇へ。ぼくは左腕をのばして、短い給仕服から伸びる伶俐の太股に手を滑らせる。内股の曲線をなぞって丸い丘に達し、潤んだ割れ目に中指の腹を沈める。
 こどものころは感じなかった、おんなという造形美への憧憬は日に日に強くなり、そのかたちを愛でるために指先や唇や性器の粘膜で測量すると、大人びた伶俐も輪郭を結べばぼくを跨いで上下に律動する幼い少女となんら変わらないほんのこどもだと気づく。
「伶俐、これは一体、どういう催しなのですか?」
 優香理さんを連れて島へ戻ってから、ずっとこの騒ぎの理由をしらされず、休み無く性交を続けているのだ。ぼくは伶俐の膣に中指を滑り込ませて、遥香にきいたように指を折り曲げ、恥骨の裏側をぐいと引き寄せる。伶俐は腰を突き出したまま一歩、二歩よたよた近づき、震えながらこたえる。
「ご存じないのですか? わたしはてっきり、都築様に、おききになったのだと…」
「いいえ、きいていません。またぼくだけ、なにも、知らされて、いな…いっ、のっ、ふあっ」
 恥ずかしい声をあげて、ぼくは少女の胎内に噴射する。射精の最中にもかかわらず、朱美と歌子がぼくを無理矢理引き抜いて、左右から奪い合う。交替で呑み込む。二人とも唇をひらいて喉で摩擦するから酷くイヤラシイ音が露骨に響いて、その音が「クリちゃんクリちゃんクリちゃんクリちゃんクリちゃん」に聴こえて、ぐるぐるとつながる「クリちゃん」に混じって「ブリちゃん」というひとも居て、それはどちらも白くてまるいいきもので、大勢のクリちゃんとブリちゃんに囲まれるところを想像してこわくなる。
「この子たちは、もう、売られないのですよ」
「売られない?」
「ええ、都築家の人形は、終売です。もう…どこへも、行きませんわ。この島で、ずっと暮らせるのです」
「ほんとうに?」
 ぼくは伶俐をさらに引き寄せて、恥骨の裏側で指先を細かく震わせる。
「ほんと…です、わ…」
 伶俐はぼくの手首を掴む。痙攣する。指がぐいぐいと引き絞られる。綾乃が顔をあげて、嗤う。
「雅之はいちばん島のことをしらないのね、不思議だわ」
「どうしてですか?」
「大勢の子とまいにちこうしてるのに、お話しされないのですか?」
「お話し…、しているのですが…」
 雅美も顔をあげる。ぼくの頬に唇を押しつける。
「ふふ、雅之さまは、うわさ話に興味なさそうですわ」
 そう云って、雅美と綾乃はぼくの胸の上で唇を重ねる。舌を絡めるところをぼくにみせつける。唇を離すと舌の先から唾液がキラキラと糸をひいて、その向こうで朱美が棒を、歌子が玉を呑み込んで、クリちゃんクリちゃんクリちゃんブリちゃんとおとをたて、その間にさくらが割り込んで、ぼくを跨いで腰を落とし、ちゅるりと巨根が小さな割れ目に吸い込まれてしまう。漁夫の利という言葉を思い浮かべるけど、ギョフがだれなのか、誰が得をしたのか、どうしてそんな言葉を思いついたのかわからなくて、びしょ濡れのお腹に両手を添えたさくらが丁寧に腰でらせんを描くようすをじっとみつめて、欠伸をこらえる。
「都築様が、どこかの外郭団体に、島の運営資金を頂けることになったのですよ。もう、わたしたちが身売りしなくても、よいそうです」
 伶俐が説明する。ぼくは指を更に沈めて、伶俐の子宮頚のくぼみをつつく。デカンタの栄養剤を直接飲ませて貰う。しろく濁った苦くてぬるい液体が喉を通ってそのまま下腹部へ溜まっていくところを想像しながら、ぼくはふと、身売りしたのは実次ではないかという疑いを抱く。
 ぼくはあの真鍮の鍵で、実次の書斎に入り、未公開の写真のフィルムと共に、手記をみつけた。
