R18恋愛官能小説 青山倉庫

びろうどカンヴァス

第4話「女中の初音」

 霧雨が降る。
 外廊下で空を見上げた女中の初音に、ぼくは背後から声をかける。
「初音さん、おはようございます」
 初音は驚いて振り返る。
「あら、直央様、おはようございます。このところ、朝はお早いですね」
「はい、夜にゆっくり休めますから」
 ぼくも初音の隣に膝をつく。初音はぼくよりみっつ年上だけど、背は低い。初音と琴音は姉妹で、琴音はふたつ上の姉だ。ぼくは琴音よりも初音と喋ることが多い。でも、二人のことはほとんどなにもしらない。綾川家とゆかりのある木村家から奉公に出されていることしかしらない。
「少し寒いですね」とぼくは呟く。
「おからだには、お気をつけください。お風邪など、ひかないよう…」
「ぼくのからだを心配してくれるのですか?」
「ええ…」
 初音は動かないししおどしに視線を移す。ぼくは初音の横顔をじっとみつめる。
 まかないの葡萄色の洋服の上に、フリルのついた白いエプロンをつけた初音は、本条伯爵家のメイドのようだ。本条伯爵は得意客のなかでも先生と親しくしているから、綾川の邸宅にもしばしば訪れる。そういったお客様は洋館の方にやってくるから、和装で出迎えるわけにはいかないと琴音が言っていた。だけど、初音はまかないのスカアトを腰で折りたたんでいて、短い裾から細くて美しい太股が覗く。膝丈の靴下を履いていても、ぼくは目の遣り場に困るのだ。
「風邪などひかないように、気をつけます。娘たちに、うつってしまいますから」
 外廊下の奥から、着物の裾を持ち上げて、咲月がぱたぱたと駆けてくる。初音がお辞儀をして挨拶する。
「おはよう御座います、咲月様」
 咲月は立ち止まって、頭を下げる。ぼくの前にぺたりと座り込む。咲月の着物は帯がほどけて、前がはだける。ぼくの着物の帯をひく。ほどく。
「咲月、ここでは、だめですよ」
「したいの、直央、したいの」
 咲月はぼくの着物の前を乱暴にひろげて、両手で性器を握る。屈んで、ぱくりと咥える。
「お部屋に、もどっ…、あぁ…」
 咲月は初音にみられているにもかかわらず、ひどく卑猥なおとを鳴らしながら、ぼくのふやけた肉を愛撫して、硬くおおきく育てる。ぼくは両脚をひろげて、後ろ手をついて、腰を突き出す。初音はこれほど近くで、ぼくたちの行為をみたことはない。おろおろする。立ち上がろうとする初音の手を掴む。引き寄せる。
「初音さん、誰か来ないか、見張っていてください」
 ぼくは咲月を仰向けにする。股の間に覆い被さる。咲月の滑らかな割れ目を指で拡げる。唇をつける。舌を滑らせる。咲月の口淫にまけないくらいの卑猥な音を鳴らす。
「この中庭の周囲は、旦那様がお人払いをされているから、誰もきませんわ」
 初音が言う。ぼくは口を離して、咲月に覆い被さる。
「では、ぼくたちを見張っていてください」
「え、なにを…」
「ぼくたちがすることを、みていて欲しいのです」
 ぼくは着物を脱ぐ。咲月を貫く。朝日に照らされた咲月の細いからだが、ぼくの律動にゆさゆさと力なく上下する。ぼくは上半身を起こして、モデルをやっているときとおなじように、股間を晒す。初音によくみえるように、ぼくは姿勢を正して、咲月を突く。咲月は、あん、あん、と稚い声で喘ぐ。

