R18恋愛官能小説 青山倉庫

びろうどカンヴァス

第11話「事情聴取」

「はぁはぁ、はぁ…、ぐす…、あっふっはっはっふっ…なお、なお…あぁあぁあぇぇ」
 四つん這いの果凛を突きながら、ぼくは咲月とほとみを両腕に抱いて、交互に唇をすりあわせる。あまり声をださない果凛は、鼻を啜って、泣いてるような声をもらす。
 ふるい屏風のまえで、ぼくは朝から交替で娘たちを抱く。くりかえしくりかえし抱く。それをはだかで絵筆を握る朱理がとらえる。その筆がカンヴァスを滑るおと。ぼくたちの濡れた肉のおと。屏風に駆けられた浴衣が、ぼくたちの律動にあわせてゆらゆらと揺れる。
「果凛、泣いているのですか?」とぼくは訊く。
「はぁはぁ、いいえ、はぁはぁ、泣いてなど…あっあっあっいっ、いませっふっあっあっいっ」
 果凛は首を横に振る。涙に濡れた頬を拭う。鼻を啜る。
「泣いていますよ」
「うれしい…のです」
「うれしいのですか?」
「まいにち…はぁはぁ、こんな…、あっあーっ、あーあーあーっ」
 果凛は肩を布団に押しつけて、お尻を突き出したままひどく痙攣する。おとこのぼくと違って、おんなの絶頂はわかりにくいけど、もうこうして三年も交わいを続けていると、娘たちの肉体の悦びが薄い粘膜からつたわってくるのがわかる。そしてその恍惚の粘膜に包まれているぼくも、堪えきれなくなって瞬く間に昇りつめてしまう。
 びゅううううっ、ぶくぶくぶくっ。
 間延びした射精と、大量の精液が溢れ出すおと。そのおとをきくと、ほとみと咲月はしゃがんでぼくらの結合に唇をつける。舌を這わす。溢れる精液の泡をじゅるじゅると啜る。誰に教わったわけでも、命じられたわけでもない。二人はぼくの性器を果凛から引き抜いて、奪い合うようにしゃぶりつく。
「まいにち、こんなに幸福でいられることが、うれしいのです」
 汗だくでお尻を突き出したままの果凛が呟く。ぼくはほとみを仰向けにして、覆い被さる。つるりと暖かい粘膜に挿入する。大人の男性よりも長いぼくの性器が、ほとみの腹にすっぽりと収まる。
「果凛は幸福なのですか?」とぼくは尋ねる。
「わたしも幸福ですよ」と咲月が耳元で囁く。
 ゆさゆさ上下にゆれるほとみも、ぼくの首に腕を回して、しあわせ、しあわせよ、と微笑む。
「直央は、しあわせではないのですか?」
 果凛は横になって、ぼくに訊く。
「ぼくもしあわせですよ。だけど、不安なのです」
「あら…、どうして?」
「しあわせは、永くは続かないと、言うではありませんか」
「それは、物語のなかだけだわ。現実のしあわせは、ときどき永遠なのよ」
「そうでしょうか…」
「わたしたちが、直央をしあわせにして差し上げますわ」
 果凛は微笑む。咲月がぼくの唇を奪う。ぼくはほとみの乳首を指先で摘む。ほとみの狭い膣が、ぐいぐいとぼくを呑みこむ。果凛はからだを起こして、ぼくの乳首を舐める。吸う。ぼくの背中に指を滑らせて、お尻の穴に指を滑り込ませる。
「これ以上、しあわせになったら、ぼくは…、きがくるって、しまいま…」
 ぬるりと果凛の指が根元まで侵入すると、ぼくは溜まらずほとみの胎内に放つ。仰け反って、少女のような、あられもない声をあげる。顔を上げた先に、ぼくたちをみつめる朱理の姿が滲む。強い快楽は、涙を滲ませる。
「直央も、泣いていますわ」
 果凛がそう言って、笑う。

