R18恋愛官能小説 青山倉庫

人形地獄

第20話「いちどきりの秘め事」

 一週間降り続いた雪がやむ。
 寝室に置かれたラジヲから手風琴の旋律がきこえてくる。島に冬の匂いがするシベリヤの風が流れ込んで、僅かに残った秋の切れはしを冷たい海にふき飛ばしてしまう。建物のまわりに残った雪はまだ溶けきれず、女中たちが玄関先だけ申し訳程度に雪をかく音がきこえてくる。
 昭和十七年十二月八日午前六時半、ぼくは仰向けの優香理さんのからだを愛撫する。滑らかな肌に舌と指を滑らせて、未熟な膨らみをのぼってはすべり降りる。
 ぼくたちのベッドのうえで、優那と遥香、さくらと綾乃が、おもいおもいの姿で愛し合う。このベッドはこのお屋敷で、もしかすると日本で、いちばん大きいのだ。
「ねぇ、雅之…、すごいわ」
 優香理さんが囁いて、ぼくの反り返った肉の棍棒を握る。にゅるにゅるとこする。
「まるで鋼鉄のよう…、こんなに硬くなるのね」
「優香理さんも、びしょ濡れですよ」
「雅之が上手なのよ、とても…あぁっ」
 ぼくは優香理さんのお腹を滑って、股間に顔をうずめ、濡れた粘膜に舌を滑らせる。綾乃やはるかとおなじように毛のはえていない割れ目に、未熟な肉のはなびらが息づく。指で拡げる。いつもおすまし顔の清楚な優香理さんにも、優那や遥香とおなじ秘密の花が咲いている。
 小さな処女から溢れる体液を舌ですくって、ぴちゃぴちゃと花びらに塗りつける。めしべの鞘をめくって、肉芽を剥き出しにする。唇をつけて、じゅるじゅると吸いたてる。
「いや…、いやらしい、いやらしいわ。そんな音、たてないで」
「優香理さんの音ですよ。おちつかない音ですね」
「そんなこと云って…、あたしを辱めるのね」
「辱めるなどと、仰らないでください。ぼくは、優香理さんを溶かしたいのです…トロトロになるまで」
 優香理さんはぼくの肩をつかんで、首をいやいやと横に振る。
「もう十分よ、これ以上、焦らされたら、あたし…」
 スグ隣で、さくらが綾乃の愛撫に恍惚する。仰向けのまま、綾乃の頭を太股に挟んで、夢にうなされているように小刻みな痙攣を繰り返す。
 ぼくは優香理さんに覆い被さる。優香理さんはぼくの先端に指先で触れて、自分の花びらに導く。ぼくは体重をのせて、ぶつりと優香理さんの花びらを貫く。

 ぼくの取引に実次が納得したのかわからないけれど、昨夜の女中たちの申し送りに際して、優香理さんが戻ってきた。
 ぼくたちは丁度夕食をとっている時間で、優香理さんは寝室に入るなり、とても丁寧にお辞儀をした。いつものひらひらした洋服ではなく、茶色の着物にあかい袷羽織をかさねて、ながい黒髪をおかっぱに切りそろえて、別人のようであったけれども、ぼくはすぐに優香理さんだとわかって、立ち上がった。ぼくもお辞儀をして、あとに続くことばをさがしたけれど、なにも思い浮かばなくて、だまって優香理さんをみつめていた。その変な沈黙がきまり悪くて、優那と遥香はクスクスと嗤う。
「雅之はどうしてなにも云わないの?」と優那が囁き、
「雅之は優香理さんのことがすきなのよ」と遥香が応える。
「すきだから、なにを云えばいいのかわからないのね」
「そうよ、すきだから、ことばが続かないのよ」
「そうね、ことばは、無力だわ」
「そうよ、ことばよりも、行為することよ」
「遥香ははしたないわ、行為するだなんて」
「じゃあ、どう云えばいいの?」
「あたしなら、そう、律動する、だわ」
「優那のほうが露骨だわ、一体、何が律動するのかしら」
 そうやっていつもの問答を繰り返しながら、直立不動のぼくを弄ぶ。ぼくはますます喋れなくなる。
 雪がやんで久しぶりに暖かくなったいちにち、溶けた雪の雫がバルコニイにてんてんと滴る。暖炉の焔が、さくらの浴衣の裾から覗くしろい太股を妖艶に彩る。ぼくたちはつい今し方、大きなベッドのうえで激しく行為して、女中たちがマットレスを交換する間に風呂場で貪るように律動していた。浴衣をいちまい羽織っただけのぼくたちをみて、優香理さんは意味ありげに微笑む。
「今夜、いちにちだけ、戻ることが許されました」

