R18恋愛官能小説 青山倉庫

人形地獄

第1話「つらなる三つ児」


 自動車の窓から頭をだして、林道の木漏れ日をみあげる。
「雅之、寒いわ。窓をしめて」
 ぼくの隣に座る優那が言う。優那の向こう側には、遥香が口をあけたまま寝息をたてる。ぼくたち三人は、狭い後部座席にならんで座る。
 運転席でハンドルを握るのは、写真家の都築実次。助手席に、実次の妹の都築優香理が座る。実次は、顔の半分を白い仮面で覆う。その仮面のしたに、ひどい火傷の痕があることを、ぼくはしっている。
 ぼくは窓のハンドルをまわして、後部座席の窓をしめる。優那は微笑んで、ぼくの太股にてのひらを滑らせる。ぼくは白いリネンのシャツと短パン、優那と遥香は丈の短い純白のワンピイスを着る。三人の太股が後部座席に並んで、春の光に照らされて白く輝く。ぼくたち三人は、三つ児だ。最初に生まれたのは優那で、次にぼくが、最後に遥香が生まれた。同じ日に生まれたから、ぼくたちは三人とも十一歳だ。ぼくたちはお互いをお姉様とかお兄様と呼び合わない。
「もうすぐ着きますから、窮屈だけど辛抱ね」
 優香理さんが振り返って言う。実次より十近くとししたで、ぼくたちより二つだけとしうえ。朴訥な実次と違って、都会的に洗練されたひと。いつもぼくたちの身のまわりの世話をしてくれるひと。都築家には大勢の女中がいるのに、ぼくたちの面倒をみてくれるのは優香理さんだけだ。
「写真を撮るだけなのに、いつも遠くへ行くのね」
 優那が呟く。遥香が応える。
「そうね、写真を撮るには、遠くへいかなければならないのよ」
「どうして、遠くへいかなければならないの?」
「優那、わたしは写真家ではないから、わからないわ。きっと、写真機を近づけすぎると、ものがよく撮れないから、適度に離れなければならないのよ」
 曲がりくねった林道をぬけて、とちゅうから舗装されていない林道にさしかかる。車がひどくゆれる。眠っていた遥香が目覚める。森を切りひらいただけの駐車スペエスに、車がとまる。ぼくたちは車を降りて、原生林の向こうにみえる白い建物へ歩く。

 はぁ、はぁ、あん…。
 真っ白な撮影スタヂヲの壁を背にして、ぼくは腰を突きだした格好で立つ。ぼくの前に、優那と遥香が膝を突いて、ぼくの長大な性器を舌と唇で愛撫する。ぼくたちは両脚と両腕を飾り布で覆っていたけど、それ以外は肌を露出する。そして、そんなぼくたちを、ライカの写真機を構えた実次が撮影する。ぼくは唇を噛んで堪えるけど、どうしてもからだが痙攣したり、声を漏らしてしまう。そんなぼくたちを、濡れたタヲルを持つ優香理さんがみつめているから、ぼくは恥ずかしくていつも硬くなってしまう。
「優那、顔をこちらに」
 実次が指示をする。優那がちらりと写真機を一瞥すると、大きなライトが明滅して、何枚もの写真が撮られる。実次の指示は短くて、撮影も早かった。だけど、必要な写真を取るために、彼はぼくたちに演技させることはない。その場面が現れるまで、実次は何時間でもぼくたちが愛し合うのをみつめて、写真機を構えたまま動かない。
「つ、都築さん…」
 ぼくは実次のことをそう呼ぶ。実次は写真機から顔をあげる。
「ぼくたちは、すきなようにしてよいのですか?」
「不満かい?」
「いいえ、ですが、すこし不安なのです。撮影に、時間がかかりすぎるではありませんか」
 実次は折りたたみ椅子から立ち上がって、肩をすくめる。頭を横に振る。
「演技をしてしまっては、すべてが台無しなのですよ。それに、こういう撮影をするのはわたしだけじゃない。不思議ははなしだが、絵描きのなかにも、モデルに指示をしないひとがいるときく」
 そう言って、実次は再び折りたたみ椅子に腰をおろす。
「むずかしいのですね…ふうぅっ」
 遥香がぼくをのみこむ。喉の奥までのみこむ。それでもぼくの長い性器は半分も呑めない。頭を振る。わざとすすって音をたてる。口を離す。優那が交替する。おなじようにする。交互にすすりあう。
 じゅる、じゅる、ちゅるり、ちゅるり。
 実次はぼくらの脇に移動して、優那と遥香の愛撫を撮影する。優香理が照明を持って、実次の後を追いかける。ぼくは二人の頭を撫でて、音がきこえるほど激しく精を放つ。大量の精を床にばしゃばしゃとまき散らかす。
「雅之、もうそろそろいい?」
 優那がぼくに訊く。ぼくは頷く。壁を背にしたまま床に座り込んで、両脚を投げ出す。優那はぼくに背を向けて、ぼくを跨ぐ。そそりたつ性器を、未熟な膣に沈める。瞬く間に根元まで沈んでしまう。上下に揺れる。遥香が写真機のレンズを覗き込んで、微笑む。実次は、ぼくたちの表情を撮る。
 スタヂヲのこの部屋は窓に遮光カアテンがひかれて、天井と壁の照明で撮影をおこなう。カアテンをひらくと、たくさんの自然光を取り入れることができるけど、今日はすこし曇っている。そんな日は、たくさんの照明で部屋を明るくする。
 遥香を背中から抱きしめる。胸の前で両腕を交叉させて、左右の乳首を指先でもてあそぶ。やさしく小刻みに突き上げながら、ぼくは遥香と唇を重ねる。レンズを交換した実次が、ぼくらに近づいて撮影する。優香理さんが濡れた雑巾で床に散らばった精液を拭き取る。