 人形が人形である所以は主にその不老にあって、ひとと異なった世界をみる意志無き生きた機械であり、それを管理する主体はニンゲンである都築家の人形師でなければならないという受け継がれてきた思想に実次ははじめから懐疑的であって、写真という光学器械が描き出すエロスに、人と人形の決定的な差を求めていたのだけれど、結局その答えはみつからなかった。おなじ蛋白質の塊であり、管理された他の生き物との幾何学的な分解はあまり意味を成さず、ニンゲンはそれほど特別でないことを審らかにするばかり。それどころか、ひとはひとの手で作り出された人形に劣る、すべてにおいて劣った未完成品。物、ひと、人形、それらは様々な次元で絡み合い、その連結がそれをそれたらしめる主体そのものであり、それを喪えばニンゲンもドウブツも、定性的にも定量的にも炭素の集合に過ぎない。そういう、曖昧な物語がひじきを散らかしたようなまめまめしい文字列で綴られ、伊澤さんの解釈を以ても半分も理解することが叶わない。添えられたフィルムは感光して、なにも写っていなかった。
「さくらも、しって、いましたか? 人形を売らない、こと」
「あっあっあっあっしっ、しって、ましたわっ…」
「やっぱり、ぼくだけ…、あっぐっ」
 さくらの全身がぎゅっと縮んで痙攣し、ぼくも同時に至福を迎える。ぼくの胸にくずれたさくらの背中とお尻のなだらかな曲線が汗に濡れて細かく震え、その輝く丘のむこうで優香理さんと麗羅がぼくの巨根を引き抜いて、精を噴き散らかす先端を挟んで接吻している。ああ、それは朱美と歌子です。麗羅は死んだのです。優香理さんは白いワンピイスを着て、バルコニイの手摺りにもたれて、音禰となにか喋っています。強い風がふいて、二人の服の裾がバタバタなびき、ぼくを呑み込む歌子の髪がフワリと舞い、ビクビクが収まらないさくらと唇を重ねながら、手首をスナップさせてよりいっそう伶俐の恥骨を震わせて、伶俐は立ったまま絶頂してあられもない声をしぼりだす。
 優香理さんと音禰が小走りに近寄る。優香理さんが云う。
「雅之、さくら、晃さんが戻ってきましたよ」
 音禰が海を指さす。ぼくは頭を起こして、蒼い海のうえを滑るように走るポンポン船のうえに、ますます真っ黒に日焼けした晃さんの姿をみつける。晃さんは白い帽子を取って手を振る。バルコニイの女の子たちも手を振る。ぼくも自由な右手を振る。朱美がぼくを跨いで、にゅるりと合体する。さくらはぼくの首筋に鼻先を埋めたまま、お父様は都築様と恋仲なのです、と呟く。お父様は雅之さまのお母様とも恋仲でした、わたしはその淫蕩の血をひいています、淫乱なのです、雅之さまのおちんぽで頭がいっぱいです。そして綾乃と唇を重ねる。ぼくは雅美と舌を絡める。右手を伸ばして歌子を引き寄せる。朱美を突きあげる。歌子の割れ目に指を沈める。伶俐と歌子と朱美をおなじ律動で愛でる。
「雅之…、仕合わせ?」
 優香理さんがきく。ぼくは動きをとめずにききかえす。
「きもちいいことは、仕合わせなことですか?」
「そうね、不快なことより、仕合わせなことよ」
「仕合わせなことは、よいことですか?」
「そうね、よいことよ」
「ぼくが仕合わせになることで、不仕合わせになるひとがいませんか?」
「いるかもしれないわ。でも、そんなのわからないわ。わからない不仕合わせなひとのために、雅之は仕合わせを躊躇うの? その逡巡は誰も救わないし、誰も仕合わせにしてくれない」
「ぼくは無力が、口惜しいのです…。この娘たちを救ったのは、ぼくでも都築さんでもなく、どこかの団体だとききました」