 びゅっ、びゅうっ、びゅくっ。
 優香理さんの胎内に勢いよく放つ。大量に溢れて、優香理さんのお尻を濡らす。シイツを濡らす。防水のマットレスはぼくらの体液を吸わないから、なんども繰り返すあいだに、ぼくたちは皆、からだじゅう体液に濡れてしまう。ぼくは射精しながら、優香理さんを突くことをやめられない。
「優香理さんは、今日だけ、こちらにいるのですか?」
「はぁ、はぁ、そうよ、わたくし、もどれなかっ…くふっ」
 優香理さんの膣壁が引き攣る。ぼくは動きをとめる。どこかに飛んでいった優香理さんの意識が舞い戻るまで、ぼくはじっと待つ。優那と遥香が卑猥なカタチでお互いの粘膜を摺り合わせ、大きなベッドが波打って、ぼくたちは根元までしっかりつながったまま、ゆらり、ゆらり、たゆたって、優香理さんの薄く開いた唇から、ほう、と甘い溜息が漏れる。
「なんですか?」
「ほんとうは、先週からこちらに戻っていたのです、お兄様に許しを請うために。ですが、すぐに別荘へ帰るようにいいつけられたのです。わたくし、かなしくて、一晩中、ないていましたわ。お兄様は那須野先生とのお話に夢中で…、優香理には全然かまってくださらないの。本土へ戻る日になって、大雪が降って、わたしは船に乗らずにいつまでもベッドのうえで寝返りをうっていたら、しらない間に吹雪がやんで、船は出てしまっていたの。だけどお兄様は私を叱らなかった。お兄様にとって、わたくしはどうでも良い、悪い妹なのです」
「そんなことありません」
「雅之だけね、優香理を受け入れてくれるのは」
「優香理さん、ぼくがお兄様にもう一度…」
 そう云って、ぼくは再び動き始める。想像していたより、優香理さんはロマンチストではなく、ぼくなんかよりもずっとリアリストなのだ。そのことに気づいて、ぼくは口を噤む。
「もう一度、なんですの?」
「いえ、なんでも、ありません」
「優香理、しってるわ。雅之、わたくしを、抱きたいって、お兄様を、強迫なさったのね」
「そんな、強迫だなんて…」
「いいえ、優香理、嬉しかったわ」
 ぼくは優香理さんを抱き起こす。胡座をかいて、優香理さんの細いからだをしっかり抱いて、上下に揺れる。大きなベッドに、大きな波がうねって、相手を入れ替えた四人の少女たちも、ぼくと優香理さんの律動にあわせて上下に揺らぐ。
 ぼくらは仰向けになる。唇を重ねる。このままでいたい、ずっとこうしていたい、唇を摺り合わせながら、そんな譫言を囁くけれど、優香理さんは、ただ、きもちいい、きもちいいと繰り返すばかり。
 そんなぼくたちを余所に、ラジヲから緊迫したアナウンスがきこえてくる。

 臨時ニュースヲ申シ上ゲマス。臨時ニュースヲ申シ上ゲマス。
 大本営陸海軍部、十二月八日午前六時発表。
 帝国陸海軍ハ今八日未明、西太平洋ニ於イテ、アメリカ、イギリス軍ト戦闘状態ニ入レリ。
 帝国陸海軍ハ今八日未明、西太平洋ニ於イテ、アメリカ、イギリス軍ト戦闘状態ニ入レリ。
<< 前のページ 戻る