R18恋愛官能小説 青山倉庫

人形地獄

第26話「精に溺れ」


 おじさまのスタヂヲには、甘酸っぱい匂いが立ちこめる。
 お母様が扉を開けると、真っ白な壁と真っ白な床、天井も白く塗られて、真っ白なパイプベッドと白い浴槽に、はだかのこどもたちがひしめいてうごめいて、浴槽のこどもたちはリズミカルに上下に揺れて、あん、あん、といやらしい声を漏らす。おじさまの姿はなく、カメラもありません。
「朱美さん、こちらですよ」
 お母様に手をとられ、浴槽の前に立たされた半裸のわたし。濁った体液が溜まった浴槽は、雨に濡れた栗の花の香り。わたしと一緒に生まれ育った歌子が股をひらいて、たったひとりの男の子が太い性器を歌子に沈めて、お互い激しく律動し、その周りをはだかの少女たちが取り囲む。長大な肉の管が、ぶるちゃぶるちゃと不気味なおとを鳴らして歌子の胎内に出たり入ったり。
 異様な光景におそろしくなり、足が竦む。おとなしくて清楚可憐な歌子が、この世でもっとも破廉恥な辱めをうけて、淫乱に喘ぎ、わたしと目が合うとにっこり微笑んで、アケミサン、と名前を呼ぶ。
「さぁ、ショオルを脱いで」
 お母様がわたしのショオルを肩から取り、とうとうわたしは全裸になります。二の腕を抱いて、猫背になって、歌子とつながった美しい少年と目があって、潤んだ瞳をみつめると引き込まれそうになって視線を外すことができぬ。このひとはオカアサマに何かが似ている。お母様が窓を開ける。海風が部屋に吹き込んで、蒸し暑い部屋の空気を押し流す。男の子が痙攣して、二人の結合から濁った体液がごぼごぼ噴きだす。
「お母様…」
 おそろしくてお母様に声をかけるけど、お母様はまるで他人のような冷たい表情で、朱美さん、次はあなたですよ、と言い放つ。わたしは首を振って泣き出す。俯く。こわい、こわいよ。お母様はわたしの前にしゃがんで、わたしをなだめようとします。
「朱美さん、泣かないで。あなたに、心の準備ができるまで、無理強いはしませんよ」
 涙が溢れる。浴槽の少女たちが、不思議そうな表情でわたしをみる。
「いやよ、お母さま。わたしに、淫婦になれと仰るの?」
 お母様はかなしそうな目でわたしをみつめる。ててなし児のわたしをおんな手ひとつお育てになられて、たくさん心配や苦労をかけてきたけれど、お母様はいつも私を大切にしてくださって、わたしはいつか恩返しをしたかったけれど、これはあんまりだ。
「朱美さんは、雅之とここで暮らすのよ。快楽に溺れることが、不道徳だとは、私は教えなかったわ」
「これが、快楽なの…?」
「そうよ。歌子ちゃんをご覧なさい。こんなに悦んで…。あなたも歌子のようになりたいでしょ、きもちよくなりたいでしょ、こんなふうにしたいでしょ」
「いや、いやっ」
 お母様は、すっと立ち上がって、鴇色の羽織を脱いで、わたしの肩にかけてくださる。
「あなたが苦しむのであれば、私が代わりに、雅之に抱かれるわ。あなたは、みていなさい」
 お母様が着物の帯を解く。涙が溢れ、わたしはお母様の前で跪き、その腰にすがる。
「いやぁ、いやあ、お母様、朱美いうことをききます。だから、おやめください、身代わりなど、わたし、嗚呼…」
 わたしはお母様のはだけた下腹部に頬をおしつけて泣きじゃくる。お母様から、他の少女たちとおなじ匂いがする。そのおんなの匂い。急に、お母様を遠くにかんじる。わたしはお母様を離さないようにしっかり掴んで、嗚咽する。お母様はわたしの頭を優しく撫でてくださる。
 浴槽では次の悦楽がはじまって、三人の少女と雅之と呼ばれた少年がまた濡れた音をたてて蠢き、あられもない声でよがり泣き、幼い少女たちは美しい少年を雅之さまと呼んでかしづく。きもちよさそうだけれど、あまりに淫猥な光景で、おじさまはどこにいるの?と焦燥に駆られて目だけでスタヂヲを見渡し、浴槽の縁にぐったりもたれかかった歌子のぬれた睫毛にとまる。
「はぁ、はぁ、朱美さん、おいでになって、とても、きもちいいわ」
