R18恋愛官能小説 青山倉庫

ぼくと妹とガラスの少女

第12章「嘔吐」

 ぼくと妹は明け方にお父さんに起こされた。
 窓の外は明るみ始めていて、寒くて部屋の中でも息が白い。お父さんは着替えていて、ぐずっているぼくらを二度起こしにくる。ばーちゃんが死んじゃうぞと言う。ぼくは彩奈をゆさゆさ揺り起こして、急いで着替える。お姉ちゃんは風邪をひいていて、苦しそうに咳をしながら階段を下りる。
 明るくなる前に、隣の市の病院に着く。ぼくらが病室に入ると、水色の患者衣の前を開けたおばあちゃんが、お医者さんに心臓マッサージをされている。おばあちゃんはあばらが浮くほど痩せていて、血の気がない。ぼくらは寝台の脚のほうに並ぶ。お医者さんがマッサージしている間、心電図に波ができるけど、止まると一本の直線になる。看護婦さんがポンプ状の人工呼吸器で空気を送る。何度もマッサージする。ぼくらの脚が痺れてくるころに、お医者さんは呼吸と瞳孔を確認する。
「午前五時四十六分、お亡くなりになりました」
 お医者さんが頭を下げる。看護婦さんが心電図のモニタの電源を切る。お姉ちゃんが小さな声で泣き出す。お医者さんはもう一度頭を下げて、病室を出る。お母さんも電話をかけに出て行く。お父さんはおばあちゃんの頭を撫でている。それを見ていた彩奈が声を出して泣き出す。おばあちゃん、ひとりぼっちで死んじゃったと言って泣く。ぼくは堪えきれなくなって病室を出る。お母さんがスーツを着た二人のおじさんと話している。お葬式の話をしている。

 その日は学校を休んだけど、制服を着た。彩奈は黒い服を持っているけど、ぼくが持っている黒い服は学生服だけだ。滅多に会わない親戚のおじさんとおばさんが集まる。ぼくらはおじいちゃんとおばあちゃんが住んでいた今は咲月叔母さんしか住んでいない古い家でお通夜を過ごす。
 咲月叔母さんが、お座敷の隅にいたぼくに声をかける。
「今日は、泊まっていくの?」
「はい。何日か、学校を休みます」
「お腹すいてない?」
「はい…」
「彩奈ちゃんと一緒に、ご飯食べいこっか」
「お姉ちゃんは…」
「美穂お姉ちゃんは、具合悪いんだって。お二階で寝てるよ」
 ぼくは彩奈をつれて、咲月叔母さんの車に乗る。近所のお寿司屋さんに行く。彩奈と一緒にいただきますをする。回らないお寿司をつまむ。彩奈は叔母さんを嫌いだというけど、食べ物で簡単に釣られる。
「学校で、好きな子とかいるの?」と叔母さんが聞く。
「え、いません」
「この間、一緒に帰ってた色の白い子は?」
「同じ幼稚園に通ってた子です。帰る方向が一緒だったんで」
 叔母さんは馬刺しを注文する。ぼくはアナゴ下さいと言う。彩奈がバサシって何?と聞く。
「お馬さんのお肉だよ」とぼくがお品書きを指差す。
「お馬さん食べるの?」と目を丸くする。
「彩奈も食べてみたら。ウマサシくださいって言ってみて」
「バサシじゃないの?」
「一回食べたらバサシって言うの」
「うそばっかり」
 ぼくはタマゴを食べて、お茶を啜る。お寿司屋さんの窓に雨粒があたり始める。
「彩奈ちゃん、来年は中学生だね。部活とかどうするか決めてる?」と叔母さんが聞く。
「お兄ちゃんと、同じ部に入ります」
「あら、お兄ちゃん陸上部だっけ。バレエは?」
「バレエはもうやってないんです」
「バレエ部なんて、ないですよ」とぼくが言う。
 叔母さんは、そうだよねと言って笑って握られた馬刺しを食べる。お茶を飲む。煙草に火をつける。少しだけ吸う。消す。帰ろっかと言って、立ち上がる。雨が降り出している。ぼくと彩奈はお店から出るときに、上着を頭にかぶる。