 障子に初音の蔭が映る。しゃがむ。
「朱理様、お客様がお見えになっております」
 朱理は筆を止める。溜息をつく。
「わたくしに、客ですか?」
 障子が開く。初音がそっと入ってくる。摺足で朱理の傍へ近づき、いちまいの着物をそっと朱理の肩にかける。
「警察の方です」
「どのような用件ですか?」
「殺人事件の捜査と伺っています。詳しいことは…」
「わかりました」
 朱理は立ち上がって、着物を羽織る。帯を締める。ぼくたちに、今日は終わりにしましょう、と言う。汗と体液でびしょ濡れの咲月を突いていた最中のぼくは、お互いとても中途半端なまま離れる。初音に泉州タヲルでからだを拭いてもらう。浴衣を着る。初音と朱理は先に部屋を出てしまう。姉妹たちはホトトギスの鳴き方についてお喋りする。ぼくたちは呼ばれていないけど、ぼくだけは部屋を出て洋館へ向かう。お湯の入った桶を抱えた初音が戻ってきて、どちらへ?とぼくに尋ねる。
「朱理さんは、いや、お客さんは、どのお部屋ですか?」
「客間で御座います」
「わかりました、ありがとう」
 ぼくは階段をのぼって、廊下を歩く。客間の扉から琴音が出てくる。部屋の中へ向かって、お辞儀をする。ぼくは柱の陰に隠れる。僅かに開いた扉から、椅子に座った朱理が見える。お客さんの姿はみえない。琴音が立ち去ってから、ぼくは扉の前に立つ。そっと扉に耳をつける。くぐもった声は、はっきり聞き取れない。
「亡くなった湯島なだみさんと、直接の面識はございますか?」
 男の人の声がする。
「いいえ、湯島様とは、先生がお会いしますので」
「先生…、というのは玲庵さんですね」
「はい」
 朱理が聴取を受けている。ぼくは甲斐さんのことを予想していたけど、そうではないらしい。甲斐さんが入水した話は人づてに聞いただけ。あの後、なにもない。
「玲庵先生は、なだみさんとは親しかったのですか?」
「旦那様の浩三様とは親密だったのですが、奥様の方とはあまり…」
「何か問題を抱えていましたか? その、金銭面や契約面で」
「いいえ、むしろ問題をもっていたのは、皆藤様の方です」
「皆藤…、皆藤良一ですね? どんな問題ですか?」
「皆藤様は、先生のギャラリイを、今の半分の規模にしようと提案なさっていました。もちろん、先生は反対したのですが。そのことで、奥様に直接相談されていたと思います」
「相談の内容はわかりますか?」
「いいえ、詳しいことは…」
 沈黙する。洋館は裏の屋敷と違って涼しくて、ぼくの汗も瞬く間にひく。
「まいったな、玲庵先生は病床で話も聴けないときてる。そうそう、その皆藤さんが今どこにいるかご存じありませんかね?」
「いえ、以前ご挨拶にみえられたときに、いちどお会いしただけですので…」
「親しくないと…?」
「ええ…」
「いっぺん会っただけですか?」
「はい」
「ふうん、おかしいな。皆藤さんは、この屋敷に二度訪れているんですよ。城間男爵家の女中が、先月の夜半過ぎに、皆藤さんとみられる男が屋敷に侵入していたと」
 朱理の、あっ、という驚いた声。
「心当たりでも?」
「はい、先月末のことですけど、蔵に賊が忍び込んだのです。幸い、何も盗られておりませんので、通報も致しませんでした。女中の琴音が存じております」
「ふむ、蔵に押し入ったのに、何も盗らなかったと…」
「もしかすると、綾川家の系譜を探していたのかもしれません」
「系譜? 系図ですか?」
「ええ、綾川には西欧の血が混じっているというような噂がありまして、それを確かめるつもりだったのかもしれません。湯島家は国粋保存主義の家系ですので…」
 再び沈黙する。布ズレの音。
「皆藤から連絡や接触があれば、ご連絡下さい。またお伺いすることがあるかもしれません」
「わかりました」
 ぼくは音を立てずに、速やかにその場を離れる。階段を駆け下りるとき、女中の山崎さんとすれ違う。六人いる女中さんの中で一番年配の山崎さんは、ぼくや三人の娘たちに敬語を使わないし、すれ違っても会釈しないけど、ぼくたちは気にしない。
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