R18恋愛官能小説 青山倉庫

ぼくと妹とガラスの少女

第1章「家族」

 入学式の後、ぼくは校門の前でお父さんに写真を撮られる。
 一枚撮った後、姉と妹も一緒にもう一枚撮る。妹の彩奈は五年生になって背が伸びたけど、ぼくよりまだ小さい。姉の美穂はぼくより背が高いから、並んで写真を撮られるのを嫌がる。
「彩奈、へんな顔しない」とお父さんが言う。
 同じ新入生たちにじろじろ見られて、ぼくは顔がこわばる。お父さんがフィルムを巻き上げていると、校門から佐伯章子が出てきて、ぼくらに会釈する。
「章子ちゃん、大きくなったね。送っていくよ、一緒に帰ろう」とお父さんが言う。
 章子とは同じ私立の幼稚園に通って、家族どうしも付き合いがあった。小学校に入ってからは一度も同じクラスになったことがなくて、ぼくの記憶のなかでは大きくて力が強くて生意気で人のものをすぐに欲しがる子だったけど、中学生になった章子は大人しくて色が白くてぼくより背が小さい。
 お父さんの車に章子も一緒に乗る。後部座席のぼくの隣に座る。妹がその向こうに座る。姉が助手席に座る。車が走り出すと、姉が振り返って「部活には入るの?」と章子に聞く。
「まだ、決めてないです」
「あたしバレー部なの」
「そうですか」
「バレー部いいよぉ、練習楽でさ」
「そうですか」
「あたし先輩に紹介するからさ、練習見においでよ」
「はい」
「絶対だよ、やくそく」
「はい」
 妹は窓の外を眺めている。姉も座りなおして前を向いてしまう。
 急な勾配の坂道をのぼると、広い空き地が見える。そこで男の子たちがボール遊びをしている。お父さんは十字路を左に曲がる。章子は浄水場の近くに住んでいたから、遠回りするつもりだ。
「中学校も、土曜日休みなのかな?」とぼくが聞く。
「うーん、多分。お姉さんは、お休みじゃないの?」と章子が言う。
「あ、そっか」
「五組だっけ?」
「そう、しょう…佐伯さんは?」
「四組だよ、隣だね」
「あのおっかない先生は、どこの担任だっけ」
「新開先生? 一組だよ」
「そうなんだ」
 新興住宅地の入り口に差し掛かると、章子はここで大丈夫ですと言って車を降りる。窓越しに手を振る。章子も手を振る。姉も手を振る。妹はぼくを見ている。

 コタツで寝転がって、妹とタブレットでモノポリーをやっていたら、お母さんに起きてやんなさいと言われる。ぼくはあーとかうーんとか生返事する。お母さんは台所で浅漬けを食べながら夕食を作っている。妹もお煎餅を咥えている。女はいつも何か食ってる。
「章子ちゃん、隣のクラスなんだって?」とお母さんが聞く。
「うん、四組だって」とぼくが答える
「こないだ市民体育館の前で会ったよ。すごいかわいいお姉さんになったじゃない」
「そだね」
「あんた彼女作るなら、章子ちゃんにしなさい」
「なんでそうなるんだよ」
「章子ちゃんバレー部に入るんだって」
「それは姉ちゃんが勝手に言ってるだけだよ」
「あんたも何か部活やんなさいよ」
 玄関でチャイムが鳴って、お母さんが出る。宅急便のおじさんの声がする。お母さんが戻ってくる。
「お姉ちゃんの教材来たから、あんた後で運んどいて」
 美穂姉ちゃんは去年までがんばって入学した名門の私立中学に通っていたけど、寮生活がつらいと言って地元のどうでもいい中学に転校した。ぼくも同じどうでもいい中学だ。お父さんもお母さんも期待してるから、勉強は忙しくて、今日も塾に行っている。ぼくと妹は成績が悪くてもそんなに怒られないけど、いつも姉と比べられる。
「お兄ちゃん、何部に入るの?」と彩奈が聞く。
「部活かったるいよ」
「水泳部はないの?」
「あるんじゃない」
「昔、水泳やってたじゃん。水泳部入れば?」
「やだよ、外だぜプール。寒いじゃん」
「いいじゃん水泳。やりなよー、もっこりもっこり」
 彩奈は笑いながらぼくの股間を触る。ぼくは触んなと言って手を払いのける。また触る。ぼくが仕返しに彩奈の脇腹をくすぐると、きゃーきゃー叫びながら蹴飛ばす。もっこりもっこりと喚きながら、部屋に逃げてしまう。追いかけようとするとお母さんに呼び止められる。
「アイパッドかたずけなさい」
 ぼくがタブレットを持って階段をのぼろうとすると、またお母さんに呼び止められる。
「お姉ちゃんの教材運んでおいてよ」
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