 ぼくたち三人のきょうだいが都築家の邸宅に引き取られたのは、つい三ヶ月前のこと。三つ子のぼくたちは数え年で十一歳になっていた。
 ぼくたちのお母様はまだ若くて、ぼくたちの育児を半ば放棄していた。しばしば食事を与えてくれなかったり、お風呂にも入れてくれなかったり、真冬の寒い中、暖房のない長屋の六畳一間にぼくたちを何日も置き去りにした。だけど、ぼくたちは栄養失調になることもなく、ひどく汚れることもなく、恵まれた子たちよりも美しく健康に育っていった。不思議なことだけど、ぼくたちは何日も食事を口にしなくても平気なのだ。
 お母様がぼくたちを家に置いたまま、余所でしらない男の人と派手にお遊びになっているのは、お父様が自殺した所為だとおもっていたけど、ほんとうはぼくたちに原因があったようだ。
 ぼくたち三人は、物心ついたときから、お互いのからだをむさぼりあっていた。幼いぼくたちに善悪や道徳の基準はなく、本能と欲望の赴くままに行為した。お母様はぼくたちをお咎めにはならなかったけど、露骨にぼくたちを遠ざけ、小学校へ通う前に、それが浅ましく邪なことだと教えてくださった。だからぼくたちは、お母様の言いつけに素直に従って、人前で求め合ったり、愛撫し合うことはしなかった。
 としを取るにつれて、ぼくたちは羞恥心が芽生えた。優那と遥香は他の少女たちよりもずっと美しく、男児たちの卑屈な眼差しに晒され、ぼくは生まれつきの長大な性器のせいで、他の男の子たちにデカマラ、巨根と囃し立てられ、デリカシイの欠如した教師から「お前はバランスが崩れておるな!」と人前で指摘され、そんな屈辱を味わう度に泣いた。
 ぼくたちはお母様の前でからだを重ねることはなくなったけれど、性的な好奇心はますます強くなっていた。やがて、ぼくたちは、きょうだいで性交することが禁忌であることをお母様に教わった。金輪際、からだをあわせてはいけないと、ぼくたちは厳しく言いつけられたけれど、今までずっと許されていて、急に禁じられる理由がわからない。だから、ぼくたちはお母様に隠れて愛し合うようになった。だけど、それも長続きしなかった。
 倉庫の中で抱き合っていたぼくたちを、突然駆け込んでこられたお母様が無理に連れ出して、車に乗せて都築家に赴いた。お母様はときどき会いにくるとだけ言い残して、ぼくたちを大きな邸宅に置き去りにした。だけどあれから三ヶ月、お母様が訪れる気配はない。
 都築実次と初めて会ったとき、実次は仮面をつけていなかったし、火傷の痕もなかった。実次は看護婦と医師を連れてきて、ぼくだけを小さな寝台に縛って、治療と称して輸血を施した。ぼくは高熱がでて、全身を激痛が襲い、縛られた寝台の上で三日三晩、吐瀉物と糞尿にまみれて苦しみ抜いた。ぼくが苦しんでいる最中、医師は看護婦を伴って様子をみにきた。口髭と顎髭を蓄え、丸眼鏡をかけた大柄な医師で、ぼくの問いかけにはなにも答えてくれなくて、ただ看護婦から「石井博士」と呼ばれていたことだけぼんやりとおぼえている。
 熱がおさまると、医師と看護婦は姿をみせなくなった。ぼくは風呂に入れられて、優那と遥香に再会した。ぼくたち三人はスタヂヲで写真を撮られた。実次の妹の優香理さんは、扇情的な衣装をぼくたちに着せて、一日中撮影を続けた。ぼくたちがくたびれてくると、実次はぼくたちを寝室に連れて行って「いつもしているように、やってみせてくれないか」と頼んだ。
 ぼくたちは、実次と優香理さんの前で、初めてお母様以外のひとの前で、性の快楽に耽った。実次はぼくたちを撮影しながら「ほんとうに人形のようだ」と呟いた。ぼくたちきょうだいは、お互い何かを語り合うことがあまりない。感情を表に出さない。お母様に愛されなかったし、ぼくたちにはお父様もいない。すくなくとも、ここへ引き取られて以来、ててなし児とヤジられた小学校に通わなくてよくなった。
 できあがった写真をみて、ぼくたちは自らの性が、想像してたよりずっと美しいことをしった。

