R18恋愛官能小説 青山倉庫

人形地獄

第30話「粘膜の記憶」


 しょじょの濡れた肌のうえを汗がすべり、ぼくの巨根にゆっくりと腰を沈めて、膜がぷつりと裂けるしゅんかん。
 スタヂヲの地階のホオルには、お料理の載った長方形のテエブルが周囲に並び、給仕服の女中たちが皿を持った少女たちに料理を取り分け、入り口のカウンターに置かれたラヂヲに耳を澄ます娘たちがいて、窓際でカアテンごしに黒い豪雨を眺めて溜息をつく少女がいて、丸テエブルで食事しながらお喋りに興じる子たちもいるけれど、広い空間の中央にぼくと大半の少女たちがひしめき合って、一昨日島へきたばかりの娘たちをもてなして、あいぶして、うるおして、ぼくは順番に処女を奪う。
「あ…、あっ、雅之さま、おおきい…」
「いたくありませんか?」
「いいえ、なんだか痺れて…。でも、ここまでなら、わたしも指を入れたことが…」
「どうして、指を?」
「ふふ…、恥ずかしいわ、そんなこと、おききにならないで…」
 ぼくは名前をしらないその少女を突きあげて、指もはいっていない未踏の深さへ先端を沈める。未熟な膣をゆっくりかきわけ、底に達して、小さな子宮のいりぐちがこりこりとあたって、ぼくは夢中で名前もしらない少女を突き、先端がちいさな子宮を衝き、少女はか細くあまい声を漏らす。周囲の娘たちはぼくたちを取り囲んで、ぼくと名前もしらない娘のからだに指先と舌を這わせて、口々にイヤラシイことを囁き、なんにんかの指がぼくの後ろの穴に滑り込んで、パンパンに膨らんだ精嚢とかゼンリツセンとか直接えぐってかきまわして、ぼくはまたたくまに白目を剥いて世界がひっくりかえって処女の胎内にドバッと噴射する。ぬるいのが溢れてぼくのお腹をだらだらと流れ、幾筋にもわかれて川になって、しろい泡の船がとろりとろろとその川をくだりくだってゆく、余韻。
「交替ですわ、サァ、サァ…」
 少女たちが促し、余韻を味わう暇もなく名前もしらない少女はぼくを抜き取って結局名前はわからないままで、別の名前のわからない丸顔の少女が、長い髪を髪留めで結いながら、ぼくを跨いで腰を沈める。ぐいとおしあげ、ぶつりと裂け、つるりとあっさり底まで沈んで了う。情緒もなく、なんの会話も交わすことなく、しっとり濡れた膣に半分ほど包まれて、ちゃっぷ、ちゃっぷ、と卑猥に上下する。お腹を流れた精液が、おおぜいの処女の血と混ざって桃色の絵の具のように筋を描く。それを少女たちが塗りたくり、美しい獣になって舌を這わせる。きもちよいのに、なにかが不安。まだ順番を待っている二人の少女に、歌子があの呪文を囁いている。
「ねぇ、雅之さま…」
 うわずった声で少女のひとりが声を発する。
「この夏休みは、いつまで続くのでしょうか?」
「八月の、終わりまでですから、みっ、三月ほど…」
 ぼくは震えながら答える。震えが、さきほどから震えがとまらなくて、声まで寒そうに震えるのだけど、ただきもちよくて震えているのであって、ぼくはむしろ暑いくらい。雨が止んだら、ぼくたちは汗だくで三箇月間ホオルを出ず、絨毯がガビガビに固まるまで愛し合う。その間、娘たちが売られていくことはない。
「ねぇ、雅之さま…。こんな日々が、ずっと続いたら、ドンナに仕合わせでしょうねえ…」
 少女は長い睫毛を濡らしてうつむく。おもいだした、この娘は幸江。幸江は妹の香織を売られて毎晩泣き通し、まるで抜け殻のように変わり果てた娘。残酷だ、なにもかも。
「びゅうううっ、びゅっく、びゅっく、びゅっく、ごぼごぼ…」
 長い髪を髪留めで結った少女の膣内にそそぐ体液のおとを、処女の二人が少女の腹に耳をあてて聴きながら、口でそう表現する。髪留めの少女が腰を浮かすと、みんな一斉に濡れた巨根に殺到して、ぼくをおさえつけ踏みつけて滅茶苦茶にして、ぼくはまた朦朧としてしまう。快楽は眠りを誘うけれど、その刺激は安眠など約束してくれない。いちばん敏感な部分が、なんにんもの喉を滑り、少女たちは無邪気に吸い込むのだから。
 少女たちはおんなどうしで愛撫しあい、ときどき激しく律動し、痙攣し、あちこちであまい声と吐息とかすれた悲鳴があがるのだけど、女学校のように姦しくもなく、上品な言葉遣いで、静かに語りあい、愛しあい、乱交と呼ぶには静謐に過ぎる。このホオルには二百人ほどがはいるから、人形屋敷の少女たちは毎日半分ずつ入れ替わる。それだけの人数がひしめきあってなお、この空間には静かで平和で憂鬱なじかんが流れている。