 わたしはお母様を見上げて、お母様はわたしの頬を撫でて、わたしは虚ろに立ち上がる。歌子は濡れた手を差し伸べて、わたしの太股に指先を滑らせる。わたしは歌子の額に張りついた髪の毛を指でかきわけてあげます。
「歌子さん、亡くなった麗奈様が、かなしむわ」
「ふふ、どうして?」
「わたしは、かなしいわ」
「どうして?」
「わからないの?」
「わからないわ、だって、歌子は、きもちいいもの…」
 そう呟く歌子はわたしの目をみつめながらもどこか遠くをみているようで、ふっと力が抜けて、どうでも良いじゃありませんか、と暖炉の前で編み物をしていた麗奈様のことばをおもいだす。
 麗奈様はわたしのお母様と恋仲で、幼いわたしたちの前で愛し合うこともはばかりなく、わたしたちはこのお二人が愛し合ってできた娘だと信じていた。だけれど、書生の上谷さんが、おんなどうしではこどもをつくれないと教えて下さった。いいえ、そればかりか、子作りの仕方を事細かに教えて下さるものだから、わたしはお母様や麗奈様がそんなおぞましい行為に耽るとは到底考えにくく、お母様には内緒で麗奈様に訊いたのです。わたしたちのお父様はどなたですか。麗奈様は微笑んで、曖昧にはぐらかし、だけどその目はウットリと遠い昔のことを思いだしていらっしゃるようで、とても不思議なきもちに浮ついた。
 再び少年の股間からぶくぶくと泡が噴き上がり、大量の体液が浴槽に溜まる。
「サァ、朱美さん…」
 歌子がわたしの手を取る。わたしはお母様をみあげて、少年に視線を戻して、覚悟を決めて、震えるからだで浴槽の縁をまたぐ。ちゃぷり。溜まった体液にくるぶしまで浸かり、濡れた少女たちがわたしのからだを引っ張り、わたしは少女たちの肉の間にどちゃりと転ぶ。顔をあげると、大瓶を抱えた歌子が、乳白色の液体を少年に飲ませる。ごくりごくりと飲み干してしまう。その間も、浴槽にひしめく少女たちが、四つん這いのわたしのからだをにゅるりにゅるりとなでまわし、かんじたことのない感触にぶるぶると震えて、まるでからだじゅうが剥き出しの粘膜になったようで、暑苦しくて息苦しくて、おもわず恥ずかしい声を漏らしてしまう。眼前の濡れた割れ目からつるり、長大な肉が滑り抜け、硬く屹立したまま白濁の雫を垂らす。書生の上谷さんの猥談にも、こんな巨根は登場しない。
「こんにちは、朱美さん」
 美しい少年が優しい声で話しかける。まさゆき様、だっけ。こんなカタチで出会わなければ、恋をしていたかもしれない。少女のように愛らしく、貴族のように高貴な顔立ち。わたしは四つん這いのまま、抑揚定まらず「あ、あ…」と喘ぐ。
「怖いのですか?」
 わたしは首を横に振る。
「いやなのですか?」
 だれかがわたしの股間に指を滑らせて、敏感な部分をつまみ出す。ああーっ、と悲鳴。
「やめたほうが、よくありませんか。いくら優香理さんの娘だからって…」
 わたしは首を横に振って、汗と涙が散る。
「いいえ、雅之さま。わたしも、雅之さまと、結ばれ…あっ、はぁーっ」
 二の腕が震える。だれかがわたしの股間に舌を入れようともがき、背中を舌と指先が這いまわり、さっきから燻っていたわたしのからだがバッと火がついたように燃え上がって、わたしにも淫婦の血が流れているのかとおもうと益々恥じて頬を真っ赤にして。
「朱美さん、もう溶けていますわ。もう十分ですわ」
 わたしの股間を愛撫していた歌子が顔をあげて囁いて、四つん這いのわたしを背中から抱き起こす。少女たちの肉の湯船をかきわけて、わたしは雅之さまを跨ぐ。誰かが雅之さまの巨根を呑み込んで愛撫していて、背中に密着した歌子がわたしの割れ目を指先でおもいきりひろげて、耳元で信じられないことを囁きます。
「雅之さまは、わたしたちのお父様なのよ」
 耳の奥で火の見櫓の警鐘がなりひびく。それこそ島中にひびき渡るくらい。巨根を飲んでいた誰かが口を離して、わたしの膝が力を失いカックンと折れて、十寸の生殖器がにゅるるるっ!と胎内へ滑り込んで子宮に衝突、なおも深く突きあげおしこまれ、内臓全部が横隔膜までおしやられ、わたしはしばらく息ができなくて天井を仰いだまま口をぱくぱく、かはっ、あ、はぁっ、はぁっ…。