「無力であることは禍福なのよ。あなたは誰も救えないし、誰からも救われない。だけど、あなたは一時はこの子たちを救おうとしていたのに、我が身の仕合わせを願ったんじゃないの? それがわだかまっているのよ」
「違う、ぼくは…」
 優香理さんがぼくの唇を覆う。ぼくの頭を抱いて、髪の毛に指を絡める。舌を絡める。良い匂いがする。
「あの日のこと、覚えてる? わたしを抱きたいって、お兄様を強迫なさった…。雅之は正しくはないけど、間違ってもいない。そんなこと、ぜんぶ、忘れてしまえばいいの。思惟停止と揶揄されても、考えることを放棄するのも、選択肢のひとつなのよ」
 朱美が仰け反って、優香理さんにそっくりな声で喘ぐ。狭い安楽椅子のうえで、さくらと雅美が指先で愛撫し合う。ぼくも歌子と伶俐を指先で愛撫して、朱美のちいさなお尻が浮かぶほど激しく突きあげる。優香理さんにそっくりなかたちの膣腔が、ぼくをぎゅううっと締めあげる。ぼくがおもわず呻くと、朱美は腰を浮かしてぼくを引っこ抜き、ぼくは蒼い空にむけて高々としろいキラキラを噴き上げる。

 西の海に陽が沈みかけるとしろいスタヂヲが橙に染まり、少女たちのしろい肌も橙に染まり、愛し合う囁きも喘ぎも落ち着いて、波と風の音がさらさらり。
 安楽椅子のうえで仰向けのまま、手足のながい少女がぼくを跨いで上下に揺れる。小さな割れ目が無残に拡がって、揺れるたびに薄い陰唇がめくれたりめりこんだりしながら、つっちょつっちょと艶めかしく音をたてる。まいにちまいにちそんな光景を眺めているのに、チットモ飽きることはなくて、柔らかい肉のはなびらがぼくの長大な肉の棒を優しく愛撫する美しくて残酷な行為はなにかを連想させることもなく、あたたかくて、やわらかくて、はかなくて、それはきっとなにかの本質そのものだから、それはそれ以外になり得ない。あるいはきもちよすぎて、考えるに能わないのです。だけど考えたい、想像したい、ぼくのうえで突き出した腰を上下に振る少女の下腹部が、動きに合わせてぽこりと膨らむところをみて、小さな腹腔を長大な陰茎が往復し、未熟な子宮がくるりとひっくりかえって、狭い膣腔が細長く引き延ばされる想像が余りに劇的で、ぼくは少女をめちゃくちゃに突きあげて、少女が絶頂するのもかまわずつきあげて、あらん限りの精を注ぎ込む。溢れる。順番待ちの少女がぼくを引き抜いて、左右から奪い合う。ぼくは奪い合う少女の肩にそっと手をおく。
「ごめんなさい、すこし、休憩させてください」
 二人の少女はぼくをみて、微笑んで、ぼくの頬に濡れた唇を押しつける。七時間ぶりにようやく安楽椅子から起き上がり、まだ熱をもったままの床におりて、ふらふらと手摺りまで歩く。バルコニイの手摺りに優那と遥香がもたれかかり、足下のおぼつかないぼくを支えてくれる。
「優那、この島は楽園だよ」
「そうね、雅之。この島は楽園よ」
「遥香、ずっとここで暮らしたい?」
「ええ、雅之。わたしたちは、ずっとこの楽園で暮らす運命よきっと」
「なにも変わらないかな」
「雅之は、変わって欲しくないのでしょう?」
「うん、ぼくは、なにも変わって欲しくないよ」
「でも、なにかが変わっても、わたしも優那も変わらないわ」
「そうよ雅之、わたしも遥香も、なにも変わらないわ」
「ぼくも、変わらないよきっと」
 二人は声を揃えて、そうかしら、とくすくす嗤う。
 ぼくたちは手をつなぐ。島の南北を隔てる円蓋の建物は解体中で、代わりに学校が作られるときいた。足場に覆われた建物を、裸の少女たちとぼくたちきょうだいが眺めて、どこまでも伸びていく夕陽の蔭が橙色の水面に揺れていて、やがて最後の陽が消えると、蒼い帳が天から、ふわり、と垂れてくる。
<< 前のページ 戻る 次のページ >>