「畜生」
 バルコニイの手摺りを乗り越えるとき、白い患者衣の裾をおおきく破いてしまう。忌ま忌ましさに呪いの声をあげ、都築の妹を引っ張りあげる。暴風がバルコニイを吹き抜ける。わたしたちは床に這いつくばって、風に飛ばされないように地べたにしがみつく。目の前に倒れた植木鉢が転がり、弧を描いてもとにもどる。
「門倉様、この嵐では進めませんわ」
「つべこべ云わないで!」
 わたしは都築の妹に道案内をさせ、島の外側の道を進んだ。それは閉じられた塗籠の蔭から伸びていて、断崖絶壁の中腹にはしる幅三尺ていどの狭い道だった。恐怖に足をすくませながらジリジリと進み、ようやくこのバルコニイへたどり着く。騙されているのかもしれないという焦燥もあったのだけど、他に進む道はない。
「港は、港はどっち?」
 都築の妹に訊く。バルコニイからはのぼる階段とくだる階段に道が分かれ、豪雨でその先はみえない。わたしはもういちど、港はどっちよ、と訊く。
「下の階段です。島の外側を迂回できるのです。でも、波が強くて、危ないわ」
 都築の妹は襦袢までびしょ濡れで、着物の重さに起き上がることもままならない。わたしは再び帯を掴んで、バルコニイの奥へひきずり、黒い庇のしたへ。柱の蔭へもたれると、すこしだけ雨風をしのげる。つよい風が吹いて、雨音が遠ざかる。わたしはそっと窓から部屋のなかを覗きこむ。
 乱交。大乱交。
 カアテンのひかれた窓の奥、広いホオルは、わたしがフィルムでみた阿鼻叫喚の乱交絵巻が蠢いている。
「これはなに?」
 わたしは都築の妹の袖をひっぱる。
「この子たちは、なにを、しているの?」
「ご覧の通りですわ、愉しんで、いるのよ」
 目を凝らすと、数百人の少女たちの中央に、あの美しい少年が丸いクッションを背にして、ひたすら律動し、幼い娘たちにからだじゅうを貪られる光景は、フィルムと違って色があって、想像していたほどおぞましいものではなくて、むしろ幻惑されるほどに美しく、艶めかしく、儚い。みつけた。その途中にあるここへ至るまでの諸々を飛び越えて、わたしは目的のものをみつけたのだ。手元に写真機があれば、そうだ写真機。
「どうされたの? 逃げないの?」
 都築の妹が云う。その口元は嗤っている。
「こんな幼い娘たちに、いったい、なにをしたの」
「なにもしていませんわ。この子たちは、己からすすんで、悦楽に身をやつすのよ」
「嘘、嘘だわ!」
「嘘じゃありませんわ、ご覧なさい。みんなあんなに悦んで…。ほら、あの男の子の左右にいるのは、あの子の姉妹なのよ…。門倉さま、あなただって、ああなりたいでしょ、あんなふうにしたいんでしょう、あんなことをされたいのでしょう…」
 窓硝子に指を滑らせ笑みを浮かべる都築の妹に、わたしは底を看透かされた気がして血の気がひく。鋏の柄で都築の妹を殴る。倒れる。額から血を流し、都築の妹はわたしを怯えた眼差しでみあげる。なんて弱いおんな。
「このうえはスタヂヲよね。立ちなさい、うえに行くわ、写真機が要るの」
 都築の妹を立たせる。帯の仮紐を解いて、都築の妹を後ろ手に縛る。先に歩かせて、階段をのぼる。風が弱くなる。かわりに雨がつよく降る。踏み板の隙間から、雨水が流れる断崖絶壁と、黒い海の怒濤がみえる。階段をのぼりきると、綴じられたパラソルと円卓の並ぶ広いテラスに出る。
「待て」
 二人の男が立ちはだかる。仮面の実次と、色黒で長身の男。わたしは都築の妹を引き寄せて、首筋に鋏をつきつける。長身の男は、施条銃をわたしに向ける。
「門倉さん、妹を離してください。いったい、どこへ行こうとしているのです」
「東京へ帰して」
「まずは話をしましょう、この雨の中では、話もできない」
「いますぐ帰ります。帰れないなら、あなたの妹と海へ飛び込むわ」
 黒い外套を羽織った実次と、汚れた作業着姿の施条銃を構える男は対照的で、従者と主人のようでもあり、そうして二人の間で視線を行き来させていると、都築の妹がわたしの手首を掴んで鋏を奪い取ろうともがく。揉み合う。わたしのほうがずっとちからが強いのに、都築の妹はしつこくまとわりつくから、鋏を両手でつかんだまま突き飛ばす。鋭い鋏の先端が硬い帯を貫通して、ふかく、ふかく、突き刺さり、わたしは驚いて手を放す。仰向けに倒れた都築の妹のお腹に鋏が突き刺さったまま、紅がじわりと咲き、藍色の二尺袖に描かれた薄桜が、つつ、と染まる。

