R18恋愛官能小説 青山倉庫

人形地獄

第15話「心と肉」


 お屋敷の屋上には楕円形のプウルがあって、そこからは海と空とお屋敷より高台にある白いスタヂヲしか見えない。
 島の周辺は切り立った崖になっていて、砂浜なんてないから、ぼくたちはプウルで泳ぐしかない。だけどぼくは、青いマットに寝そべって、ぼくは綾川三姉妹の口淫に身悶えする。
「雅之さま、きもちよさそうね…」
「ええ、ほんとうに」
「もっときもちよくして差し上げましょう」
 果凛とほとみが左右の陰嚢を、咲月が陰茎を呑み込んで、三人の指先が会陰に滑り込んで、生々しいおとを響かせて、ぼくはますます悩ましい声をあげる。
 楕円のプウルを優那と遥香が行ったり来たり。さくらと綾乃はデッキチェアで抱きあい、ぼくと同じように甘い声で鳴く。そんなぼくたちを、パラソルのした、優香理さんが目を細めて眺める。ぼくたちははだかなのに、優香理さんはワンピイスを着る。優香理さんは、ぼくの頬をぶったあの日以来、ぼくの前ではだかにならない。その代わり、少女たちとおなじ肌が透けてみえる薄いワンピイスを着て、ぼくの目の前でわざと脚を組み替える。ぼくはひとり、貪欲な少女たちに屠られて、とめどない快楽に忍従して、切なさに指を噛んで涙をにじませる。優香理さんは手元の本に目を落とす。ぼくがいくら喘いでも、顔をあげようとしない。
「ねぇ、優香理さん…」
 とうとうぼくは声をかける。優香理さんはようやく顔をあげる。青い空に、白いカモメの群れが飛んでいる。
「これが、ぼくのお仕事なのですか?」
「ええ、そう、云ったわよ」
 果凛がぼくを跨いで、濡れた膣腔でぼくを包み込む。ヒダをかき分ける感触に、ぼくはいやらしい声を漏らす。
「こんなに、きもちよくて、良いのですか?」
「いや、なのかしら?」
「いいえ、ただ、すこし良心が…、あ…あぁあぁあぁ」
 果凛が両手をマットについて、腰だけを巧みに上下させる。ちゅるちゅる、ちゃぷちゃぷ、濡れた音と柔らかな粘膜に鳥肌がたつ。一週間前はなにもかもぎこちなかった処女が、すこしずつ滑らかになって、艶やかなおんなになった。
「はぁ、はぁ、果凛…、じょうずに、なりましたね」
 ぼくは果凛の胸を撫でながら、褒める。
「さくら…さまの、ご指導の、賜物ですわ…」
「それだけでは、ありませんよ。三人とも、たくさん努力したではありませんか」
「ええ、大変でしたわ。見た目は簡単そうですのに、やってみると、あまりに、快感…で、からだがおもうように、動かないのですから…」
 ほとみと咲月がぼくの乳首や脇腹に舌を這わせる。ほとみがぼくの陰嚢をもみくちゃにする。咲月の中指がぼくの会陰につぷりと滑り込む。雲一つない青い空を眺めて、からだじゅうに快感が充ちて、だんだん意識が散漫になっていく。島の岸壁に打ち寄せる波のおとが、眠気を誘う。
 ぼくはようやく島のことを学んだ。この小さな島に三千人が住んでいて、そのほとんどが巨大な対空砲のある円蓋の建物を隔てた北側で暮らし、お屋敷とスタヂヲがある南側にはぼくたちと女中たちが三十人ほどが生活する。南側には男がいない。南側に入れる男性は、実次と、ぼくと、晃さんだけだ。ぼくはお屋敷の中であまり服を着ない。着てもすぐに少女たちに毟られてしまう。女中たちに好奇の目で見られることには慣れてしまった。運転手の佐喜治は、北側の港で守衛をやっている。ぼくはときどき会いに行って、本土のことや、野球のことや、この島の話をきく。ここに似た島が、長崎や瀬戸内海にもあるらしい。
 果凛とぼくの股間がぶくぶくと精液の泡を噴く。下腹部で痙攣する精嚢にぐっとちからをいれると、勢いよく精が噴きだす。ぼくのお腹と顔に飛び散る。果凛は動きをとめて、ぼくに覆い被さる。唇をかさねる。ああ、堪らない。
「三人とも、休憩しましょう」
 優香理さんは本を閉じて、ぼくたちに云う。果凛は震えながらからだを起こす。抜けるとき、どぼりと塊が零れる。ほとみと咲月に支えられて、ふらふらとプウルへ歩く。ぼくは三人の後ろ姿を眺めながら、呼吸が落ち着くのを待つ。
「優香理さん…、ゆかりさ…」
 起き上がろうと肘をマットにつくけど、飛び散った体液で滑る。
「無理しないで、寝ていらして」
「優香理さんは、プウルで泳がないのですか?」
「あなたたちとは違うのです、日焼けしてしまうじゃありませんか」
 ぼくは手を差し伸べる。指先から透明の体液が糸をひいて垂れる。
「ねぇ、優香理さん、きて」
 優香理さんはデッキチェアから降りて、マットの隅にしゃがむ。優香理さんの割れ目が見える。わざとそんなしゃがみかたをしているのか、あるいはとても無頓着なのかわからないけど、性交を中断されたぼくには挑発でしかない。
「雅之さん、すこし休んだら、もっといっぱい…あっ」
 ぼくは優香理さんの腕をひいて、抱き寄せる。抱きしめる。唇を重ねる。閉じた唇を、舌でこじあける。優香理さんは抗わずに唇をひらく。舌をからめる。唇をすりあわせる。優香理さんの薄いワンピイスが、汗と体液に濡れて肌にはりつく。髪の毛に指先をからめて、ぼくは囁く。
「優香理さん、ひどいです…」
「どうして?」
「ぼくが抱くことをお許しにならないのに、そのような格好で、ぼくを誘って、煩悶する姿を楽しんでいらっしゃる、ひどいひとです」
「違うわ…、雅之。お兄様が…あっ」
 ぼくは優香理さんの両脚を抱え上げて、ぼくを跨がせる。腰を浮かせて、優香理さんの股間をおしあげる。
「なんでもお兄さんのせいなのですね」
「ちっ…ちが、あっ、はぁ、はぁ、あ…」
 ぼくが腰を上下させるのにあわせて、優香理さんも腰をしゃくるように動かす。優香理さんは上半身を起こす。両手をついて、ぼくに股間をすりつける。ぱっくりひらいた肉の割れ目が、肉の棍棒に密着してちゅるちゅる。自分からうごいているのに、優香理さんは首を横に振って、だめ、だめ、と声を絞り出す。
「いけませんわ…、まさゆき、あっ…、いけないわ」
「なにがいけないのですか、またお兄さんですか」
「いいえ、これは…罪深いこと、あやまちですわ」
「くちではそう云っても、ぼくたちの心と肉は、求め合っているでは…ありませんか」
「ああ…、雅之」
「すきです、優香理さん。あいしています」
「うそよ…うそ、愛しているなら、抱かないで」
「いっ、いくっ」
 ぶしゃあっと凄いおとをたてて、ぼくは大量に精を噴く。自分の胸と、顎と、顔を濡らす。優香理さんはうごくのをやめない。ぼくもやめてほしくないから、優香理さんの腰をしっかりとつかんで、前後に揺らす。
 やがてぼくたちは言葉を交わさず、ときどき、きもちいい、きもちいい、と呟いて、甘い喘ぎ声を漏らす。濡れたワンピイスが優香理さんの肌に張りついて、膨らみかけの乳房が浮かぶ。デッキチェアのさくらと綾乃がぼくたちを眺める。
 だれかが駆けてくる。優香理さんの手首を掴んで、頬をピシャリと平手打ちする。
「馬鹿ッ、なにをしているんだッ!」
 実次が怒鳴って、優香理さんを立たせる。
「おにいさま…これは」
「黙れ、お前も人形になりたいのか!」
 実次は優香理さんの手をひいて、お屋敷に戻っていく。
 性交を二度も中断されたぼくは、燃え上がるからだを持て余す。実次の厳しい言葉と怒声におとこのひとの恐ろしさを感じて、おきあがることも叶わず、ただ蒼い空をみあげたまま、じっと震えがとまるのを待つ。