「今日はこれくらいにしましょう」
 実次は写真機のフィルムをくるくると巻きあげる。撮影に使っている写真機は全部で五台ある。今日は二台しかつかっていない。
「都築さん、もう終わりですか?」
「ええ、陽も暮れたことですし」
 ぼくは四つん這いの遥香から、濡れた性器をつるりと引き抜く。
「嗚呼、そうだ。きみたちのお母様が、明日の朝に本宅にくる予定です。会いますか?」
 ぼくは頷く。実次は首にまいたタヲルで汗を拭う。
「男を連れてくるようですけどね。こんな時代に妾とは…」
「お母様は、大勢の男性に愛されているときいています」
「ハハハ、確かに。それできみたちは、だれが父親かもわからないのでしょう」
「ええ、しりません」
「私はしっています。きみたちには、ちゃんとした父親が居るのです」
「えっ、それは…」
 実次はフィルムの入ったジュラルミンケエスと写真機を抱えて、撮影室を出る。
 実次は現像のために暗室に籠もる。ぼくたちはその作業が終わるまで、スタヂヲの仮眠室で愛し合うことを許されている。仮眠室のベッドは撮影用のものと違って安普請だ。ぼくが遥香を突き下ろすたびに、ギコギコとひどく軋む。
 扉がノックされる。優香理さんが部屋を訪れる。ぼくは動きを止める。
「お邪魔します。雅之さん、スウプを淹れましたよ。どうぞ、お飲みになって」
 優香理さんはそう言って、ポットとスウプカップの乗った銀の盆をサイドテエブルに載せる。浅葱色のエプロンをつけた優香理さんは、陶器のカップにスウプを注ぐ。自分でひとくち、口に含む。ぼくに口移しする。ぬるいスウプを飲む。ぼくの大きな性器に貫かれ、ぷくりと膨らんだ遥香の下腹部を、優香理さんのてのひらがやさしくなでる。
「どうぞ、お続けになって。わたくしは、隣で休ませて頂きます」
「ゆかりさん、厭ではありませんか」
「なにがですか?」
「その…、ぼくたちが隣で、一晩中愛し合うのが、煩くありませんか」
 優香理さんは頬を朱らめて、照れ笑いを浮かべる。カップを盆に戻して、タヲルを手に取る。ぼくの濡れた下腹部を拭く。
「いいえ、もう慣れましたわ。今ではむしろ心地よいくらいよ。子守歌代わりね」
「もしおいやでなければ、ぼく…」
「あら」
 優香理さんはぼくの唇に人差し指をあてる。耳元で囁く。
「それ以上は言わないで。優香理、困ってしまいますわ」
「ごめんなさ…、あっ、あぁ」
 ぼくの性器を優那が引き抜く。飲み込む。愛撫する。遥香の胎内に戻す。ぼくは再び動き始める。遥香は枕の端を掴んだまま、あーあーと力ない声を漏らす。
 優香理さんはエプロンを脱いで、ぼくたちの隣のベッドに横になる。枕を二つ折りにして、ぼくたちが愛し合う光景を眺める。三ヶ月前はぼくたちから目を逸らし、性交の音にも耳を塞いで堪えていたのに、今はじゃれあう子供たちを眺めるような眼差し。
 窓から挿し込む斜陽が、遥香の濡れた下腹部を照らす。小さくて幼い腹の中に、ぼくの肉がすっぽりと収まって、休み無く往復する音。ベッドが軋む音。優香理さんが欠伸をする。鴉の鳴き声。ぼくは遥香の胎内に精を放ち、遥香の子宮が僅かに隆起する。カップに手を伸ばして、スッカリ冷めたスウプを啜る。仰向けになる。優那がぼくを跨ぐ。そして囁く。
「優香理さん、眠ってしまったわ」
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