R18恋愛官能小説 青山倉庫

人形地獄

第2話「お母様と愛人とその娘」


 ぼくたちが邸宅へ戻ると、正面玄関前に見慣れない車が停まっていた。
 お抱え運転手の佐喜治が出てきて、実次に何かを伝える。実次は外套を脱いで、せわしく玄関に消える。佐喜治が車を駐車場へまわす。ぼくたちは優香理さんと共に、女中の朝倉麗奈のあとについて邸宅の南側から部屋へはいる。空き部屋のすみで、ぼくたちは自分で着替える。優香理さんは、大勢の女中が白い布をかかげて、そのなかで女中たちに着替えさせてもらう。深緑の給仕服に白いエプロンを付けた彼女たちのことを、実次と優香理さんはメイドと呼ぶ。ぼくたちは語源のわからない外来語が苦手だ。
「雅之さま、お嬢さま、こちらへ」
 麗奈がぼくたちをつれて部屋をでる。階段脇の廊下を通って、玄関ホオルから東側の客間へはいると、ぼくたちのお母様と、背の高い男性と、実次が、なにかお話をされていて、ぼくたちに気づいた背の高い男性は、さりげなくテエブルのうえの封筒を背広の内ポケットにいれる。
「実次さん、この件で、合わせて四人分ということになりますかいな?」
 背の高い男性が、訛りのある口調で喋る。
「そうですね、まぁ心配はいりませんよ。さくらは美しい娘ですからね」
 実次がそう言って、音を立てずに紅茶を飲む。
「三人とも変わりありませんか、ご主人様の言いつけをまもっていますか?」
 お母様が立ち上がって、ぼくの頭を撫でる。優那と遥香に微笑みかける。ぼくは実次と、背の高い男性と、お母様を順番にみて、こたえる。
「はい、お母様、おかげさまで息災です」
「まぁ、この子はお愛想を覚えたのね」
 ぼくは自然と無邪気な微笑みを浮かべる。ぼくたちを愛していなくても、ぼくたちのお母様は他にはいないから。だけど、優那と遥香は押し黙ったまま、ただ直立不動で目の焦点もあわない。昔から二人はそうだったけど、お母様はそんな二人の様子を他人にみられると、少し狼狽してしまう。
「アキラさん、そろそろ行きましょう」
 お母様が振り返って、背の高い男性に言う。ぼくたちは背の高い男性の顔をしっているけど、言葉を交わしたことはない。
「すんません、お邪魔しました」
 晃さんはソファから腰を浮かして言う。実次が紅茶のカップから顔をあげる。
「おや、せっかく起こしいただいたばかりだというのに」
「イヤ申し訳ない。午後に仕事の打ち合わせ、入ってしもうて」
 晃さんとお母様はお辞儀をする。お母様はもういちどぼくの頭を撫でて、またきますね、と言い残して部屋をでる。ぼくたちは玄関先まで見送りにでる。女中の麗奈が深々と頭を下げる。見慣れない車が走り去ると、優那がぽつりと呟く。
「あれは、わたしたちのお母様?」
「そうよ、わたしたちのお母様よ」
 遥香がこたえる。
「一緒にいた男性はだれ?」
「一緒にいた背の高い男性は、お母様のご主人様よ」
「わたしたちのお父様?」
「いいえ、優那。わたしたちのお父様は亡くなったでしょ」
「そうだったわ。わすれていたわ」
 ぼくたちは、お父様のことを直接はしらない。お母様はいろいろな方の妾になられて、ぼくたちのお父様が誰だかわからなくなったときいた。
 車が庭園を抜けて、林道に消える。ぼんやり空をみあげるぼくの顔を、女中の麗奈がのぞきこむ。麗奈は都築家でいちばん若い女中で、優香理さんと同い年。なにかとぼくたちの世話をしたがるけれど、ぼくたちの世話は優香理さんの仕事で、麗奈がぼくたちに触れると実次から咎められる。
「雅之さまとお嬢さまに、新しいお友達が増えたのですよ」
 麗奈が言う。給仕服の裾が風にはためく。ぼくは優那に袖をひかれて、屋敷のなかに戻る。

