R18恋愛官能小説 青山倉庫

ぼくと妹とガラスの少女

第16章「ひとつに」

 三月になると退院して、ぼくは松葉杖をついて登校する。
 クラスメートはみんな心配してくれていて、柴谷先生が入院先を教えてくれなくて、お見舞いに行けなかったと聞かされる。章子は髪型が変わった。ぼくと目が会うと、微笑んで、目を逸らす。麻美が怖い目でぼくを見ている。
 お姉ちゃんが第一志望の高校に落ちた。お姉ちゃんはぼくを責めなかったけど、お母さんと喋らなくなった。ぼくが階段を登るときは手を貸してくれる。遅くまで遊んで門限を守らない。服が派手になった。髪形も派手になった。彼氏ができた。彼氏と遊びに行って、深夜まで帰らなかったとき、お母さんと電話で喧嘩していた。お父さんは新聞を読みながらしょんぼりしていた。ぼくもしょんぼりしていた。こういうとき、男はみんな頼りない。
 終業式の日は、お姉ちゃんの卒業式だから、ぼくとお姉ちゃんは校門の前でお父さんに写真を撮られる。彩奈も写真を撮る。彩奈は制服だけはお姉ちゃんの着たくないと言う。お姉ちゃんは、あんたチビだから無理だよと言う。ちびちび~と言いながら松葉杖をついたぼくの周りを逃げ回るお姉ちゃんを、彩奈がほっぺたを膨らませて追いかける。

 中三になると、妹が中学に入学して、章子や麻美とは別のクラスになった。章子とはとうとう何も喋ることはなかった。ぼくはしばらく陸上部を続けていたけど、とても長距離には耐えられなくて退部した。煙草が見つかった津田はとっくに退部していた。
 ぼくと妹は、体育倉庫や屋上や立ち入り禁止のプレハブや放送室や教材準備室や廃部になった新聞部の部室で、昼休みと放課後にセックスする。家に帰ってからもセックスする。彩奈はお姉ちゃんと違って男の子からちやほやされるけど、告白されても誰ともつきあわない。
 夏休みに入って、彩奈と毎日総合体育館に出かける。三階の立ち入り禁止の仮眠室にお布団を敷いてセックスする。仮眠室は埃だらけで、長いこと使われていない。最初は服を着たままセックスしていたけど、三日目には全裸になる。お弁当を持ってくる。ティッシュを枕元に置く。タオルケットを布団の上に敷く。その上に彩奈がうつ伏せになる。お尻だけを上に突き出す。ぼくはおちんちんに手を添えて、入れたり抜いたりする。ぶちゅ、ぶちゅ、ぶちゅ。根元まで入れて、覆いかぶさる。突く。彩奈がぼくの手首を掴む。
「いたたた」
「あ、ごめん」
「髪の毛ふんじゃだめ。はげちゃう」
「彩奈、髪伸びたね」
「伸ばして欲しいんでしょ」
「うん…」
 ぼくは肘を突いて、彩奈の髪に鼻先を埋める。お姉ちゃんと同じシャンプーの匂いがする。小刻みに突き下ろす。子宮頚にあたるたびに、うめき声をあげる。膣の入り口が締まる。
「きもちよくないの?」とぼくが聞く。
「きもちいいよ」彩奈は目を閉じたまま答える。
「すごい締まるよ」
「締めてるもん」
「そっか」
「どうして?」
「なにが?」
「どうして、きもちよくないって、おもったの?」
 ぼくは腰を回転させる。彩奈の臓物をかきまわす。汗びっしょりの小さなお腹がぶるぶる震える。
「彩奈、嫌がるとき、膣が締まるよ」
「うそ」
「締まるよ。お姉ちゃんに見つかったときも、すごい締まった」
「それ、押し出そうとしてるんだよ」
「そうなの?」
「締めてないよ。出してるの」
「そうなんだ」
「きもちよかったの?」
「すごく」
「じゃあ、お姉ちゃんの前でしよっか」
 彩奈は笑い声を出すけど、すぐに喘ぎ声に変わる。ぼくは上半身を起こして、お尻を支えてピストンする。仮眠室の窓から、川沿いに作られたテニスコートで練習する女子テニス部が見える。テニス部は夏休みでも練習しているけど、バレー部は休みだ。陸上部は今年どうするか知らない。去年は駅伝の練習をしていたけど、部員が減って今年は出場しないと丸山に聞いた。
 彩奈が体を硬くして、太腿を震わせる。背中を丸める。おちんちんが抜けそうになるから、ぼくは彩奈の背中をおさえる。突く。ぱんぱん腰を打ち鳴らす。彩奈は絶頂の兆候が現れて、数秒でイクこともあれば、一時間以上イかないこともある。ぼくは一生懸命突く。覆いかぶさる。突く。彩奈の手を握る。
「お兄ちゃん、だして、なかに、だして」
「彩奈は、あやなは、あ、まだ?」
「あいく、いくいく、あ、い」
 彩奈が喉の奥から歪んだ声を搾り出して、肩がぶるぶる震えて、結合から空気が破裂するいやらしい音が響く。テニスコートから「でゅーすー」という声が聞こえて、歓声が上がって、雲ひとつない空を旅客機が通り過ぎて、ぼくは声も出さずに射精する。枕に頭をつけたまま後ろを見る。股間から泡だらけの精液が一筋、夏の太陽にきらきら輝いて、タオルケットの上に滴り落ちる。