「苦しいのですか? 痛くありませんか?」
 わたしの肩に手をのせて、雅之さまが心配する。いいえ、だいじょうぶ、唇だけがそう呟いて、声もでない。胎内にじわりと雅之さまの熱が伝わり、やがて処女を喪った痛みが襲う。うう痛い、わたしは下唇を噛んで堪えつつ、雅之さまの濡れたお腹に手を添えて、泣き笑いの表情でみつめる。なにを云っていいのか、なにをすればいいのか、いびつなかたちで初めて会ったばかりの少年とつながったまま、わたしは恥辱と痛みを堪えて涙が頬を伝い薄い顎からしたたるのをみる。
「お願い…雅之さま、わたしはっ、ふっ、あっあっあっあっ」
 雅之さまがわたしをつきあげる。他の少女にするように、小刻みに、ときどき大きく、やさしく、ゆっくり、激しく、つよい痛みは最初だけで、やがて痺れてきて、内蔵全部が攪拌機にかけられたような卑猥な音と刺激。緩んでいく、溶けていく、ちからがはいらない、歌子に抱かれてゆっくりと仰向けに、雅之さまはわたしに覆いかぶさり両脚を抱えて突き下ろし、その巨根に劇的にひろげられた割れ目が血の混じった泡をふいて、ぶっちゃぶっちゃと悲鳴をあげる。これ以上の辱めはないだろうと、ふっと目線をあげると雅之さまのきもちよさそうなお顔が近づいて、わたしの唇を奪ってしまわれるのです。

 処女を奪われはじめておとこの精を胎内に注がれたそのとき、スタヂヲにおじさまが入ってきて、黒い防毒服に覆面姿の人影がおじさまだとわかったのは白い塗装の剥げたシルバアの仮面のお陰で、おじさまは大きな写真機を抱えてスグに撮影を始めて、血を流すわたしの割れ目をお撮りになる。何枚もお撮りになる。いちどの噴精で雅之さまは抜いて下さらず、わたしを体液の浴槽内に仰向けにして、とり憑かれたように夢中で腰を振る。からだじゅう、髪の毛から耳の穴にまで精液に浸かり、その蒼い匂いとなまぬるい液体のちゃぷちゃぷが信じられないくらい心地よく、いろいろにまみれた雅之さまがなんどもわたしのなかで噴きだすたびに、おじさまの写真機がボッと閃光を放つ。
「おしまいよ」
 見下ろす歌子の声だけが遠くからきこえて、少女たちが溺れそうなわたしを抱き起こすまで雅之さまはつながったままで、立ち上がってもつながったままで、耳の穴から体液が流れ出すとようやくみんなの話し声がきこえて、大丈夫、朱美さんだいじょうぶ、と口々に心配する。わたしはつながったまま雅之さまの腕にだかれて、大丈夫と久しぶりに声を出す。わたしは気を失って、ほんとうに溺れかけていたのだそう。
 お母様がカアテンをひいてくださって、冷たいシャワァを浴びる。少女たちはお互いのからだを撫でてまみれた粘液を洗い流し、わたしは雅之さまに立ったまま突かれながら、雅之さまの胸の上を細かく枝分かれして流れる水の帯をじっとみつめていて、脳髄が痺れたようにいまじぶんがなにをしているのかなにがおこっているのか把握できずに、あん、あん、と、からだの最奥を突かれる本質的な快楽に声を漏らすばかり。
「お流し致しますわね」
 女中の伶俐がそう云って、浴槽の栓を抜く。伶俐、そうだわ、その女中の給仕服は恥ずかしげもなく乳と割れ目を晒しており、今朝会った時は不憫にかんじたけれど、他の女中とはどことなく違っていて、幼くて、大人しくて、きっといまのわたしや他の少女たちとおなじ。おなじなのです。不遇で、貞淑で、淫乱なおんな。
 シャワァの水に薄まった体液が沈み、ずるずると吸い込まれていくおとを聴いて、律動に息を荒げ、雅之さまはまたも大量に精を噴き、わたしの太股を濡らしてばしゃばしゃとまき散らす生ぬるい感触にまるでお漏らしをしているような脱力を覚えて、はぁぁん、と素直に漏らした自分の甘い声に陶酔を覚える。
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