R18恋愛官能小説 青山倉庫

人形地獄

第4話「麗奈の本心」


 優香理さんがレコオドの針を落とすと、蓄音機からベルリオズの幻想交響曲が流れる。
 ベッド脇で給仕服を脱いだ朝倉麗奈は、右腕で胸をかくす。ベッドにそっと腰掛ける。ぼくはベッドの真ん中で両脚をひらいて、髪を短く切りそろえた優那と遥香に、いつものようにくちでご奉仕を受ける。
「麗奈さん、れいなサンも、はじめは雅之に、くちでサアビスするのよ、サァ…ほら」
 遥香が麗奈の腕をひく。麗奈はおどおどした様子で、ぼくの陰茎の根元に指先を絡める。その目の前で、ちゅっかちゅっかと奇妙な音を立てて、ぼくの性器を愛撫する優那。急にくちを離して、先端を舌先でちろり、ちろりと舐める。そして、優那のもういっぽうの手を取って、両手でぼくを握らせる。
「歯を、立ててはだめよ。顎をおおきくひらいて、先端のねんまくを、舌と扁桃腺で圧迫するの」
 優那が説明すると、麗奈はなんども頷く。そして云われたとおりに、顎をひらいて、ゆっくりと呑み込んでいく。柔らかな肉の圧迫をかんじて、おもいのほか深く呑み込まれ、閉じた喉頭蓋に先端がぶつかる。麗奈はしばらく動かずにいて、やがて頭を上下に振り始める。
「さくらさん、音楽は、きらいですか?」
 優香理さんが、窓際のソファに座るさくらに声をかける。クイーンサイズのベッドで絡みあうぼくたちから一間ほど離れたソファに腰をおろしたまま、すごい表情でぼくたちを睨みつける。相変わらず薄手のみじかいワンピイスを着せられて、脚も腕も組んだまま、お昼前に手洗い所に立った以外は、ずっとぼくたちのすることを観察する。優香理さんの問いかけにも応えず、かといって別の部屋に移動するわけでもなく、ただみている。じっとみている。
「意地っ張りなのね、さくらさんは」
 優香理さんがさくら隣に腰をおろす。
「ここは、あたしの部屋よ。どこへも行きませんわ」
 今日、初めてさくらが口を開く。麗奈が顔をあげて、さくらを眺める。優香理さんは洋服の裾を直す。
「雅之と、優那と、遥香の部屋でもあるのよ。さくらさん、夜はソファで眠っているのね。毎晩、そのようだと、お風邪をひいてしまうわ。おおきなベッドなのですから、一緒にお休みになればいいのに」
「びしょ濡れのシイツのうえで眠れるわけ…」
「さくらさんも、濡れたらよいではありませんか」
「いやよ、穢らわしい」
 麗奈がぼくを跨ぐ。遥香がぼくの性器をささえて、優那が麗奈の腰をみちびく。もともと薄かった陰毛に剃刀をあて、ぼくたちとおなじように滑らかになった割れ目に亀頭がもぐりこむ。遥香が棒をゆする。さきっぽが麗奈のはなびらをひろげ、くちゃくちゃと濡れた音がきこえて、陰茎に、つつ、と一筋、おんなの雫がつたう。
「まさ…ゆき、さま…、あぐっ」
 ぶつり、と、朝倉麗奈の処女が裂ける。

 昨夜、遅い時間にきょうだい三人でバスルウムへ向かう途中、女中の麗奈が実次に哀願する声をきいた。
「お願いです、わたくしを傍女にしてください」
「なぜですか」
「さくら様のことで御座います」
「さくらを懐柔するためですか、やめておきなさい。放っておいても、そのうちさくらは自ずと抱かれに行く」
「そうでしょうか? さくら様はいつも雅之様とお嬢様方を、物凄い形相で睨んでおいでです。あのように敵愾心を剥き出しにされては、なにも変わらないかも知れません。そのうち心を閉ざしてしまいます」
 ぼくは実次の書斎のまえに立ち止まり、すこしだけ開いたドアの向こうの会話に聞き耳を立てる。
「さくらのことが、そんなに心配なのですか?」
「いいえ、わたくしが心配なのは、雅之さまの方です」
「どういう意味…」
「殿方はおもいのほか、繊細とききます。さくら様に拒絶され続ければ、雅之様の自尊心を傷つけることになるやもしれません。さくら様は、ことあるごとに、穢らわしい、穢らわしいと罵声をお浴びせになるのです」
「ッハハ、元気がありますね」
 ドアの隙間を覗き込む遥香を、うしろから抱き留める。ぼくたちはこんな時間までたっぷり愛しあったばかりで、全裸のままバスルウムへ向かうところだ。ぼくたちはからだじゅう、いろいろな体液で濡れている。確かに、さくらは今日もぼくたちを睨んでいたけど、随分まえにソファで眠ってしまった。
「あなたが心配しなくてもよい。雅之には、おとことしての自惚れはありません。傷つく要素などありもしない」
「ですが…」
 コツコツと机を叩くおと。ぼくは遥香を背後から抱きしめたまま、耳をそばだてる。広い廊下に明りはなく、窓から挿し込む月の光に、鉢植えのポニイテエルが鈍く光る。
「そうか、朝倉さん。あなたは雅之に抱かれたいのですね」
「いえ、そんな…」
「誤魔化さないでください。そうでなければ、朝から晩まで肉欲に溺れる長友きょうだいの世話など、頼まれもせずにだれが焼くものですか」
「わ、わたくしは、ただ…」
「正直になってはいかがですか! ワタクシの処女をまさゆき様の益荒男に奪われたいと、ヲンナにして慾しいと!」
 実次の足音。麗奈が鼻を啜る。麗奈がないている。ぼくたち三人は手をつないで、階段を駆け下りる。
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