R18恋愛官能小説 青山倉庫

人形地獄

第7話「激昂、嘔吐、涙」


 タヲルをもった優香理さんが直立するその前で、全身を作業着で覆った実次が、新しい写真機を構える。
 紫の布がかけられた安楽椅子のひじかけに両脚を帯で縛られ、腰をつきだした恥ずかしい格好のまま、ぼくは優那と遥香に性器を愛撫される。撮影が終わった雅美は、ビニイルのマットに寝そべって、麗奈にからだを拭いて貰う。優那が振り返って、言う。
「さぁ、さくらさん、準備ができましたわ」
 さくらは立ち上がって、椅子の前に立ち、ぼくの両脚に触れる。首を傾げる。遥香がくすくす笑う。
「さくらさん、違うわ。後ろ向きにつながるのよ。雅之を椅子だとおもって、うしろをむいて。そう、そのままゆっくり…」
 さくらがぼくにお尻を向けると、遥香がぼくの先端をさくらの割れ目にあてがう。さくらは腰を沈める。つよい圧迫感のあと、つるりとすべりこむ。根元一握りを余して、呑み込んでしまう。ストロボの瞬きがぼくらを襲う。優那と遥香が、さくらの両脚を肘掛けにのせて、ぼくの脚と一緒に結わえてしまう。そのままの格好で数枚撮影される。やがてぼくは動き始める。さくらを突きあげる。さくらの薄い乳房をなでまわす。
「ふっ、くっ、くぅぅっ、はぁはぁ…」
 さくらは下唇を噛んで、声を堪える。優那がさくらのお腹を撫でながら、耳元で囁く。
「さくらさん、我慢しなくてもいいのですよ。いつもしているように、存分に楽しんでいいのよ」
「あた…し、はっ、あっあっあっあぁあぁあぁ」
 さくらは両脚を引き攣らせて、腰を浮かす。ぼくは股間をぶつけないように、短いストロオクでさくらの膣を往復する。潤んだ粘膜のなかをちゅるちゅる滑るおとが、せまいスタヂヲに響く。ぼくたちのつながりを、実次が長めの露光時間で撮影する。
 写真では挑発的でうつくしくみえるぼくたちの行為も、当事者の目線からは、たいしたものがみえない。さくらの頬と肩、それに薄い乳房、濡れたお腹、その向こうから覗き込む優那と遥香の澄んだ瞳。窓の外に、茶色の車が玄関先に滑り込んできて、砂埃が舞い上がる。
 実次はどうしてぼくたちの行為を撮影するのか教えてくれない。撮影した写真をどうするのか教えてくれない。幼いぼくにも、そんな写真が世間様にみせられたものではないことをしっている。だけど写真家である実次は、その写真でぼくたちの洋服を揃え、大勢の女中と使用人を雇い、美味しいものを食べて、おおきなお屋敷を建てて、あたらしい写真機を買う。
「ぐっ、あっ、いくっ…いくっ」
 ぼくは腰を突きあげて、大量に射精する。濁った体液がぼくらの股間から派手に噴きあがって、優那と遥香のからだを濡らす。さくらはぼくが射精するたびにびっくりして、肩を竦めて、ぼくをぎゅううっと締めつける。ビニイルを巻いた新しい写真機を構えた実次は、いっそう近づいてシャッタアを切る。
「由恵さま、いけません、撮影中です…」
 女中の麗奈の声がする。スタヂヲのドアが荒々しく開かれて、ぼくたちのお母様が駆け込んでくる。実次が立ち上がる。全裸のぼくらと、全身を撥水布で包んだ実次を凝視する。お母様はかかとの高い靴を履いたまま、木の床をツカツカと歩み寄り、実次に百円の札束を投げつける。
「はなしが違うじゃないの!」
「いや、由恵さんは、勘違いをしておられます」
「勘違い? 妾はこの子たちを普通に育てて欲しいだけよ。なにもかわってない、なにもかわらないじゃない!」
「落ち着いてください」
「那須野先生にぜんぶ、お話ししますわ」
 お母様は踵を返して、ぼくたちに一瞥もくれずにスタヂヲを出て行く。来た時よりも、荒々しくドアが閉じられる。慌ててあとを追う麗奈を、実次が呼び止める。
「麗奈、放っておきなさい。あなたには手に負えません。由恵のことは私が話をつけます。あなたは後片付けをしてください」
「かしこまりました」
 麗奈が深く頭をさげる。実次は写真機を優香理に渡して、作業着を脱ぐ。スタヂヲに据え付けの電話を取って、交換台につなぐ。
 中野の下野晃を頼む。ああ、わたしだ、すぐに撮影所まで来てくれないか。問題がおきた。始末を頼みたい。
 実次は電話を切る。巻き上げたフィルムを優香理さんから受けとり、現像室に消える。麗奈がぼくたちの傍らに跪く。
「雅之さま、さくらさま、お気になさらず…。続きは、お屋敷に戻られてからに致しましょう」
 さくらは優那と遥香に抱えられて、ぼくの上からおろされる。二人の肩につかまるけど、歩けない。
「関節に、ちからが…、はいらないわ…」
「さくらさん、大丈夫よ。すぐに元に戻るわ」
 遥香が元気づける。
「あなたたちは、強いのね。あのような快楽を、毎日延々と享受するだなんて、あたしにはできそうにないわ」
 優那と遥香は微笑む。さくらを雅美のそばに連れていく。
 麗奈はぼくの両脚を結わえた紐をほどかずに、ぼくの性器をくちで愛撫する。行為のあと、いつもそうやって体液に濡れた性器をきれいにしてくれる。だけど今日はぎこちなくて、ときどき下を向く。
「麗奈、だいじょうぶですか? 顔色が、真っ青ですよ」
「え、ええ、ご心配なく。由恵さまの剣幕に、驚いてしまって…」
 麗奈はぼくの先端を加えて、いつものように深く呑み込む。暖かくて柔らかくて、膣とは異なるかたちの粘膜に包まれる。麗羅の喉が膨らんで、ぼくの性器は圧迫されて、吐き出されて、麗奈は激しく嘔吐する。今朝の朝食をぼくの下腹部にまき散らす。
「麗奈、れいな、大丈夫…?」
 びっくりしたぼくは起き上がろうとするけど、両脚を紐で結わえられたままで、恥ずかしい格好のまま動けない。
「うぶ…、ごめんなざ…」
 涙ぐんで謝ろうとする先に、再びばしゃばしゃと吐瀉物をまき散らす。雅美と優香理さんが駆け寄って、麗奈を洗面所へ連れて行く。優那と遥香も心配してついていく。吐瀉物にまみれて、椅子に恥ずかしい格好のまま縛られたぼくは、しばらくほったらかしにされる。