 果凛、ほとみ、咲月の三姉妹との一週間は、あっという間だった。
 水色のドレスを着た三人は、港で定期船を背景に、実次の写真に収まる。風がつよくて、みんなドレスを手でおさえる。三人の付き添いに、晃さんと、運転手の佐喜治が同行する。定期船の運航はみつきに一度になっている。日本には石油が足りないのだと、博識な佐喜治が教えてくれた。
「お淋しくなりますわね」
 果凛が呟く。ほとみの目に涙が光る。咲月はぼくに駆け寄って、抱きつく。唇を重ねる。
「雅之のこと、忘れないわ」
 そう呟いて、離れる。手を振る。咲月は先に定期船に乗る。もう振り返らない。晃さんが促して、あとの二人を船に乗せる。出港の汽笛が響き、見送りのおとこたちとおんなたちが丘のうえで帽子や外套を振り、定期船に乗ったひとたちも手を振り、ぼくはその中に三姉妹をみつけて、両手を振って、大声をあげる。
「おーい、手紙書くから、おてがみ、かくからー」
 走る。ボラアドの前で立ち止まる。三姉妹はまだ手を振っている。白い定期船はみるみるちいさくなる。
「帰りますよ、雅之」
 実次が言う。ぼくはうつむいて、実次のあとについていく。すれ違うひとびとが、みんな実次に頭をさげる。
 ぼくは前のお屋敷が恋しくなる。今ほど広くないお屋敷だったけれど、そこで過ごした夢のような日々は、現実と陸続きだった。この島はおとぎの国、エデンの都なのだ。ぼくはここで儚い夢を見続けるしかない。
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