 ちゅっこ、ちゅっこ。
 優那と遥香が交互にぼくの陰茎をのみこんで、頭を上下に振る。ぼくたちはベッドの上で裸になって、いつものように愛し合う。ぼくたちは、一日の半分以上を裸で過ごす。だから、ぼくたちは洋服を着ても、下着をつけない。すくなくとも、ぼくの陰茎はどんな下着にもおさまらない。
「さくらさん、怖がらなくても大丈夫ですよ。さぁ、もうすこしお近くに」
 藍色の小袖を着た少女の背中を、女中の朝倉麗奈がやさしく抱く。さくらと呼ばれた少女は、ぼくたちの愛し合う姿をみて、仰天して、そして何かを悟って、さめざめと涙を流し始めた。麗奈に袖をひかれて、ベッド脇に据えたヴィクトリア調の椅子にへたり込む。
「今日はみているだけですからね、心配なさらないで」
 麗奈がさくらの耳元で囁く。さくらはぼくと、姉妹の愛撫を交互に見て、目を逸らす。寝室のドアがノックされる。着替えを持った優香理さんが、部屋にはいってくる。
「さくらさん、これに着替えて」
 優香理さんが着替えを渡す。重い着物ではなく、ふわふわした洋服。優那と遥香が着ているのと同じ純白のワンピイス。暑そうにしていたさくらは立ち上がって、優香理さんに着替えを手伝って貰う。着物を脱ぐ。白い襦袢も脱ぐ。全裸になると、恥ずかしそうに腰をひく。そのうえから、ワンピイスを着る。細い肩紐で釣られた薄い一枚布は丈がみじかくて、さくらの太股はおろか、お尻も半分はみ出してしまう。自然と猫背になる。
「雅之くん、優那さんと遥香さんも、チョットこちらを向いて」
 優香理さんが声をかける。優那と遥香はぼくの性器に口をつけたまま、ぼんやりと振り返る。優香理さんがさくらの背筋をのばす。ワンピイスの裾から、さくらの幼い割れ目が覗く。優那よりも背が高い少女。
「下野さくらさん、しもつけは、下の野原って書くのよ。今日からあなたたちと同じ、写真モデルですからね。仲良くしてね。じゃあ、さくらさん、ご挨拶」
 優香理さんがさくらの背中を軽く押す。さくらは無表情のまま、ちいさくお辞儀する。
「こんにちは」
「あら、それだけ?」
「あたし、あたし…」
「ほらあ、そんなに怯えなくていいのよ。こっちへ来て」
 優香理さんはさくらの肩をかかえて、一緒にベッドの縁に腰掛ける。ぼくは微笑んで、挨拶する。
「こんにちは、さくらさ…」
 興味をうしなった優那と遥香が愛撫を再開する。口を半開きにして、扁桃腺で刺激するから、ちゅごっ、ちゅごっ、と奇妙な音がする。優那がぼくのお尻の穴に指をいれる。途端に、ぼくは堪えきれなくなって、激しく精を放つ。大量に噴きだす精をみて、さくらは優香理さんの腕から逃れようともがく。
「いやっ、いやあっ」
「さくらさん!」
 さくらは優香理さんの腕をふりほどいて、ベッドから飛び降りる。廊下側のドアに殺到して体当たりする。ドアを開ける。一目散に逃げてしまう。麗奈があとを追う。優香理さんは溜息をつく。
「嗚呼、困ったわ…」
「ごめんなさい、優香理さん。ぼくたちがしていることが、あの子には不快だったのでしょうか」
「いいえ、決して。仮にそうだとしても、あの子には、あなたと悦びを分かつ責務があるのよ」
「よくわかりません」
「今はわからなくても構わないわ。だけど、あの子に遠慮することはないのよ。さくらはあなたたちより、ひとつ年下なのですから」
「そうなのですか、そうはみえませんでした」
 遥香がぼくに背を向け、股間をまたぐ。優那が陰茎を支えて、遥香はゆっくりと腰をおとし、三十サンチの巨根を胎内に沈めてしまう。ぼくは上体を起こして、遥香を背中から抱く。突きあげる。
「優香理さん、ぼくたちは、学校へ通わなくてもよいのですか?」
「あら、どうしたの、急に」
「もう、四月です。ぼくたちは、五年生になっているはずでは、ありませんか」
 優香理さんは座り直して、ぼくの濡れた太股を撫でる。
「雅之は、学校へ、通いたいのですか?」
「いいえ、チットモ」
「では、どうして学校へ通わないことを、心配なさるの?」
「わかりません。罪悪感があるのです。ひとはみな、やるべきことがあると、ぼくたちは学校へ通い、学ぶことが義務だとお母様に言いつけられました。無学のひとになってはいけないと」
 とおくの部屋で、なにかものが割れる音が響く。女中たちの足音。ぼくが遥香を突き上げる律動にあわせて、優香理さんも上下にゆれる。
「このお屋敷のなかで、あなたは娘たちをおんなにしてあげること。そして、おんなになった娘たちは、あなたを悦ばせること。それだけです。もう学校などで学ぶことはないのですよ。それとも雅之は、殊勝らしく『学を修めて居ります』などとしたり顔でいたいのかしら」
「いいえ、ぼくは…、あっ、あっ、あーっ」
 ぼくは仰け反って、遥香を抱いたまま仰向けにくずれる。ぼくたちの股間から精の飛沫がとびちる。優香理さんの顔と洋服を濡らす。優香理さんは厭がらない。
「さくらは練習台なのに、あの調子では時間がかかりそうね…」
 優香理さんは溜息をつく。優那が遥香と交代する。間断なくベッドが揺れる。あけはなった窓から春の温かい風に混じって、桜のはなびらが舞い込む。ぼくたちの寝室からは、いちにちじゅう喘ぎ声が絶えない。
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