 パアン。
 ぼくは首を起こして、耳をすます。雷かしら。なにか乾いたおと、どこかで聴いたことのある不吉なおと。さくら、さくらはどこ。ぼくのからだを七八人の少女が愛撫していて、腰が抜けたようで、起き上がることができない。ぼくの性器を愛撫する遥香と優那は顔をみあわせて、おとに気づいたようだ。
「優那、なにかきこえたわ」と遥香が云う。
「そうね、なにかが鳴ったわね」と優那が答える。
「なにかしら、聴いたことのある音ですわ」
「そうね、どこで聴いたのでしょう」
「どこかわからないけど、わたしが優那と一緒にいるときに聴いたのね」
「そうよ、だって、わたしたちは、いつも一緒じゃない」
「そうだったわ、わたしたちは、いつも一緒だわ」
 いつものやりとりのあと、ぼくの巨根を左右半分ずつ唇で包み、ちゅるちゅると上下にすべる。舌がからみついて、ぼくの長大な性器はくねくねと踊る。優那と遥香が接吻するあいだに挟まれているみたい。遥香がからだを起こして、ぼくを跨ぐ。にゅるりと幼い膣にすべりこみ、根元までねっとり包まれて、いつものようにゆっくり上下に動き出す。大勢の少女たちのなかで、いちばんよくしっている肉体。たくさんの少女と交わるほどに、この二人が血を分けたきょうだいであることをおもいしる。
 伶俐と音禰が給仕服を脱いで、朱美と綾乃にご奉仕する姿がみえる。歌子とさくらがお喋りをして、笑い声をあげる。喘ぎ声にかわる。ぼくも喘ぐ。腕を伸ばして、だれかの割れ目に指を挿れる。たくさんの舌が這い回り、指先がぼくの胎内をえぐり、柔らかい肉にからだじゅうを包まれて汗びっしょりで、キモチイイ、という言葉がばらばらに砕け散るまで繰り返しうったえて、血のつながった遥香の子宮にびゅーっと勢いよく精を噴きだす。
「雅之さま。ねぇ、起きて。わたしたちと、アソビマショウ」
 詩織と多恵が痙攣するぼくを誘う。美月や涼子や、一緒に島へきた数人の少女たちが仰向けで股をひらき、円陣を組む。ぼくはつながったまま起きあがって、遥香にびゅっくびゅっくと注ぎながら、みずから指で拡げて誘う少女たちの肢体を眺める。背後に立った少女がぼくに目隠しをする。そしてこう云う。
「みんなとつながって、誰だかお当てになって…」
 ぼくは立たされ、濡れた絨毯のうえでぐるぐる回され、崩れ落ちる。床を這って、手近な少女の足首をつかみ、手探りでちゅるりとつながる。
 雨はますます激しくなり、バルコニイの窓を雨粒が叩き、ぼくらのアソビもますます激しくなり、やわらかな肌から湯気があがるくらいびしょ濡れになり、ぼくは粘膜の記憶を頼りに、つながっている少女の名前をあてていく。
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