 三姉妹は、病気で奥様に先立たれた玲庵先生が、妾との間につくった子たちだと初音に聞いた。
 妾は三人の娘を置いて蒸発し、先生は衰弱しきっていた娘たちを引き取った。それはぼくが引き取られる二年前のことで、娘たちはぼくとおなじく、綾川家は生まれた家ではない。三年住んでいても、まだどこかの旅館にいるように感ぜられてならない。
 モデルとして娘たちを抱くようになっても、ぼくはその時間を終えると、自分から娘たちを抱くことは憚られた。部屋の障子窓から庭を眺める果凛の横顔と、紺色の着物に描かれた銀杏の葉を長い時間みつめていたことを覚えている。声をかけて無視されたらどうしよう、肩を抱いて振り払われたらどうしよう、邪険に扱われたらどうしよう、ひょっとすると、果凛やほとみは、ぼくなんかよりも甲斐武留の方が好みかも知れない。そんな卑屈な猜疑心が芽生えると、勉強の時間に果凛が甲斐さんと喋るだけで、胸が焼かれる想いがする。それは恋慕ではなく、独占欲だとあとで気づいた。
「からだを重ねることを、英語で何というか知っていますか?」
 ある日、果凛がぼくにそう尋ね、ぼくの心臓は跳ねあがった。
「いいえ、知りません」
「セックスと言うそうよ」
「セックス」
「武留さんが教えてくださったの、ふふ…」
 果凛が甲斐さんと猥談をしているところを想像して、また果凛が甲斐さんのことを下の名前で親しげに呼んだことに傷つき、ぼくは絶望した。ぼくが俯いてからだを硬くしていることに気づいた果凛は、着物をするりと脱いで、セックスしましょうよ、と囁いた。その日以来、ぼくは娘たちと、絵の時間以外にも愛し合うようになった。
 娘たちとは幾度も枕を交わし、幾度も絶頂を迎えたけれど、幼い娘たちの処女性が損なわれることはなく、日に日に少女たちの美質が開花するにつれて、ぼくは身も心もスッカリ三人の娘たちに捧げていた。それでも娘たちは、ぼくとの間にみえない線をひいて、なかに入れてくれない。ぼくと娘たちの会話が核心に触れると、娘たちはぼくの性感帯を愛撫して誤魔化すのだ。

「いく、いくっ、ああっ」
 ぼくは声を上げて、咲月を滅多突きにする。咲月の腰を持ち上げて、立て膝のまま射精する。咲月の胎内もぶるぶると引き攣る。体液の泡がぶくぶくと吹き出し、廊下の板張りにびちゃびちゃと滴る。町内の祭りでみた炊き出しの飯釜を思い出す。
「なにか、拭くものを…」
 腰を浮かしかけた初音の袖をひいて引き留める。
「ぼくがやります」
「いいえ、そんなこと、ご自分でなさらないでください」
「いつも汚してばかりでは、悪いので」
「仕方ありませんわ、直央様はいつも大量…」
「ごめんなさい…」
「あっ、いいえ、責めているのではありませんわ」
 咲月の膣からつるりと抜けた巨根が、未だ硬く反り返って上を向く。咲月は起き上がって、再びぼくの巨根を喉の奥まで飲み込んでしまう。上下に揺れる咲月の頭を撫でる。艶のある長い髪を指先に絡めて愛でる。三姉妹のなかで一番とししたの咲月は、自分の欲望に忠実で、気まぐれで、二人の姉以上に性欲が強い。咲月は口を離して、初音に言う。
「直央の棒は、おんなが口で綺麗にするのよ。布きれで拭くなんて、だめよ」
「すいません」
 初音は頬を赤らめる。
「初音さんは床を拭こうとしたのですよ」とぼくは言う。
「あら、そう」
「ぼくも、咲月の壺を口で綺麗にするのですか」
「そうよ、そうしてくれると、嬉しいわ」
 ぼくは咲月を仰向けにする。股間に顔を差し込んで、濡れた割れ目に唇をつける。中に放った精液を吸い出す。口を離して、咲月に覆いかぶさる。唇を重ねて、精液を口移しする。にゅりにゅりと舌を絡め、お互いの体液を味わう。唇を離すと、突き出した互いの舌と舌の先端から細い粘液が糸をひいて、朝日にキラキラと輝いて滴る。初音がそれを見つめる。ぼくと目線があう。初音はたちあがる。
「お風呂に致しますわね」
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