 階段から屋上に通じる扉はいつも施錠されているけど、はしごから屋上に出る扉はダイアル式の南京錠で、扉にマジックで開錠番号が書かれている。ぼくと彩奈はペットボトルのお茶を買ってきて、屋上に上がる。屋上は水色のペンキの剥れた手摺の前に背もたれのないベンチがあって、ずっと前から使われていないバドミントンコートとビニールシートに覆われた錆びた自販機が置いてある。ぼくはベンチに座ってお茶を飲む。彩奈に差し出す。彩奈はいらないと首を横に振る。手摺に凭れかかって、夕陽を眺めながら、聴いたことのないメロディーの口笛を吹く。肩まで伸びた黒髪が、風にさらさら靡く。
「彩奈、ここ、青くなってない?」と言って、ぼくは首をさする。彩奈が歯を立てて吸った痕。
「青い、あはは」
「虫に刺されたみたいになってる?」
「痛いの?」
「触ると痛い」
「すごい強く吸っちゃったもん」
「痕が残るかも」
「いいの、お兄ちゃんはあたしのもの」
 ぼくはペットボトルを鞄にしまって、手摺に凭れる。練習を終えたテニス部がばらばらに帰宅する。小学校が夕方に流す蛍の光が聞こえる。
「今日、花火大会だって。一緒に見に行く?」
「お兄ちゃんが行きたいなら」
「行こうよ」
「浴衣着てくる?」
「うん」
 ぼくは彩奈と手をつなぐ。彩奈はぼくの腕を抱く。頬を肩にのせる。章子はそんなふうにしなかったけど、人目を忍ぶこともなかった。お祭りや花火大会に行っても、ぼくたちは同じ学校の人に見つからないように気をつける。ぼくは人が来ないところを見つけるのが得意になった。そういうところで、ぼくは妹と抱き合って、キスをして、セックスして、何度も果てる。ぼくには禁断の恋とか愛とか幸せとか倦怠とか焦燥とかそういうことはよくわからない。成就しない恋とめくるめく肉欲の果ては、うつくしいものに昇華するか、醜く燃えさしにくすぶるか、ぼくはもしかするとそのどちらも選べないかもしれない。
「お兄ちゃん」
「なあに?」
「お兄ちゃん、いつかあたしと」
「うん」
「あたしと、一緒に死のうね」
「いいよ」
「ほんと?」
「彩奈が死にたいなら」
「そうすればひとつになれるよ。きっと、ずっと、つながっていられるよ」
 ぼくは何も言わずに彩奈の頭を抱く。
 夕陽が沈んで、グランドの照明が点灯する。
 深紅の空に、小さな三日月が浮かんで、小鳥の群れが森に還っていく。
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