 スタヂヲの三階の浴室は、ここ数日の雨で、天井の雨漏りの痕が南北の壁を伝って、巨大な木の根のように、床に伸びている。
 夏のひかりがさしこむ縦長の浴槽に浮かんで、うしろから優香理さんに抱かれて、股のあいだで雅美が浮かんだぼくを愛撫する。優那と遥香はさくらと一緒に、バルコニイで空にひかれた飛行機雲を眺める。みな一糸まとわず、思い思いの時間を過ごす。
「雅美は、くちでするのが、とても上手になりましたね」
 ぼくが褒めると、雅美は咥えたまま微笑む。喉が蠕動して、深く呑み込む。ゆっくり吐き出す。舐める。艶のある赤毛を指先で掻き上げる。
「わたくし、嬉しいのです」
「なにがですか?」
「いろいろなことが…。優那さんの不思議なお話や、遥香さんと手遊び歌を唄うこと、外国のお料理を食べられること、優香理さんにお菓子をいただいたこと、ご主人様には、新しいしろいお着物を頂いたわ。だけど、なにより嬉しいのは、からだの調子が良いこと」
「ご病気が、恢復されたのですか?」
「ええ、かもしれません。あの怖ろしい朝が、いまではとても清々しくかんじますのよ。いまが偽りの安寧であっても、わたくしにはじゅうぶんなのです」
 再び雅美はぼくを呑み込む。おとをたてて頭を振る。ぬるい湯がゆらゆらと波立ち、ぼくは仰け反って揺れる天井を眺める。優香理さんがぼくの乳首を指先で摘む。ぼくたちには何かが欠けているけれど、これ以上のしあわせを求めるのは罪なことだ。
「優香理さん、雅美はいつまで一緒に居られるのですか?」
 優香理さんと雅美が目を合わせる。バルコニイで嗤い声があがる。
「雅之は知らなかったのですか? 雅美さんは、来週、ご実家にお帰りなのですよ」
「そうなのですか…」
 雅美がくちを離して、片手でしごきながら、ぼくに云う。
「ときどき、遊びに来ます。ご迷惑でなければ、お手紙を書きますわ」
「はい、是非」
 雅美は浴槽から出る。ぼくと優香理さんも出る。ぼくは優香理さんにからだを拭いて貰う。雅美はタヲルを肩にかけたまま、バルコニイに出る。浴室は蒸し暑い。ぼくもお外へ出たかったけれど、優香理さんはゆっくり丁寧にぼくのからだを拭く。普段、麗奈はてきぱきしているから、殊更のんびりとしたようにかんじる。
「優香理さん、麗奈は大丈夫なのですか?」
「いま、晃様が病院に連れて行きましたわ」
「麗奈も、病気なのですか?」
「サァ? ただの食あたりではないかしら…。なにも心配いりませんわ」
 そう言って、優香理さんが立ち上がる。ぼくに新しいタヲルを渡して、わたしも拭いて欲しいわ、と云う。ぼくは優香理さんのまえに跪いて、おなじように丁寧に拭く。絹のような肌を、水滴が滑り落ちる。うっすらと膨らんだ乳房を、柔らかいタヲルで包む。タヲル地のうえから、指先で乳首をはじく。優香理さんは敏感に反応して、二歩、三歩、後退る。壁に追い詰める。優香理さんはぼくの両手首を掴む。ぼくは更に刺激をくわえる。
「あっ、ああっ、だめ…、いけませんわ」
 タヲルが床に落ちる。ぼくは優香理さんに唇を重ねる。優香理さんはぼくの両肩を掴んで、弱々しくおし返す。唇を離す。
「優香理さんは、ぼくがお嫌いなのですか?」
「いいえ、嫌いだなんて…」
「ぼくは、優香理さんがすきですよ」
「うそ、うそ、からだ、だけでしょ…」
「優香理さんの声と、言葉と、優しさがすきなのです。それに、からだだって、とても美しいではありませんか」
「いや、いや、あっ、むぐ…」
 再び唇を重ねて、優香理さんの片手を壁に押しつけて、もう片方の手を、滑らかな股間に滑らせる。割れ目に指を沈めて、震わせる。滑らせる。指先に優香理さんの生ぬるい体液がからみついて、音をたてる。
「んっ、んう、んーっ」
 優香理さんは腰が砕けて、床にへたり込む。ぼくが覆い被さると、優香理さんはぼくの頬をぶつ。下唇を噛んで、涙ぐんでいる。
「お兄様がお許しになりません」
「ゆかりさ…」
 優香理さんは立ち上がる。ぼくをおいて、衝立にかけられた浴衣を掴んで、逃げるように浴室を出て行く。
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