 告別式の後、ぼくと彩奈と美穂お姉ちゃんはお父さんの車で先に帰る。お父さんは遅くなるから、先に寝てなさいと言う。お通夜の席で、臨終に立ち会わなかった咲月叔母さんをお母さんが責めたら、取っ組み合いの喧嘩になった。叔母さんが投げた灰皿で勝手口の窓ガラスが割れた。お父さんは遺書が出てきたとだけ言った。詳しく説明してもらっても、多分ぼくらにはまだ分からないし、知らないほうがいいかもしれない。
 お姉ちゃんはあたしもう寝るねと言って部屋に戻ってしまう。ぼくと彩奈は一緒にお風呂に入る。浴槽の外で、後ろ向きに抱っこして、ゆっくり滑り込ませる。浴室の鏡につながっている部分が映る。妹が生理の時以外はほとんど毎日してるのに、お互い性器が黒くならない。子供みたい。
「すごい、えっちな、おと」と彩奈が囁く。
「ちゃぷちゃぷ、いってるね」とぼくも囁く。
「お兄ちゃん、きもちよさそう」彩奈が鏡を見る。
「彩奈は?」
「きもちいいよ。セックスって、すごいね、同じところが、感じるんだよね」
「くりとりすが、感じるんじゃ、ないの?」
「あたし奥にあたるとこが、きもちいいの」
「そうなんだ」
「前にも言ったよ」
「そうだっけ」
「章子お姉ちゃんは?」
「なにが?」
「あたしよりきもちいい?」
「なんのこと?」
「つきあってるんでしょ」
「つきあってないよ」
 彩奈の膣がぎゅっと締まる。ぼくはきもちいいけど、彩奈はセックスを嫌がるときに膣が締まる。ぼくは膝をついて、彩奈を突き上げる。彩奈は浴槽の縁に手をついて背中を丸める。浴室に股間がぶつかりあう音が響く。二階のお姉ちゃんに聞こえるかもしれない。
「きもちいいよ」とぼくは囁く。
 彩奈は、う、とか、あ、とか呻く。ぼくは緩急をつけて腰を打ち鳴らす。小さなお尻を両手で支える。ちゃぷ、ちゃぷ、ちゃぷ、ぱん、ぱん、ぱん。もうお姉ちゃんに聞こえたっていい。
「きもちいいよ」ぼくはもう一度言う。
 彩奈ははぁはぁ息をしながら、首を縦に振る。ときどき鼻を啜る。片手で唇を触る。膣が更に締まる。ぼくはのけぞって、彩奈の中に射精する。彩奈のお尻が持ち上がる。彩奈は咳をして、呻いて、浴室の床に吐く。告別式の後で食べたお魚とお味噌汁となめたけが液状になって彩奈の口からばしゃばしゃ噴き出す。
「彩奈、あやな、だいじょうぶ?」
 ぼくは彩奈のお腹を抱いたまま背中をさする。彩奈は手を後ろに回して、ぼくの腕を払いのける。呻いて、もう一度大量に吐く。彩奈とぼくの太腿に吐いたものがふりかかる。咳き込む。唾を吐く。震えている。
 ぼくは洗面器にお湯をすくって、彩奈の体にかける。指先で排水溝の蓋を外す。お湯を何回かに分けて流す。彩奈の口を濯ぐ。おちんちんをゆっくり引き抜く。ぼくは、だいじょうぶ、ごめんね、と繰り返す。彩奈は急に立ち上がって、先にお風呂から上がる。ぼくはお湯で吐瀉物を排水溝に流す。
 部屋に戻ると、彩奈は電気を消してお布団にもぐっている。ぼくは制服を畳んで、お布団にもぐりこむ。彩奈は背中を向ける。ぼくは彩奈の肩を抱いて、ごめん、と呟く。彩奈は、うん、と言う。ぼくは彩奈の背中に頬をおしつけて、そのまま眠ってしまう。
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